前座の間はな、どうやったら俺(談志)が喜ぶか、それだけ考えてろ。患うほど、気を遣え。お前(談春)は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ。サシで付き合って相手を喜ばせられないような奴が何百人という客を満足させられるわけがねえだろう。
怒鳴ってもメロディーが崩れないように話せ。
修行とは矛盾に耐えることだ。
談春は、覚悟だの、けじめだの、一丁前のつもりで独り思い込んでいたが、談春の想いはそんなもんじゃなかったんだ。子供が母親に向かって駄々をこねるように談志に、愛してくれ、みつめてくれと泣きわめいて甘ったれているに過ぎなかったんだ。小さん師匠は、それをわかった上で、いや、わかったからこそ、わざわざ談春の会に出てくれたんだ。
「赤めだか」 立川談春