言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
グッと感じた言葉・一文などを残してゆきたい。
その他勝手な思いを日記代わりに。

映画「海の沈黙」

2024-11-25 | 映画 音楽
原作・脚色:倉本聰  監督:若松節朗    主演:本木雅弘 小泉今日子 石坂浩二 中井貴一  他

久しぶりに 何か重いものを飲み込んだ感じの残る 映画だった

模写した作品が オリジナルよりも 格段に優れていた とするならば それを 一概に贋作とかたずけて良いのか・・・

美は 美であって それ以上でも それ以下でもない・・・    と言う

ゴッホやドガを超えたと自認する天才画家Aは かっての仲間Bの描いた作品を密かに模写する 

月日は過ぎBは社会的に名声を得 作品展が行われる

華々しいその初日 Bは作品の中に 自分が描いてない作品があるのに気づく

公表すればタダでは済まないことを承知で Bは公表する    知った以上画家の良心にそって  

その贋作が自分以上に描かれているのを承知の上で・・・

物語はそこから始まる

美とは何 画家とは何 作品の価値とは何 貧しき故に才能が真っ当に開花しない不幸 作風を生み出すエネルギーは何

Bの妻は かってAと恋仲だった・・・    恋人も知る 海の沈黙

海で遭難している男が 海岸に燃え盛る かがり火を どう見 どう思い 海に消えたのか ・・・

あの問題作には 恋人が訊ねるAの傑作 と 贋作と指摘された絵 が重なってるというミステリー

主演の本木雅弘は熱演でした   良い映画と思う


映画 11人の賊軍

2024-11-02 | 映画 音楽
東京国際映画祭の出品作品を眺めていたら 11人の賊軍 というのがあった

これまで 七人の侍 とか 十三人の刺客 とか面白かった映画があったので期待感があった

たまたま近くに 新しい上映館ができ この映画が上映されてるので 観に行った
          

時代背景は 徳川から明治に移行するとき    ある東北の小藩は 新政府にするか 幕府に味方するか 迷っていた

藩の上層部は 新政府に味方する方向に決心したが  城内には幕府に味方する同盟軍が居り

どのようにしたら新政府側に 戦を交えず恭順の意を伝えるか悩んでいた 

そこに出た奇策は  処刑寸前の悪人たちを活用するというものだった

作戦が上首尾に終わったとき 罪を許すという 藩の提案にノッタ罪人11人

内密には 作戦終了後 11人全員抹殺するということなのだが 11人は必死になって作戦を実行する ・・・・・・

権力者が罪人の命を使い捨てにするという不条理が描かれる  と評価した誌面があったが そういう映画なのだ

しかし時代劇も 七人の侍 当時と変わってきた るろうに剣心 あたりからずいぶんとモダンになった 

ポップコーンをカリカリしながら楽しめる映画になってきた   時代劇ファンとしては寂しい

映画館も変わった ゆったりした座席 小さな場内 優れた音響設備 高くもない料金 

映画には 仮想空間では出せない情感のようなものが残ってると思うのだが


映画 ボレロ

2024-08-12 | 映画 音楽

ラヴェルのボレロ その曲がどのようにして生み出されたのかを映画化した作品

ことの起こりは ダンサーからの作曲依頼

ラヴェルは どんな物語のダンスかを訊ねると ダンサーは そんなことはどうでもよい 官能的な音楽を と返す 

曲の長さは17分程度    期限を切られる

しかし何時までたっても 何の曲想も浮かんでこないことに苦しむラヴェル 

会場も予約したし そろそろ振り付けを と思いダンサーが訪ねてきても 何も出来ておらず 嘘を並べるラヴェル

町工場での 激しく打ち合う機械音 その騒々しくも 規則正しい音に   または  目覚まし時計のチクタクと刻む音に  または  流行歌の節に・・・・     曲のヒラメキを求めるラヴェル

苦心の末 浮かんだ1分間のメロディー そしてその曲想を 17回 次第に音量を上げてゆき 繰り返すことを思い立つ

           


やがてダンサーは 振り付けたダンスを ラヴェルに披露したが その官能的なダンスを ラヴェルは受け入れることができず 憤慨し 楽譜を燃やしてしまう

しかし ダンサーは 変えることは無く  初演は大成功

映画のなかに溢れる タバコの火 煙  当時のパリの社交界 T型フォード?のTAXI NEW YORKのジャズクラブ ダウンタウンの夜の風情 のどかな海岸・・・・
 
ピアノだけでなく ジャズ クラシック アフリカの民族音楽 流行歌  等々 音に溢れ パッチワークのように現れ楽しい    もっとも出だしの辺りのピアノは騒音に聞こえたが

