病気やけがを乗り越えて競技に打ち込む障害者アスリートたち。その魅力を伝える「障害のあるアスリート写真展」が北海道函館市で開かれている。細くなった脚、義足、術後の傷……。ハンディと思われがちな障害が、レンズを通して力強さを放っている。
撮影したのは、札幌市を拠点に活動する写真家の佐々木育弥さん(34)。「多様な個性を認め、支え合っていく社会を願い、あえて障害を可視化した」
紹介しているのは、フィギュアスケートやクロスカントリー、ブラインドサッカー、陸上競技、ウィルチェアーラグビー、フェンシングなどで活躍する10人のアスリート。それぞれ、ポートレート、競技道具、道具を持った姿、障害の部位の4枚をセットにして展示。障害をもった時期や理由、スポーツとの出会いや夢なども紹介している。
ノルディックスキーの新田のんのさん(22)は、先天性小児がんにより両下肢機能障害となった。雪上で自由に動けることに魅せられ、スキーの世界へ。昨冬は平昌パラリンピックに初出場を果たした。座ったままで滑るシットスキーを子どもたちにも広めていきたいと夢を抱く。
パラクライミングの猪飼嘉司さん(49)はオートバイ事故で脊髄(せきずい)を損傷し、下半身まひに。クライミングに興味はあったが、「自分の障害では厳しい」と遠ざけていた。それでも、高さ15メートルのクライミングウォールを目にしてから、登りたいという衝動が抑えきれず、挑戦を始めた。
写真はいずれもカラーだが、白黒フィルムにこだわったポートレート写真にも取り組む佐々木さんは「今回も、モノクロと同じ効果をねらった」という。アスリートの鍛え抜いた筋肉美や、競技と向き合う真剣な表情をより鮮明に浮かび上がらせるため、背景を黒くし、被写体には黒い布をまとってもらった。
佐々木さんは「わたし自身、障害者スポーツにネガティブな先入観を持っていたが、今回の撮影で選手の強さや鋭さを写し取ることができた」と話す。
障害者アスリートの撮影をコーディネートしたボランティア団体事務局の鹿野牧子さん(46)は、来年2月に北海道で開かれる知的障害者たちの「スペシャルオリンピックス」冬季全国大会もPR。「写真をきっかけに、障害者と健常者の心のバリアフリーが進んでほしい」と来場を呼びかけている。

障害者アスリートの魅力を伝える写真展
写真展は函館市本町のシエスタハコダテ3階で、3月8日まで。入場無料。
2019年2月27日 朝日新聞社