15日から富田林で障害者絵画展
講師・広海さん「少しでも理解深めて」
富田林市の社会福祉法人「富翔会(とんしょうかい)」が運営する施設に通所する障害者約20人が15日から、同市本町のきらめきファクトリーで初めて展覧会を開く。女性講師から熱心な指導を受け、障害者は豊かな感性で個性的な絵画を描けるようになった。女性講師は「繊細な感覚を持った障害者の、魂やエネルギーのこもった作品をぜひ見てほしい」と話している。(新田修)
講師は藤井寺市出身の広海充南子(ひろみみなこ)さん(36)。京都造形芸術大学でデザインを専攻した後、芸術を学ぶために海外留学した。2006年頃、ロンドンで障害者らが制作した優れた芸術「アールブリュット」の展覧会を見て、「こんな枠にとらわれないアートがあるなんて」と衝撃を受けた。
帰国後、障害者と一緒に制作したいと思い、07年に絵画講師として富翔会の職員になった。障害者に紙とペンを渡し、自由に描いてもらおうとしたが、当初は集中力が続かず、紙に絵を描くことを理解できなかった人もいたという。
「彼らの心情への理解が足りないのでは」。これまで、障害者と関わったことのなかった広海さんは、そう考え、勉強してヘルパーの資格を取り、障害者のトイレや食事の介助などをして少しずつ信頼関係を構築していった。
画用紙のほかに、筆圧が強い人には丈夫なベニヤ板の上に描いてもらうようにするなど工夫。広海さんは絵画制作の指導ができるようになった。
重度の知的障害を持つ田中ますみさん(48)は大きな変化があった一人だ。絵画に取り組み始めると、奇声を発する癖がなくなった。何度も円をなぞって描いたり、曲線を幾重にも重ねたりする作品が魅力で、母の弘子さん(72)は「娘にこんな才能があったとは驚いた」という。
門田賢一さん(46)は、「ハッピーくん」という独自のキャラクターを描き、障害者アートの作品展で入賞。絵画に没頭するようになると、ほかの人ともめなくなったという。
今回、広海さんは「多くの人に評価してもらい、達成感を味わってもらうことが彼らの成長につながる」と考え、絵画展を開くことを決定。近年は障害者を虐待する事案などが各地で相次いでおり、広海さんは「絵画展を通して障害者への理解が少しでも深まれば」と期待する。
午前10時~午後7時(最終日は正午まで)。展示は20日までで、入場無料。
問い合わせは、富翔会(0721・20・5288)。
02/10 読売新聞