主宰 : 野村万作
2015.8.29.(Sat) Open 13:30 Start 14:00
喜多六平太記念能楽堂
番組
解説 深田博治
● 小舞 『御田』 月崎晴夫 地謡 野村万作 深田博治 高野和憲
●狂言 『文相撲』 大名: 竹山悠樹 太郎冠者: 岡 聡史 新参の者: 内藤 連
●狂言 『文蔵』 主: 深田博治 太郎冠者: 野村万作
●狂言 『鎌腹』 太郎: 高野和憲 妻: 月崎晴夫 仲裁人: 飯田豪
万作一門の若手で結成されたざざん座は今回で10回を迎えた。万作師が挨拶文のあるように「・・・より充実した稽古を通じて、年齢に相応しい花のある舞台を期待したいとおもいます。」とある。そのあたりの思いを込めて深田師は解説された。「今回の舞台は各人が演じてみたい曲をめいめいが取り組んだのでお楽しみいただけると・・・記念に手ぬぐいでもと思ったけど染めに時間が掛るので、クリアホルダーにした・・・『文蔵』の太郎冠者で万作先生が相手してくれたこと・・・」このあと曲の解説をたっぷりとして、会場のスタッフから解説止めの合図があったりして。
『御田』 解説文によれば、能「賀茂」の替間(特殊演出)の中の舞を、狂言小舞として独立させたもの。賀茂神社の神事を舞台に、田植えの音頭を取る神主と早乙女たちの艶なやりとりを、舞手と地謡の掛け合いをまじえて紋付袴姿で描いたもの」とある。でも月崎師の舞は、狂言のどこかおかしみのある、解説にある艶を感じさせる舞ではなく、様式性のあるむしろ三番叟に近い感じの舞だった。扇に代えて特製の柄杓を持って田植えの風景を小舞で表現した。かっちりした印象が残った。
『文相撲』中世にも相撲はあって、大名も愛好者がいたようだ。大名が相撲の解説書を懐から取り出し、読みながら相撲を取って打ち負かされるというものだが間の取り方、とぼけ方がとても面白かった。
『文蔵』語り物である。主人に無断で遠出した家来を咎めたが、主人の伯父にも会って挨拶してきたことを聞いて怒りを収めた主人。家来は伯父にそのおり美味いご馳走を振舞われたのだが思い出せない。なんでも「石橋山の合戦」に出てくる人の名に似ているというので、主人は「石橋山の合戦」を語るので聞いていて思い出したらそこで止めろと命じ、延々と物語を語り出す。黙って聞いてる太郎冠者。そしてついに「そこ・・・」と突っ込みを入れる。絶妙のタイミング。物語に文三家安(ぶんぞういえやす)という家来が出てくるのだ。それで温槽粥(うんぞうがゆ)というお粥を思い出しめでたしめでたしとなるのだ。身振り手振りを交え語る主、そしてとぼける太郎冠者。面白かった。
『鎌腹』怠け者の太郎に怒る妻。妻は山仕事の鎌を持って早く仕事しろと言う。口争いして負ける太郎。ぼろくそに言われ立つ瀬ない太郎はこの鎌で腹を切るという。「切るなら見事切ってみよ」と言ってさっさと仲裁人と立ち去る妻。誰もいなくなった舞台で太郎は腹を切ろうと「切るぞ、切るぞ」と言うが誰もいない、だれも止めてくれないので拍子抜けしてしまう。さんざん切る切るといって、結局痛いし、怖いから止めたということになり、山に仕事に行くという物語。太郎と妻の活力溢れた演技は狂言らしくて面白かった。