言葉のクロッキー

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その他勝手な思いを日記代わりに。

九皐会10月定例会

2016-10-12 | 能・芸能

平成二十八年十月九日   矢来能楽堂   午後一時始

番組

●能  「芭蕉」
          シテ  弘田裕一            後見   遠藤和久  永島忠侈
          ワキ  森常好
          間   能村晶人
          太鼓 國川 純    小鼓 田邊 恭資    笛 寺井 宏明
          地謡 長山禮三郎 観世喜正 五木田三郎 中所宜夫 鈴木啓吾  永島充  佐久間二郎  中森健之介
●狂言 「附子」
           シテ   野村万蔵           後見 小笠原匡
           アド   河野佑紀
           小アド  野村虎之介
●仕舞
           「生田敦盛」  観世喜正

           「梅   枝」  五木田三郎

           「大瓶猩々」  観世喜之
●能  「女郎花」
             シテ  遠藤喜久             後見  観世喜 之  鈴木啓吾
             ツレ  新井麻衣子
             ワキ  館田善博
             間   小笠原 匡
             太鼓 徳田宗久     大鼓 亀井実     小鼓 幸正昭     笛 藤田貴寛
             地謡  駒瀬直也 奥川恒治 中森貫太 佐久間二郎 小島英明 坂真太郎 桑田貴志 河井美紀 



「芭蕉」と「女郎花」。秋の訪れに相応しい曲。芭蕉葉は夏にこそ、その大きな緑の葉が印象的。しかしやがて虫に食べられたりして枯れ始めたり、松の落ち葉にも穴を開けられ朽ちて行く。その移ろいは有情非情の区別なくおなじではないのかと問う。月明かりの明るい一夜、芭蕉の精は女人の姿となり、庵に住まう僧の前に現れる。そして草木をも人間同様に成仏できるという法華経の功徳を讃え、さびさびと序の舞を舞う。やがて風が吹き、庭の草花は散り落ち、破れた芭蕉の葉のみが残っている。なんとも幻想的な曲だ。ワキ僧と間語りは歯切れよく聞きやすかった。しかしシテと地謡は地中から生じている音のよいうで、言葉というより一連の音のうねりのように聞こえ、内容を理解しながら観るというより、ボーっと入り混じった音の世界に浸っているような印象が残った。
「女郎花」は有情の曲。かってあった男女の哀しい出来事を残すかのような二つの塚。そのあたり一面に女郎花が咲きほこっており、その花を旅の僧が手折ろうとし、物語は展開する。ささいな行き違いから入水し、空しくなった女。それを知り、悲しみ、後追い入水した男。.小野頼風。頼風は邪淫の罪で地獄の責めを負っている様を舞い、僧に回向を頼むのだ。ツレの姿・装束が美しかった。