エンディング 白黒のスクリーンに豪快・華麗にボレロを舞う男性・・・元パリ・オペラ座の有名ダンサーとか    映像美も含め 素晴らしい

また 翻訳が 詩を読んでるようで 良かった

監督:アンヌ・フォンテーヌ  主演:ラファエル・ペルソナ
製作:フランス 原題:BOLERO  上映時間:121分
字幕翻訳:松岡葉子

                                フライヤーより転写
写真は全てユーチューブの公式ホームページよりお借りしました

映画 「フェラーリ」

2024-07-06 | 映画 音楽
車が 三種の神器の一つだった頃

フェラーリ マセラティー ポルシェなど数々の外車は  夢の車だった

ラジオで聞く ル・マン24時間耐久レースのエンジン音   遠のく排気音 は 大きくとも心に響く音だった

タイヤの軋む音 焦げる臭い   排気ガスの臭い  生きてるが如く反応するタコメーターの針 ・・・・・

そういう車にまつわる楽しみを卒業してしまった昨今 なんとなくこの映画を観る気になった

ストーリーでの人間関係はどうでも

今でも通用しそうなイタリア車

風光明媚なイタリアの山野を疾走し あるいは 歴史ある街中を駆け巡る レース展開 
              

血の気の多そうなイタリア人

映画館ならではの音響で聞かせてくれる 猛々しいエンジン音 吠える排気音

タイヤの摩耗を軽視したばっかりに起こる悲惨な事故 ・・・

監督は何を伝えたかったのか知らないが 当方のノスタルジーには十分応えてくれた映画だった


2023年製作  監督:マイケル・マン  主演:エンニオ・フェラーリをアダム・ドライバー

原題:Ferrari     米英伊サウジアラビア合作  130分  PG12

写真は全てユーチューブより拝借しました




映画「瞳をとじて」

2024-02-15 | 映画 音楽
監督 ビクトル エリセ    原題 Cerrar los    ojos          製作 スペイン    169分   2023年

黒いデコピンのようなワン公と海の物語かと思ったら全く違った
ワン公は本作でホッとするような景色をくれる  ただそれだけ

濃い緑に押しつぶされそうに建っている古い館 そこに住まう 歳月に押しつぶされそうな男と召使・・・と映画は始まる

話がサッパリ解らないので チラシからストーリーを転記すると

  かっての親友は なぜ姿を消したか ―――
未完のフィルムが呼び起こす記憶をめぐるヒューマンミステリー  
映画 別れのまなざし  の撮影中に主演俳優が失踪した 
  それから22年  当時の映画監督であり失踪した俳優の親友でもあった映画監督は 
失踪事件の謎を追うTV番組から証言者として出演依頼を受ける 
 取材に協力する監督は次第に俳優と過ごした青春時代を そして自らの半生を追想する
そして番組終了後 俳優によく似た男が海辺の施設にいる という一通の思わぬ情報が寄せられた  ・・・云々 

この映画には 親友同士の映画と 本作のストーリー展開の映画と 2本の映画がある
本作では 記憶喪失した俳優の記憶を呼び起こそうと過去を追想するシーンが連続する ・・・  青春時代から人気の映画人になるまでの記憶が

一方 作中映画では 俳優の演じる主人公が遠い昔に別れた娘 に会いたい と一枚の写真を ある男に示し 捜索依頼をするシーン 
写真には大きな瞳でジッと見つめる少女の写真が写っていた

監督の記憶を遡る数々のシーンもさることながら 瞳を真正面から見るシーンも数々でてくる
記憶喪失した親友同士  父と娘  かっての恋人同士  そしてワン公と監督・・・
互いの記憶  なに想うのか  探るように 瞳の奥深く見つめる

とじた瞳が開かれる  それは二人の思いでか・・  記憶はもどるのか・      そんな余韻を残し映画は終わる


それにしても長かった  他の予告編も含めると3時間余りになる
圧倒的に感動したという映画ではなかったけれどオーソドックスな映画という印象がする




   

