一月十日 矢来能楽堂
番組
●『翁 十二月往来 』
左翁 : 観世喜之 右翁:: 観世喜正 後見: 弘田裕一 駒瀬直也
三番叟 : 野村萬斎 面箱:内藤連 千歳:中森健之介 狂言後見: 高野和憲 月崎晴夫
笛:藤田六郎兵衛 大鼓:柿原孝則 頭取:幸清次郎 脇鼓: 幸正昭 野中正和
地謡: 鈴木啓吾 遠藤和久 五木田三郎 中森貫太 奥川恒治
● 狂言 『 宝の槌 』
シテ:石田幸雄 アド:月崎晴夫 小アド:高野和憲 後見:飯田豪
● 仕舞 「 白楽天 」 長山禮三郎
「 二人静 」 弘田裕一 駒瀬直也
「 弱法師 」 五木田三郎
● 能 『 小鍛冶 』
シテ:永島忠侈 ワキ:福王和幸 ワキツレ:村瀬慧
間: 飯田豪 後見: 長山禮三郎 永島充
太鼓: 大川典良 大鼓: 柿原光博 小鼓 : 幸正昭 笛 :松田弘之
地謡 :桑田貴志 坂真太郎 長山耕三 小島英明 佐久間二郎 中所宜夫 観世喜正 遠藤喜久
矢来能楽堂に入ったらいつもより明るい感じがした。あたりを見回すと客席の椅子が全て真新しいものに取り換えられていた。背もたれは深い赤ワイン色をしており、支える木部の色はチョコレート色をしている。以前のものより、幾分広目で席数も減らしてるらしく、ユッタリ感がある。また椅子の後ろ側の木部には金属のプレートが打ち付けられていて、それには謡本の詞章の一部が焼き付けられているという凝った作りになっていた。脇正面後ろの壁は木製のベニヤ板だったのが、厚手のしっかりした壁に作り替えられ、防音効果も良くなった。全体の白壁もリニューアルされたみたいで白さが目にしみる。座敷席の最前列は、掘りごたつみたいになっていて、足が伸ばせる。 そのせいかどうかわからないが、終わり近くになって大いびきが聞こえてきた。
さて「翁」。十二月往来の小書付である。面持を先頭に、左翁・右翁の順に全員が舞台に出揃う。萬斎師も厳めしい顔して登場。でも黒ずんでて上まぶた下がってて心なし小さく見えた。お疲れのご様子。正面に拝礼、神歌、面を付け両翁詞章掛け合いの連舞となる。この詞章に1月から12月までのことが謡われる。なにを謡ってるのかわからないが、声を合わせてるので、喜正師の朗々とした声は控えめ。翁が退場し三番叟。これは良かった。さすが萬斎師。朗々として、ブレない所作。キレの良い動作。次第に顔に赤みがさし、乗ってくる様子がうかがえて良かった。 狂言「宝の槌」。主人(小アド)の言い付けで宝物を買い求めに出た太郎冠者(シテ)。何を買い求めてよいかわからないので、「宝を買いたい」と連呼して歩いていたら、詐欺にあって、太鼓の撥を買わされる。その売り文句、また主人への言い訳などを面白おかしく披露してくれた。仕舞は「白楽天」が印象に残った。音もせず軽いようで重くスルスルと縦横に舞台を使っての舞はインパクトを感じ、さすがです。能「小鍛冶」。ウーンというところかな。地謡はまとまって良く、お笛は喨々と吹き上げておりました。