つれづれ写真ノート

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京の文化財散歩(大覚寺の嵯峨菊)

2015年11月09日 | 旅行

京都の冷泉家公開を見に行ったときの続きです。

 

冷泉家を拝観したあとは、すぐ近くの京都御所(秋の一般公開、10月30日~11月3日)へ行っても良かったのですが、これまで何回も見ているし、地下鉄今出川駅から続く人の波に圧倒され、今回はパス。

地下鉄とJRを乗り継いで、嵯峨野の大覚寺に向かいました。恒例の「嵯峨菊展」(11月1日~30日)が開かれています。

 

JR 嵯峨嵐山駅から大覚寺までは、徒歩約17分。

この距離は微妙ですね~

歩けないこともない、とはいうものの、疲れるのでタクシーを使いました。

 

大覚寺。明智陣屋(正面)へ続く石畳。

 時代劇のロケに良く使われている大覚寺。こんな風景を使ったシーンもあったかも…

 

平安初期、嵯峨天皇の離宮・嵯峨院として建立されたのが大覚寺の前身。お寺になったのは貞観18年(876年)。真言宗大覚寺派の本山です。

明治時代初めごろまで、代々天皇・皇統の人が門跡(住職)を務めた格式高い門跡寺院。いけばな「嵯峨御流(さがごりゅう)」の総司所(家元)としても知られています。

 

さっそく嵯峨菊がお出迎え。

大覚寺ではこの時期、いたるところに嵯峨菊が飾られています。

 

境内の拝観と「嵯峨菊展」へは、式台玄関の横から入るようになっていました。

 

式台玄関(正面、玄関幕があるところ)の前に並ぶ嵯峨菊。

 

たくさんありますね~ 

拝観する前に、ここで花を撮ることにしました。

 

黄色の嵯峨菊「御所の秋」。

 

 
嵯峨菊は、嵯峨天皇の時代に、大沢池の菊ヶ島に自生していた野菊。その後江戸時代にかけて改良、洗練された古典菊です。

江戸菊や肥後菊と並ぶ日本三大名菊の一つとか。

 

花を先端に三輪、中ほどに五輪、下に七輪咲かせるように仕立てるのが王朝風。つまり「七、五、三」。

かぼそい、ほうきや茶筅のような花の姿。人によっては「どこが良いの?」と思うかもしれませんが、ありふれた菊より凛として優雅で、個人的には大好き。大覚寺の「嵯峨菊展」にも12年前に来ています(古い話…)。

 

ここの嵯峨菊は、おもに次の4色の品種でした。

上の写真の「御所の秋」(黄)のほか、「御所の雪」(白)、「御所の綿」(朱)、「御所の春」(ピンク)。

 

「御所の雪」。

 

「御所の綿」。

 

「御所の春」。

 

撮っているうちに、どんよりとしていた曇り空がにわかに晴れてきました。

 

秋空に映える嵯峨菊。

 

撮影後に、キヤノンのRAW現像ソフト「Digital Photo Professional 4」でピクチャースタイルを「風景」にして、青空を強調しています。それにしても、日差しが強くなると、こんなにも写真の色調が変わるんですね~

 

嵯峨御流のいけばなも展示されていました。

 

玄関の横から中に入り、これから建物の拝観です(料金は大人800円・小中高生600円)。

 

大玄関(式台玄関)松の間。

狩野永徳筆の障壁画の前に置かれているのは、ここで院政を行った後宇多法皇使用の御輿。

(説明書きに、「文化財保護の立場から国宝の文化財や重要文化財の仏像、障壁画、装飾画等は収蔵庫に収められております」とあるので、境内の障壁画などには複製が使われている可能性もあります。どれが複製かは確かめませんでしたが、まあ大体、想像はつきます…)

 

宸殿(しんでん)へ向かう途中の中庭。

 

