家に帰ったら
柴犬を飼うんだと言ってたね
パパに 柴犬の季刊誌を買って貰って
うれしそうに 僕にも見せてくれたね
二人は 柴犬愛好家
そう ぼくは 思ってたよ
2冊の季刊誌を得意そうに
見せてくれたね Mさん
突然入院して およそ十ヶ月
時にはおうちに帰りたい と
ぼくに ぽつりと漏らしてたね
退院の話題が出た時
いいなあ 退院!
私も 早くおうちに帰りたい!!
思わず あなたは そう叫んだね
Mさん
本当に 長い間 きつかったね
でも 途中では外泊もできて
うれしそうだったね
退院したら
自分のお部屋を作ってもらい
かわいい柴犬も 飼うつもりでいた Mさん
だけど その小さな夢は 叶わなかった
小さな小さな願いだったけど
誰も 叶えてはくれなかった
丁度 金環日食の日に 見送ったけれど
11歳という月日は短かすぎるけれど
Mさん 今頃 何をしていますか
金環日食は見えましたか
東京スカイツリーは 見ましたか
そして
かわいい柴犬は 見つかりましたか
Mさん あなたがくれた小さな飾りを
今日もまた 名札に付けて 仕事をしています
きつくても つらくても
いやな顔を見せず
静かな笑顔と 礼儀正しい対応で
大人の私の方が 却って恐縮するくらいの
実に心優しい女の子でしたね
Mさん 今夜ね
我が家の柴犬と散歩してて 蛍を見つけたよ
今年初めての 小さくてほのかな蛍の光
ふわふわとこっちにやって来て
またふわふわとあっちに消えてったよ
もしや あの蛍は あなたではないでしょね
Mさん 今まで 辛かっただろうから
しばらくは 天国でゆっくりして
それから 可愛い柴犬を見つけてくださいね
では また いつか