農林水産省は障害者の農業への就労促進策を強化する。障害者が生産に携わったことを示す食品規格を整備し、農業と福祉の連携(農福連携)を幅広く消費者に知ってもらう。障害者の農作業を指導する人材の研修拠点も設け、農業に詳しい福祉の専門家を増やす。産業全体で障害者の働く場がいまだ乏しいなか、農業を新たな就労の場に生かせるようにする。
日本農林規格(JAS)の一環として、新たに障害者が生産工程に携わった食品の基準を作る。生鮮食品の場合、除草や収穫、出荷作業などに障害者が携わったことの認証を受ければ、農福連携を意味する「ノウフク」のJASマークを商品に表示できるようにする。
認証にあたって事業者には、障害のある人が働きやすいよう、わかりやすい手順書を作ったり、バリアフリー環境を整えたりしてもらう。
加工食品向けの「ノウフク」JASも作る。障害者が携わった生鮮食品を少なくとも1種類以上使ったジャムや飲料などを対象にする。規格の認証を受けたい事業者は、国に登録された登録認証機関から審査を受ける。農水省は年度内にも必要な告示をして登録認証機関の募集を始め、早ければ今夏にも新規格をスタートさせる。
全国で障害者の就農を広げるための人材育成も始める。農水省は2019年度に水戸市にある農林水産研修所の「水戸ほ場」に障害者が働ける園芸施設を整備する。
土耕や水耕栽培のハウス、苗を育てる施設、出荷のために野菜の洗浄や梱包ができる建物をそれぞれ整備し、障害者が働きやすいようにバリアフリーにも配慮する。
19年度以降、実際に農水省が障害のある人を数人~10人ほど雇い、野菜や花を栽培してもらう。この拠点で農福連携に取り組む農業法人や福祉施設の職員、自治体関係者などが研修する。
一連の研修を通じて、農業分野で障害者雇用を進める「ジョブコーチ」を育成する。農業を障害者の働く場に生かしたいと思う福祉関係者は多いものの、農業のノウハウがないため具体的に踏み出せないという声が多く聞かれるという。
国内に障害者は約940万人おり、雇用施策の対象となる人は360万人いる。ただ実際に就労している人は80万人にとどまる。一方で農業就業人口は毎年10万人程度減っており、荒廃農地の解消も課題になっている。
2019/2/6 日本経済新聞