番組 国立能楽堂
・狂言 『狐塚』 小唄入
シテ(太郎冠者) 山本東次郎
アド(次郎冠者) 山本則孝
アド(主人) 山本則重
*** 蝋燭火入れ ***
・ 復曲能 『松山天狗』
シテ(老翁・新院の霊) 観世喜正
後ツレ(眷属天狗) 鈴木啓吾 古川充
ワキ(西行法師) 殿田謙吉
アイ(白峰の木の葉天狗) 山本泰太郎
大鼓:柿原弘和 小鼓:観世新九郎 太鼓:観世元伯 笛:一噌隆之
梅雨明けてから連日暑い。この日も35度を超える猛暑日だった。開演は夕方の7時だったが外はまだ明るかった。館内は程よく冷房が利いていて心地よかった。例年この蝋燭能は完売らしいが、今回は空席があちこちあった。開演に先立ち、観世元伯さんから演目について簡単な解説があった。それによると700年も前に起った朝廷の内紛で、敗れた崇徳院は徹底的に冷遇されて讃岐に流され、以後中央からかえりみられる事もなく憤死したらしい。朝廷はどこかに引っかかるものが残ったのか、何か不都合なことが起こるとこの崇徳院の恨みだということになったそうだ。正確な情報が掴みにくかった時代というのは話しに尾ひれがついて面白いものだと思う。噂・妄想・思い込み等がいくらでも入り込めたのだ。天狗という眷属は一般人はなれないのだそうだ。皇族の人々しか冥界にで許されないのだそうだ。これも面白い。そして近年になって700年忌?が実際に宮中で施行されたのだそうだ。それだけ崇徳院の怨霊は大きいのだ。よくわからんけど。国立の舞台に20位の燭台が配置され蝋燭が灯される。加えて若干の照明が入り、舞台全体が木の祠の中のような雰囲気になった。西行法師が讃岐を訪れ崇徳院を想い歌を詠む。崇徳院の亡霊があらわれ西行に感謝し、舞いを舞う。しかし舞ううちに恨みが昂ぶり、天狗をひきつけ恨みを果たすべく豪快に舞を舞う。太鼓が結構お仕事するのだ。いつもは申し訳程度しかないのに。真夏の夜の観劇としてゆっくりとしたひと時をすごせた。