二曲三体事
・・・・水墨画や、枯山水の庭など、禅や浄土の思想をふまえ、無常観に裏打ちされた、みごとな美の世界を生み出した中世という背景。クーデターのくり返される、政情激変の社会状態。その中で、咲いては散る花のいのちの無常をこそ、永遠の美と観じた中世の人々、そして世阿弥。独自の時空の観念を打ち樹てて、さまざまな作品を創造した中世の芸術家たち、そして世阿弥。能は、あくまで身体を通して、人間個人の生身の肉体を通しての表現でありながら、その生身は声とか動きとかに還元されつくすことを要求する。また、能は、表面に現れる意味内容や現実性で理解しようとされることを拒む。かといって、ただ形式や約束で捉えてもらうわけにもいかない。能の演技は、その立脚している中世思想の、その抽象性の美学を、からだで感じてしまわなければ出来ないのだと思う。・・・・
観世寿夫