田植えの頃の棚田風景を撮りたくなり、6月6日、大阪・千早赤阪村の「下赤阪の棚田」へ行ってきました。
農林水産省が選定した「日本の棚田百選」の一つです。
下赤阪の棚田。
大阪府内にもまだこんな日本の懐かしい風景が残っています。
もちろん、アクセスはあまり良くありません。かといって、ものすごく辺鄙かというとそうでもなく、一度行ったら案外楽に再訪できるところ。
今回は、近鉄富田林駅から金剛バス(千早線)に乗り、赤阪中学校前で下車。徒歩で向いました。赤阪中学校への急な坂道を上り、グラウンドや校舎の間を通ります。この辺で初めての人は「え、学校の中? 道を間違えたのかな?」と迷うようです。
しかし、間違いではなくて、学校の裏の高台に上がると、棚田を見渡せる絶好の場所になっています。
中学生がみんな「こんにちは」と挨拶してくれるのも、気持ちがいいです。
アジサイも咲き始めていました。
高台は公園になっていて、休憩場所や簡易トイレが設置され、駐車スペースもあります。
車で来る場合は、国道309号線の森屋(交差点) で折れて府道705号線に入り、赤坂中学校への坂道を上り、校舎の間を抜けて高台へ。比較的楽に来られるのではないでしょうか。
アマチュアカメラマンや、外国人観光客の姿もありました。
「赤坂城址」の碑が建っていました。
鎌倉時代から南北朝時代にかけて活躍した楠木正成によって築城された山城の跡で、国の史跡だそうです。
高台の水路を、水が音をたてて流れています。
その水をたどっていくと、田植え時の棚田の一つ一つに水が流れ込んでいくのが分かります。
高台より上に高い山はないように見えるので、どこにこんな豊富な水量の源があるのか、不思議な感じがしました。
おそらく、どこかに金剛山系からの水脈があって、それが昔からこの村の田畑を潤しているのでしょうね。
田植えが済んだばかりの棚田。
余った苗が田の隅にまとめて置かれています。倒れたり、根付かなかった苗が出たときに備えている「余り苗」。俳句では夏の季語。一句詠みたいところ、思い浮かばないので人の句で…
あをあをとして生きてゐる余り苗 岩田由美
幾重にも区切られた棚田。遠くの方の田は谷へ落ち込んでいきます。
長い年月をかけて続けられてきた、農家の人の並々ならぬ苦労を思います。
日没の風景を撮るため、高台の休憩場所でしばらく時間待ちしました。
ここに何回も通っているという、常連のカメラマンの人としばしカメラ談義。
作品のプリントも見せてもらいました。季節ごとのポイントを知り尽くしているだけに、素晴らしい。いやあ、常連さんにはかないません。
さて、夕暮れの午後7時ごろから撮影再開。
薄曇りの一日でしたが、日没後の一瞬だけ、空が赤く染まったのが奇跡のよう。
三脚を立て、ライブビューでマニュアルフォーカス。ミラーアップしてブレを抑え、リモートケーブルでレリーズ。ぎりぎりのシャープネスを狙いました。
勝負は20分間ぐらいしかありません。
このコマはとりあえずその場の雰囲気を。
茜色の空はいいんですが、手前は田植え前だし、図柄的にはダメですよね。
かろうじて救える別カットをコンテストに出すことにしました(未発表が原則なので、ここに掲載できません)。
ライブビューで20分間、夢中になって写しているうちにボディーが熱くなり、周りもすっかり暗くなったので撮影終了です。
ライブビューの発熱が過ぎると、キヤノンのEOSでは警告の温度計アイコンが表示される仕様になっています。
アイコンが出たかどうかは気が付きませんでした。もっともアイコンが出たからと言ってカメラが壊れるわけではなく、静止画像にノイズが出て劣化するだけ。
帰ってからパソコンで見たら、それほど枚数を撮っていませんでした。
棚田は広いのですが、良いポイントはそれほどたくさんはありません。かえって、最初の高台の公園からの遠望が、図柄としては一番よさそうでした。動き回らないで撮ったほうが良かったかもしれません。
ただ、ネットで見ていると、一般には立ち入れないところで、農家の人の許可を得て写せる絶好のポイントがもう一か所あるようです。
稲穂が実る秋には、毎年棚田のライトアップイベントがあります。棚田が、ろうそくの燈で浮かび上がる幻想的な世界。
田植えとはまた違った趣の写真になりそうです。
もう一度訪ねてみましょうか…
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撮影カメラ・レンズ
キヤノンEOS 6D
EF24–105mm F4L IS USM