「作者は女性。月は、逢って、明けがたの別れを惜しんだ時の月。」(小学版) 平安貴族の女性が、万葉の女性と大きく違うところは、非生産活動者であること。だから、男性からの訪れがないことを、非常におそれる・・・尼になるか、蓬になるかと。
ひらかなy102:あけがたの つきみてつらく おもうのは
はなれていった あのひとのこと
ひらかなs1260:あまのとを おしあけがたの つきみれば
うきひとしもぞ 恋しかりける
【略注】○天の戸を=天の岩戸伝説(アマテラス女神が岩戸から出て、世に日の光が
満ちた)が前提にある。それを受けて、「おしあけ(押し開け)」「あけがた(明け
方)」が掛詞。
○憂き人=「辛い思いをさせている人。薄情な人。」(同書) 現代詠は、訪い
(おとない)が途絶えた、としたが、文字どおりには、絶縁とは限らないこと、い
うまでもない。