ただ 只管（ひたすら）に

虫は　飛ぶ
ミツバチのオスが飛ぶ
ただ只管に　今年の春も
散歩道の草原で　あの花畑で飛ぶ　

花は　咲く
ツツジの花が咲く
ただ只管に　今年の初夏も
我が家の庭に　あの公園に咲く

犬は　歩く
我が家の柴犬が歩く
ただ只管に　今年の初夏も
堤防の野道を　近所の舗装道路を歩く

僕は　働く
五人家族の一員として　僕も働く
ただ只管に　今年の夏も
この職場で　あの職場で働く

呻く（うめく）

呻く
一仕事を終えては　腰や膝の痛みに呻く
長く苦労を共にしてきた我が腰や膝は
時には鍛え　時には労りつつ働いて貰った

呻く
一つの電話を終えては　頭や胸の痛みに呻く
長く喜びや苦労を共にしてきたと思えば
時には歓喜し　時には気持ちのすれ違いに
夜に朝に　夢にもうなされる

呻く
一時間を終えては　心や胸の痛みに呻く
長くこの仕事に就いてきた我が腕前は
時には冴え渡り　また時にはひどく落ち込む

呻く
一つのチャレンジを終えては　底知れぬような不安に呻く
長かった　振り返れば何でもないようだが
時には冷や汗流れ　時には心から安堵し
ここまで来るには　気が遠くなるような道のりであった

呻く
一区切りがついた今　身の回りを見渡せば
モノは溢れ　機械や乗り物は愈々便利になり
しかし　何だろう　この何とも言えぬ淀んだ気配は…

呻く
一行　たった一行が　たった一編が書けずに
いろんな本を読み　テレビや映画も楽しみながら
新聞やテレビのニュースを見聞きしては
ボクは　しばらくうんうんと唸っていた

先がさっぱり読めぬ
明日さえも　とんと見当がつかぬ
やがてやって来るだろう定年を前にして
ボクは今日も　うんうんと呻く