障害者雇用水増し問題を受けた障害者対象の国家公務員試験で、九州でも51人の枠を目指し161人が1次選考を通過した。九州の出先機関では採用に備え、職場での接し方など職員の研修や施設のバリアフリー化などの準備を進める。一方、任せる仕事の範囲や量について不安を漏らす人事担当者もおり、障害者が働きやすい環境をどう整えるか手探りが続く。
「発達障害者の中には音や光、触れることに過敏な方がいます。肩をたたく、握手するなどのスキンシップも気を付けて」「抽象的な指示はなるべく控えるように」。14日、九州地方整備局(福岡市)の建設部門が初めて開いた精神・発達障害者への対応を学ぶ講座に、約40人の職員が聞き入った。手元には約30ページのテキスト。「仕事中」「休憩時間」などの場面を設定し、障害者が仕事に行き詰まった時の声掛けのタイミングや、相談の受け方などを紹介している。
九地整の建設部門では7人を採用し、書類の作成や管理などを任せる予定。講座はハローワーク職員が講師となり、障害に関する知識、仕事の適性、職場での接し方などを丁寧に説明し、九州内の出先事務所にも動画で一斉中継された。
講師が強調したのは、「個人に合わせた対応」の重要性。同じ障害でもそれぞれ状態が違うという。九地整の人事担当者は「障害者雇用は続けていかなければならない。しっかり理解を広げたい」と意気込む。障害者が使いやすいトイレや、引き戸式扉の増設などハード面の改善も進めるとしている。
2人を採る予定の九州農政局(熊本市)も同様の講座を4月以降、職員に実施していく予定。「将来的に、どの職場でも一緒に働く可能性がある。全員が同じ認識を持ってほしい」(総務課)
一方、九州・沖縄で8人を採用する計画の法務局。このうち福岡法務局(福岡市)は「個々の状態を見ないと、どんな仕事をどれだけ任せられるか判断が難しい」。採用者を確定後、聞き取りでニーズを調べ、具体策を講じる方針。2人を採用予定の九州森林管理局(熊本市)も同様で、話を聞いたうえで必要な配慮を考えるという。
働きやすい職場づくりに向け、障害者から要望も上がった。注意欠陥多動性障害(ADHD)がある福岡市の50代男性は1次選考から漏れたが、「採用後のサポートには不安があった」と話す。仕事を覚えるのに時間がかかる人や、ストレスで症状が悪化する人もいると指摘。「(合格者に対し)仕事の適性を調べる研修期間を設けたり、短時間勤務から始めたりして、段階的に仕事を任せる方法も検討してほしい」と求めた。
=2019/02/23付 西日本新聞朝刊=