第43回のうのう能特別公演 - 老いてなほ 花なり -
平成27年2月11日 国立能楽堂 (13:00~17:20)
第1部
● 解説 「老木の花」と老体の能 中村建史
●観世流仕舞 巴 観世喜之
●観世流仕舞 敦盛. 片山九郎右衛門
●宝生流仕舞 鵺 宝生和英
第2部
● 『宝生流 能 頼政』
シテ 辰巳満次郎 後見:宝生和英 山内崇生
ワキ 宝生欣哉
アイ 山本泰太郎
大鼓:柿原弘和 小鼓:大倉源次郎 笛:松田弘之
地謡:小倉伸二郎 和久壮太郎 澤田宏司 辰巳大二郎
小倉健太郎 武田孝史 高橋 章 朝倉俊樹
● 『観世流 能 実盛』
シテ 観世喜正 後見:観世喜之 奥川恒治
ワキ 森 常好 ワキツレ:森 常太郎 舘田 善博
アイ 高澤 祐介
太鼓:観世元伯 大鼓:亀井広忠 小鼓:観世新九郎 笛:一噌隆之
地謡:永島 充 佐久間二郎 小島英明 坂 真太郎
味方 玄 片山九郎右衛門 駒瀬直也 鈴木啓吾
今回のテーマは「老いてなお花なり」。解説によれば、700年前の庶民の人達も芝居を観に行くとなると、役者は若くてきれいでかっこよいのを見に行っていて今と変わらない。演出家でもあった世阿弥は老人、つまり見せ場があまりない世代をどのようにすれば主役として見せられるかを考えた。そしてたどり着いた結論は、今は老人といえどかっては輝いた時があったはずで、そこにスポットを当てられれば観客に見せられるのではないかということだった。そしてこの考えを「老木の花」と表した。桜の老木にも可憐な花が咲き、たくさんの人達にアピールされているように。そんな演出方法を考えだしたのだと言う。今回の「頼政」も「実盛」もともに老人になってからの物語である 。武士として生き、合戦で見事に戦い 果てていった最後の華。その物語なのだ。
「頼政」 ワキが橋掛りをゆっくりと歩み本舞台に出てきたときから見所はシーンとして緊張感が漂っていた。シテが幕の内側から、遠く脇柱にいるワキとやり取りをする。やがて姿を現し、これもゆっくりと本舞台へ出てくる。演じているのに場の雰囲気がすごく静かに感じた。
頼政頭巾の兜と面、そして一際華やかな袴を着用して登場。治承四年の宇治川合戦の模様を、床几に腰かけて舞台真ん中で語る。 負け戦を悟り、扇を舞台に置きそのまま幽霊が姿を消すようにゆっくりと退場。シテが幕に消えてからワキもゆっくりと退場。
なんだか昼間に夢を見ているような感じだった。
「実盛」 ワキ僧三人が舞台に登場し、次いでアイが登場、口上を述べる。有難い念仏を広める目的ということか、見所にはのどけさを感ずる。
中入り後、煌びやかな衣装をまとって登場。寿永二年篠原の合戦の模様を語る。見せ場なのだ。つまり「老木の花」を咲かせた戦いの模様を、一人芝居の形式で見せるのだ。
悲壮感、凄愴感のようなもはあまり感じない。むしろ眠ってしまいそうないい声と華麗な舞台だったなと思う。
頼政77歳、実盛72歳。当時としてはかなり長生きしたほうで、戦さえしなければもっと年を重ねたのだろう。しかし二人とも武士の意気に殉じ生涯を終えた。入場の付録にあった案内に源平の争いが年表にまとめられていた。それによると1151年から1190年まで約40年、約40曲に余る能のテーマがある。殆どが源平合戦の模様だ。能が武士階級に受けたのもこの辺に理由があるのかもしれない。世阿弥が35歳前後(1400年頃)に着想し風姿花伝にまとめ、ドラマ化した劇は現代でもしっかりと息づいているのはすごいことと思う。