久しぶりの無名歌人。じつは藤原時明(ときあきら)の、女性に託した歌か、と言われる。今夜、空いてる?などと、気楽に声をかける男(いうまでもなく貴族)への贈歌。
ひらかなy095:ゆうぐれに いのちのはてる かげろうに
どうしているか きくのはやぼよ
ひらかな s1195:ゆふぐれに いのちかけたる かげろふの
ありやあらずや とふもはかなし
【略注】○かげろふ=かげろう。蜉蝣(ふゆう)。蜻蛉。糸遊(いとゆう)。儚い・
果敢無いものの譬え。「蜻蛉」の漢字は、「せいれい」「かげろう」「とん
ぼ」の読みが当てられる。糸遊は、「漢語で <遊糸(ゆうし)> というところ
から、早春や晩秋にクモの子が糸を引いて飛ぶものをいったとする説
もある。」(三省堂版「大辞林」)
○ありやあらずや=(在りや~) 生きているのか死んでいるのか。to
be or not to be。
○はかなし=(かげろうの、女の命は)儚い、果敢無い。