言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
グッと感じた言葉・一文などを残してゆきたい。
その他勝手な思いを日記代わりに。

第23回のうのう能特別公演

2011-01-30 | 能・芸能
番組

・狂言 『川上』
         盲目の夫:野村萬斎
            妻:石田幸雄

・仕舞  『白楽天』:梅若玄祥
     『弱法師』:観世喜之

・復曲能 『大般若』
          深沙大王:観世喜正   玄奘三蔵:森 常好
            龍神:小島英明 桑田貴志
            飛天:坂 真太郎  古河充
         大王の家来:高野和憲

狂言「川上」。ほのぼのとした笑いをテーマとしたのではない曲。シテは何かの病で今は盲になっている。再び目が見えるようお地蔵さまにお願いをする。お地蔵さまは、連れ添うてきた妻と離縁することを条件に、願を聞き届けるという。それを受け入れたシテ。首尾よく目が見えるようになり、夫婦で喜び合うものの、お地蔵様との約束を聞いた妻はカンカンになって怒り、お地蔵様を罵倒する。オロオロするシテ。そしてついに妻の言い分を受け入れ、お地蔵様との約束を反故にし、自分は再び盲になって行く。そして以前と同じよう妻の愛情に護られた日常に戻って行く。40分弱の曲ではあるけれど、シテの演じる場面が見どころ。橋懸りを萬斎師演じるシテが杖をコツコツさせながらゆっくりと歩む。映画「乱」で崖の上に一人佇む、盲にされた若者を演じたけれど、シルエットはまさにそっくりでした。無色透明。受け手の思惑にどうにでも溶け込んでくるそんな印象だった。妻の許しを得てお地蔵さまのもとに道行。語り、つまずき転び・・・と見どころ聞きどころ一杯だった。客席も水を打ったよう見入っていた。喜びもつかの間、妻とのやり取り。石田・妻との掛け合いも楽しめました。やがて再び盲になったシテは妻の腕にすがって橋懸りを退場してゆく。退場する演技も難しさがあるのだなと思った。

能「大般若」。般若とは女の化身。だからオドロオドロしい能かなと思ったが、違った。西遊記の一部みたいなものだ。ガイドブックによれば、「三蔵」とは高僧の敬称。「三蔵法師」というのはだから個人名ではなく「玄象三蔵」でその人が特定されるという。また解説者によればシテの大王は河童の沙ごじょうの末裔とのこと。首にぶらさげた7つの頭骸骨はこれまで食べてしまった7人の三蔵の首だという。曲のスケールが大きいけれども玄象三蔵が苦労して天竺から唐へ持ち帰ったという「大般若経」の1つのエピソードを能にしたものだ。動きも多く、衣装も綺羅びやかでキビキビと小気味よく、楽しい能だった。

第53回野村狂言座

2011-01-14 | 能・芸能
番組


・『筑紫奥』
         丹波の百姓:高野和憲
        筑紫奥の百姓:月崎晴夫
            奏者:石田幸雄
・『伯母ヶ酒』
             甥:野村遼太
            伯母:野村萬斎
・『文山賊』
            山賊:野村万之介 ⇒ 石田幸雄
            山賊:石田幸雄  ⇒ 深田博治
・素囃子 『神舞』

・『麻生』
         麻生の何某:野村万作
            藤六:野村萬斎
            源六:深田博治
          烏帽子屋:竹山悠樹

万之介師の訃報が新聞の訃報欄にあった。
 野村万之介氏(のむら・まんのすけ、本名・野村悟郎 能楽和泉流狂言師)
 昨年12月25日、肺炎のため死去、71歳。葬儀は近親者のみで執り行った。

「常在戦場」というか、舞台で戦死したような感じがする。
あの飄々として、いつも人間のおかしみを感じさせてくれた狂言師だったのに残念だ。
ただただご冥福を祈るのみです。 合掌