言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
グッと感じた言葉・一文などを残してゆきたい。
その他勝手な思いを日記代わりに。

「ある介護負担の軽減」をテーマに

2019-10-13 | 読書 本
●主人公・医師漆原糾の行動
廃用身・・介護の現場で使われる医学用語で、脳梗塞などの麻痺で回復の見込みがない手足のこと・・お年寄りの麻痺した手足を切断する療法・・現実のリハビリは、せいぜい現状維持か、関節拘縮の予防くらいしか効果がないことが多い・・麻痺した手足を「切断」すれば身体も一挙に軽くなる・・あらゆる介護が半分近くの負担ですむ・・・治療として手足の切断が行われる、それは切断しなければ生命の危険があったり、さらに壊死が広がる危険がある場合・・・単に麻痺しているというだけでは、切断の対象にはなりません・・廃用身というだけでは、切断の対象にならず、保険診療の点数が認められない・・・廃用身になった手足を取り除いて、物理的な障害を軽減すること(廃用身の分だけ体重を軽くすること。拘縮した関節を取り除いて着替えや移動を楽にすること。廃用身がもたらす痛みや疼きを取り去ること。など) 

●これに対するメディアの対応
「驚愕の切断療法 老人の手足を切り落とす非道のデイケア」「身も凍る手足切断クリニック 怯える老人たち」「老人虐待 手足を切断して介護をラクに」「残虐非道 猟奇の老人デイケア」「手足の切断を考案した医師の狂気」等々

その後漆原夫妻は自殺する。

 そして 著者久坂部のエピローグ
・・漆原氏は老人医療の突出した先駆者だった。老人介護の未来はだれにもわからない。いずれ時代が上記のような療法を必要とする時がくる。そのとき人々は漆原氏の慧眼を知るだろう。
                 「廃用身」 久坂部 羊    幻冬舎文庫

2019 大山火祭薪能

2019-10-04 | 能・芸能
令和元年(第39回) 大山火祭薪能       大山阿夫利神社
文化庁令和元年度日本博を契機とする文化資源コンテンツ創生事業
主催:火祭薪能実行委員会 一般社団法人伊勢原市観光協会
共催:伊勢原市
実施日:令和元年(2019)10月2日(水)初日  16時~19時30分
番組

● 大山狂言・仕舞・・・地元の子供たちが演じた。狂言は「痺」。

● あいさつ・・・地元の子供たちが、先ず日本語で、次に英語で挨拶。市の英語教育に力を入れてる成果の一端を披露。

● 修祓・・・神主による祝詞奏上。お祓い。

● 神火入場・・・地元の有志が製作した鎧・兜を身にまとい、かがり火を持って山から下りてきて、舞台の前で発声。

● 火祭神事・・・大きく組み立てられ、神札の貼られた木に、有志により点火。

● 火入れ式・・・能舞台、シテ柱とワキ柱辺りに在る大きなかがり火に点火。

● 僉義(せんぎ)・・・神主により、薪能の開始が宣告される。

● 『 一人翁 』  山階彌右衛門
             地謡:佐川勝貴 清水義也 浅見重好 武田文志

● 『 大山神楽舞 』 倭舞「しろがねの曲」巫女舞「若宮」  :  地元の若者たち男女。

● 狂言 『 樋の酒 』  山本東次郎 山本則孝 山本則俊

● 能 『 土蜘蛛 』 黒頭
シテ:観世清和  ワキ:福王和幸  胡蝶:角幸二郎  トモ:武田宗典  頼光:観世三郎太
間:山本則重  後見:上田公威 武田尚浩
笛:一噌隆之 小鼓:鵜澤洋太郎 大鼓:佃 良勝 太鼓:林雄一郎
地謡:武田志房 木月章行 木月宣行 坂井音雅 武田友志 松木千俊 観世芳伸 浅見重好

大山阿夫利神社は小田急伊勢原駅からバスで30分近く山に向かったところにある。
この神社には江戸時代に観世宗家から受領したとされる「翁面」を所蔵しているとのことで、能についてはかなり昔から継承されていたらしく、大山能として伝統を今も継承しているとのこと。ふもとの社務所に在る能楽堂は年季を経た古さはなく、新しい。能楽堂のすぐ後ろまで迫った山や鬱蒼と大木の生い茂る林が鏡板の役割を果たし、本来の松が描かれた板はなく、舞台は風が自由に吹き抜ける。舞台は良く磨かれているようで、光に反射していた。面白かったのは番組の途中で巫女たちが大きなモップで舞台を拭いたことだった。初めて見た光景だった。この日午後は良く晴れ渡り、日差しはむしろ暑く感じ、熱中症が心配されるほどだった。風も殆どなく、天気に関してはこれ以上の好条件はないほど恵まれた日だった。
翁が演じられてた頃は未だ辺りは明るく、かがり火の爆ぜる音や煙の臭いを感じながらの観能だった。やがて陽も落ち舞台が照明により淡い橙色に浮き上がり、背景の林が青くライトアップされてくる。西の空には三日月が輝き、虫たちが今を盛りと鳴いて薪能に彩を添えてくれる。そのころに「土蜘蛛」が演じられた。清和師による蜘蛛の化身が鮮やかに、真っ白な糸を舞台に幾条にもまき散らす。照明に生えてとても見事な糸撒きだった。ただ太陽が山陰に沈むと温度はぐんぐん下がり、半袖などではとても寒く、マフラーを取り出す人たちや、用意の良い人はブルゾン等着込んでちょうどよいくらいに気温は下がった。やはり秋なのだ。それも大きな神社の境内なので余計、寒く感じた。