2016年、相模原市で障害者19人が殺害された事件を受けた「共生社会フォーラムin滋賀」が7日、大津市におの浜4丁目のびわ湖大津プリンスホテルで始まった。「誰もが心の奥底に差別意識を抱えているのではないか」。障害者の親や当事者らが人間の価値の線引きにどう向き合うかを問いかけた。
知的障害者の家族らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」(大津市)の久保厚子会長(67)ら5人がマイクを握った。
相模原事件の被告は「障害者は不幸だ」と供述したとされる。重度障害がある息子を育ててきた久保会長は「家族は大変だけど、不幸じゃない」と強く異を唱えた。息子は一家の中心的存在で、皆を笑顔にしてくれるという。
一方で障害者施設の建設反対運動など、障害者を忌避する感情は根深いと指摘。「自分も無意識に差別をしていないか、考えてほしい」と呼びかけた。
大津市出身で、生活困窮者の支援を続ける奥田知志さん(55)=北九州市=は昨年秋、被告と拘置所で面会した。「役に立たない人間を殺した」と主張する被告に、自身はどうかと問いかけたところ、「僕はあまり役に立ちませんでした」と返ってきたという。
奥田さんは相模原事件を単に異常者の殺人と結論付けることに疑問を呈し、「社会の何かが事件の背景にあると思う」と語った。
フォーラムは厚生労働省が主催し、福祉施設職員や市民ら約180人が参加した。8日も「人間の生産性」をテーマにしたシンポジウムなどがある。
■強制不妊「国は謝罪を」
フォーラムでは、旧優生保護法(1948~96年)による障害者らへの強制不妊手術や、出生前診断への言及もあった。
「全国手をつなぐ育成会連合会」の久保会長は、前身団体の機関誌を検証した結果、手術を助長する記載が見つかったと説明。「反省した上で、私たちの仲間に謝罪と補償をするよう国に求めていく」と訴えた。
NHK番組「バリバラ」に出演している脳性まひの玉木幸則さん(50)=兵庫県西宮市=は「不良な子孫の出生防止」という同法の目的に触れ、「僕たちの命を生まれないようにした」と憤った。
胎児の染色体異常を調べ、中絶につながる可能性がある出生前診断が広がる中、「受精卵が着床した瞬間から『命』だと思う。同診断を否定はしないが、(障害があっても)生きていくための準備であるべき」と語った。
心の奥底に潜む差別意識とどう向き合うかを問いかける久保厚子さん(右端)ら
2019年02月08日 京都新聞