言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
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映画「残像」 他

2017-06-22 | 映画 音楽
「残像」
原題:Powidoki 英題:Afrerimage 製作年:2016   製作国:ポーランド   時間:99分
監督&脚色:アンジェイ・ワイダ    主演:ボグスワフ・リンダ

『2016年10月9日、アンジェイ・ワイダ監督が急逝した。享年90。世界から尊敬される巨匠が死の直前に完成させた作品は、戦後の社会主義圧政下で、自らの信念を貫き、闘った実在の芸術家の姿だった----。』
『第二次世界大戦後、ソヴィエト連邦の影響下におかれたポーランド。スターリンによる全体主義に脅かされながらも、情熱的に創作と美術教育に打ち込む実在の前衛画家ヴワディスワフ・ストウシェミンスキが、自らの信念を貫き、闘う姿を描く。』・・・フライヤーの抜き書き
主人公はポーランドに実在した画家、美術大の教授。大戦で負傷、右足を失い、松葉杖を欠かせない。絵・・彼の場合前衛画だが、絵に対する情熱は高く、多くの画学生や社会の人たちに支持されている。しかし時代は彼にとって不幸だった。芸術の分野まで国家の指向する世界に取り込み、益を成さない芸術はすべて排除しようとする国家当局に、彼はストレートに反発する。時の権力者に「芸術とは国家の指向することとは無関係なのだ」と堂々と皆の前で公言する。「長い物には巻かれよ」主義は彼には通じないのだ。やがて彼は職を失い、食料や画材までもの配給システムから排除される。そして枯れるように死んでゆくのだ。
監督ワイダの遺作ともなった作品だけれど、まったく遺作を鑑賞したという気持ちがする。戦後70年、社会主義が崩壊して30年あまり、当時起きたであろう様々な理不尽な出来事は、この時代語りつくされている感がする。だからか映画から伝わるものが少ない。このようなテーマの作品も当面はないかもしれない。電子仮想空間でどんな思想が生ずるともしれない時代はむしろ不気味とも思える。


 「ザ・ダンサー」
原題:La Danseuse 製作年:2016   製作国:フランス&ベルギー    時間:108分
監督:ステファニー・ディ・ジュースト   主演:ソコ
19世紀にダンスの新時代を作ったロイ・フラーによって創作された斬新なダンス。光の照明の中、長いシルクの衣装を纏い、回転し様々な形を織りなす神秘的な美しさ。
アメリカ出身のモダンダンサー   1890年代パリでダンサーとして活躍。1928年65歳でパリで死去。 また舞台照明技術分野のパイオニアとしても有名だった。実在したアメリカの女性。しかしこの映画は多分に創作してるのかもしれない。
ともかくも激しく回転して踊るダンサーのシルクの衣装が光を受けて様々に変化する様は息をのむように美しい。いまから120年位昔であれば、観る人に強烈な印象を残したのではなかろうか。映画を通しての印象と実際の舞台からのとは違うだろうけど、現代においても演出家しだいで、興行できそうに思う。

三人の会

2017-06-11 | 能・芸能

第二回 三人の会    平成29年6月10日     午後1時~6時
                   二十五世観世左近記念 観世能楽堂
番組
● 仕舞 「 鞍馬天狗 」   谷本康介
               地謡   安藤貴康  坂口貴信  観世淳夫   鵜沢光
● 能  『  八島  』
                  前シテ/漁翁 & 後シテ/源義経   川口晃平               後見  山中迓昌  岡久廣
                    ツレ・漁夫    谷本健吾
                    ワキ・旅僧  宝生欣哉      ワキツレ・従僧   館田善博  梅村昌功
                    間・浦人  山本則秀 
                    大鼓 :亀井忠雄   小鼓: 大倉源次郎   笛: 竹市学
                    地謡 :梅若玄祥 観世喜正 梅若紀章 小田切康陽 清水義也 林宗一郎 安藤貴康 観世淳夫
●  狂言    『  貰聟   』
                     シテ/聟   山本則重
                     アド/妻   山本則秀
                     アド/舅   山本東次郎
● 一調     『  班女  』
                    谷本健吾    大鼓  亀井忠雄
● 仕舞
       「  難 波  」    観世喜正
       「  放下僧 」小歌   観世銕之丞
       「  定 家  」     梅若玄祥
       「  善 界  」    山階弥右衛門
●  能  『  海士  』
                 前シテ/後シテ 坂口貴信       後見:林宗一郎  山階彌右衛門
                    ワキ/従者 殿田謙吉       ワキツレ/従者: 御厨誠吾  野口琢弘
                 子方/房前大臣  谷本悠太朗      間/浦人: 山本則重
                 大鼓:亀井広忠  小鼓:観世新九郎 笛:松田弘之 太鼓:某代行
                 地謡:観世銕之丞 浅見重好  岡久廣 山中迓昌  角幸二郎  木月宣行 川口晃平 鵜沢光

銀座の新しい建物として華々しく宣伝している銀座シックス。その地下階に竣工した観世能楽堂。今回はこの能楽堂を確かめるのも目的の一つだった。  複合ビルの地下に収納されているようなものだから、能楽堂としての佇まいは当然ない。都内にある各流の能楽堂はどこも似たようなものだからどうということでもないけれど、地方の方が能楽堂らしい建物があってその中に能舞台があるように思う。だからというわけではないけど、能楽堂というよりも能舞台、能ホールといったほうがイメージ的には近いような感じがする。舞台は移設されたものだから変わらないけれど、橋掛かりはちょっと短くなったかな。客席も長方形に奥が深くなってる。通路挟んで後ろの座席は10席くらいしかない。オペラグラスが必要かもしれない。周囲は天井の照明も含めてとっても華やかにできている。舞台の屋根の照明がこころなし目立つ。演能が始まる前に客席の照明が静かに落とされ舞台が明るく浮きたつ。これも新感覚。ともかく青天井の下に建つ能楽堂の趣とは全く異なるのだ。また出店はあるけど、能関連の固定売店はない。出入り口はエレベータとエスカレータ一機しかない。全館停電すると真っ暗闇の中に孤立して、闇に漬けこまれてしまうのだろうか。心配。明らかに変わったなと思ったのは、「開演xx分前・・・」と案内するスピーカーからの声はデパートやホールのウグイス嬢のもので、つまりここは能専用の舞台というのではなく、以外の芸能の舞台をも兼用することを目的としているなと感じた時だ。今後、どのような使われ方をするのか、どのような舞台が展開されてゆくのだろうか、そういう楽しみを覚える。

さて第2回目となった「三人の会」。ほんとに見ごたえありました。楽しめました。
「鞍馬天狗」康介君の跳び返りにはびっくり。まだ小さいのにいろんな芸を披露してくれました。「八島」。シテ川口演ずる確かな漁夫(漁翁というより)そして溌溂とした義経。何と言っても凄かった地謡。熱くなってきました。「貰聟」。ストーリーが面白く、特に東次郎師の演技が自然で、こちらも自然に笑えました。一調「班女」。谷本師の豊かな声量に裏打ちされた謡は説得力ありました。なによりも忠雄師の大鼓は冴えた打音で、この音を聴けただけでも来た甲斐があるというものだった。続いて仕舞四番。今を華と活躍されている各師の至芸というところでしょうか。安定感抜群でした。そしてラストの能「海士」。坂口の海人は物悲しく語られ、一転して龍女では華麗かつ悠然とした舞を披露してくれました。子方を務めた悠太郎君。猛稽古のせいか声が枯れ気味でしたが、長時間よく頑張りました。

次回は来年6月とか。楽しみです。