征爾 逝く

2024-02-10 | 映画 音楽
88歳 心不全とのこと

N響を指揮していた岩城のスタイルが 指揮者のスタイルと思っていた当時

小澤の指揮するN響を 初めて聴きに行った

その指揮・・・タクトの振り方が 岩城とは全く違っていた

岩城は ∞ のように 小澤は + のように 振った

斬新というか 大胆というか 音より タクトが気になったコンサートだった

それ以来 小澤は気がかりな音楽家だった

N響 日フィル 中曽根や慎太郎たちの応援 ・・・・ 

ミュンシュのあとを襲ってボストン響の常任 ・・・・

世界の音楽界に まるで竜が駆け登ってゆくようで 夢があった

その音楽から 自分なりに音楽を教えてもらったような気がする

 ありがとう 小澤征爾





映画 「春に散る」

2023-08-25 | 映画 音楽
久しぶりに映画館へ

だいぶ前に読んだ 沢木耕太郎の「春に散る」

内容が面白かった のと 映画の宣伝に引かれて いそいそと・・・

原作の内容を全て再現ということは無理として 

やはり映画では ボクシング 闘魂 青春 のような一面を切り取ってるように思った

本では味わえないグラブミットの鋭い音 打ち合うグラブの重い音 空気を切り裂くようなグラブの動き シューズの擦れる音 若者の叫び 絶叫・・・

元ボクシング王者だった人物が 俳優を指導しただけあって ボクシングシーンはドラマチック

横浜流星 窪田正孝 片岡鶴太郎 楽しめました

2023映画「春に散る」製作委員会
監督 : 瀬々敬久    原作 : 沢木耕太郎「春に散る」  133分
 

映画「生きる LIVING」

2023-03-31 | 映画 音楽
黒澤明監督の名作「生きる」をベースにした本作

脚本を書いたカズオイシグロはイギリスにあって 10代の時には黒沢映画を観て影響されたそうだ
長じてこの作品を製作したくなり 再度一度だけ「生きる」を観て独自の英語の脚本を書き上げたらしい

時代背景も同じ1950年代
日本は戦争に敗れ 一方のイギリスは戦勝国
日本の主人公はうらぶれた帽子にマント 髭ずらの役人
イギリス版は山高帽を被りピンストライプの上下背広をピシッとキメた役付役人という設定
医師から余命半年と宣告され 一旦は落ち込み途方に暮れるが
生ける屍のごときゾンビのままで終わるを良しとせず
事なかれ主義の役所内にあって身を挺して小さな公園をつくる     というストーリーは同じだ

雪の降る公園のブランコで「ゴンドラの唄」を歌うシーンは名場面だけれど
本作にも同じシーンがでてくるが 歌は「ゴンドラの唄」ではなく 受ける印象は一寸違う
伊藤雄之助の顔がちらちらと思い出されたが あの一連のシーンは黒沢作品の方が味があると思う

白黒とカラー その他諸環境の違いを超え 死を目前にした主人公が死を背負って 短くも輝いた生を描いた映画としては やはり黒澤作品に共感を覚える
背景に流れる音楽はいいと思う この作品のために作曲したのかどうかは知らないが ジャズっぽい音楽や主人公が酒場で歌うスコットランド民謡など胸に沁みた

2022年製作 103分 イギリス
原題:Living
主人公:ビル・ナイ  監督:オリバー・ハーマナス 脚本:カズオ・イシグロ


映画 クライマー

2023-01-08 | 映画 音楽
作家 沢木耕太郎の「凍」を読んで
映画「人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版」 を観る気になった
ドキュメンタリー映画  実話である
映画ではアルピニスト山野井夫妻の登攀実績と日常生活を中心に画かれている
登山というよりロッククライミング 
岩壁登攀に焦点を合わせた過酷なスポーツ
死亡率が高すぎるスポーツ
谷川岳一つとっても1000人近く遭難し死亡している
そんな世界で山野井夫妻は世界の大岩壁に挑戦し数々の初登攀を成し遂げしかも立派に生活しかつ現役クライマーでもあるのだ 
ただ夫 泰史は手の指5本 右足の指全部失い下駄みたいになってるし妻の妙子は両手足で18本の指を凍傷で失ってる
そんな夫婦でありながら実にあっけらかんとして行動してるのだから感動してしまう
写される岩壁は どこも独特の厳しい美しさをしている
しかし どのように変化するかわからない自然の猛威に晒されるのを承知で挑む世界
スポーツと言えるのか
自ら生身を危険に晒して遭遇する自然の在り様は例えようもなく美しいのだろうとしか思えない


映画「親愛なる同志たちへ」

2022-04-17 | 映画 音楽
ソ連時代の革命にテーマを求め、志高くその理想の実現に闘志する映画かなと思ったが、違った。

60年くらい前にある小さな村であった暴動騒ぎを底辺にした、ヒューマンドラマ。
そこで起こった数々の出来事は、今のロシア・ウクライナ戦で起こっている出来事に通じることが、少なからずエピソードとして語られ興味深かった。

なかでも、国家上層部はその体制維持に不都合な出来事には徹底的に隠蔽をはかることだった。知らぬは一般庶民のみというやりきれない思いがした。

むしろ映画のタイトルに近いのは、「同志少女よ、敵を撃て」という本のほうが面白い。
物語の背景がしっかりしていて革命につきものの死・殺人について考えさせられる。