「残像」
原題:Powidoki 英題:Afrerimage 製作年:2016 製作国:ポーランド 時間:99分
監督&脚色:アンジェイ・ワイダ 主演:ボグスワフ・リンダ
『2016年10月9日、アンジェイ・ワイダ監督が急逝した。享年90。世界から尊敬される巨匠が死の直前に完成させた作品は、戦後の社会主義圧政下で、自らの信念を貫き、闘った実在の芸術家の姿だった----。』
『第二次世界大戦後、ソヴィエト連邦の影響下におかれたポーランド。スターリンによる全体主義に脅かされながらも、情熱的に創作と美術教育に打ち込む実在の前衛画家ヴワディスワフ・ストウシェミンスキが、自らの信念を貫き、闘う姿を描く。』・・・フライヤーの抜き書き
主人公はポーランドに実在した画家、美術大の教授。大戦で負傷、右足を失い、松葉杖を欠かせない。絵・・彼の場合前衛画だが、絵に対する情熱は高く、多くの画学生や社会の人たちに支持されている。しかし時代は彼にとって不幸だった。芸術の分野まで国家の指向する世界に取り込み、益を成さない芸術はすべて排除しようとする国家当局に、彼はストレートに反発する。時の権力者に「芸術とは国家の指向することとは無関係なのだ」と堂々と皆の前で公言する。「長い物には巻かれよ」主義は彼には通じないのだ。やがて彼は職を失い、食料や画材までもの配給システムから排除される。そして枯れるように死んでゆくのだ。
監督ワイダの遺作ともなった作品だけれど、まったく遺作を鑑賞したという気持ちがする。戦後70年、社会主義が崩壊して30年あまり、当時起きたであろう様々な理不尽な出来事は、この時代語りつくされている感がする。だからか映画から伝わるものが少ない。このようなテーマの作品も当面はないかもしれない。電子仮想空間でどんな思想が生ずるともしれない時代はむしろ不気味とも思える。
「ザ・ダンサー」
原題:La Danseuse 製作年:2016 製作国:フランス&ベルギー 時間:108分
監督:ステファニー・ディ・ジュースト 主演:ソコ
19世紀にダンスの新時代を作ったロイ・フラーによって創作された斬新なダンス。光の照明の中、長いシルクの衣装を纏い、回転し様々な形を織りなす神秘的な美しさ。
アメリカ出身のモダンダンサー 1890年代パリでダンサーとして活躍。1928年65歳でパリで死去。 また舞台照明技術分野のパイオニアとしても有名だった。実在したアメリカの女性。しかしこの映画は多分に創作してるのかもしれない。
ともかくも激しく回転して踊るダンサーのシルクの衣装が光を受けて様々に変化する様は息をのむように美しい。いまから120年位昔であれば、観る人に強烈な印象を残したのではなかろうか。映画を通しての印象と実際の舞台からのとは違うだろうけど、現代においても演出家しだいで、興行できそうに思う。