宸殿(しんでん)。

江戸時代、後水尾天皇より下賜された寝殿造りの壮大な建物。

徳川2代将軍秀忠の娘で、同天皇の中宮となった東福門院和子が、女御御殿の宸殿として使用していたものだそうです。

広縁や建物をつなぐ廊下はすべて鴬(うぐいす)張り。

 

宸殿の周りを彩る嵯峨菊。

 

ピンクの嵯峨菊。可憐です。

 

宸殿の前庭で「嵯峨菊展」が開かれていました。

 ← このサムネイルをクリックすると大きな画像になります。

 

4色の嵯峨菊をひとセットにするのが決まりなのか、整然と鉢が並んでいました。

 

 

 

 

 

嵯峨菊を撮るのは一応ここまでにして、あとは順路に従って色々な建物を巡りました。

仏前など一部の場所を除いて、自由に撮影できたのが有難かったですね。

 

まず宸殿の中から。4つの大きな間があります。

 

これは「紅梅の間」(22畳)。見事な襖絵は、狩野山楽の「紅梅図」。

 

 「紅梅図」の部分。

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鶴を描いた「鶴の間」 (12畳)。

 

「牡丹の間」(33畳)。襖絵は狩野山楽の「牡丹図」。これも素晴らしい。

天井の様式からしても格式の高い部屋。

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 「柳松の間」(18畳)。

 

  「柳松の間」の御簾(みす)。

 

寝殿造りの特徴のひとつ、蔀戸(しとみど)。

 

次は正寝殿へ。

 

中庭を隔てた向こうにある正寝殿。こちらは12の部屋を持つ書院造り。

 

回廊を通って行きます。左の方が正寝殿。

縦の柱を雨、直角に折れ曲がっている様子を稲光にたとえ「村雨の廊下」と呼ばれます。床は鴬張り、天井は刀や槍を振り上げられないよう低く造られているとのこと。

 

正寝殿の「竹の間」から、奥の「御冠の間」(上段の間とも)を見渡したところ。「御冠の間」は鎌倉時代、後宇多法皇が院政を執った部屋。

 

手前の「竹の間」を飾る、四季の農作業を描いた襖絵「四季耕作図」(16面)が見もの。複製ですが、それなりにドラマが…

 

狩野山楽が描き、竹の間を飾っていたとされる襖絵で、いつの間にか海外に流出、屏風に仕立てられてアメリカのミネアポリス美術館に所蔵されていました。

これをキヤノンが「綴(つづり)プロジェクト」(文化財の未来継承)のひとつとして取り上げ、ミネアポリス美術館の協力も得て、「四季耕作図」の高精細複製品を制作。2014年に大覚寺へ寄贈。250年ぶりの里帰りということで話題になりました。(キヤノンのニュースリリース参照)

ちなみに、複製にはキヤノンのデジタルカメラ「EOS 5D Mark III 」を使用。多分割撮影したものを1枚の画像に合成、特製の和紙に大判プリンターで印刷したそうです。

大覚寺では、この作業を記録したキヤノンのドキュメンタリー動画も放映していました(キヤノンの動画ページ参照)。

キヤノンのいい宣伝になりますねェ…

 

上の写真から「四季耕作図」をアップにしてみました。これは右側。

 

「四季耕作図」左側。

(光の状態が悪かったので、色の調子がよくありませんがご勘弁を)

 

「竹の間」に掲示されていた読売新聞の紙面。

 

正寝殿「賢人の間」。

 

正寝殿「鷹の間」。

 

正寝殿の東側の廊下からは、腰障子の下にウサギの絵が見えました。

 

元禄時代の渡辺始興筆「野兎の図」。

 

可愛いですね。

 

このあと、霊明殿へ。

廊下の右側に見える霊明殿。

総理大臣を務めた斎藤実が昭和3年(1928年)、東京に建てた日仏寺の本堂を移築したもの。

 

霊明殿から廊下を振り返ると、朱色がまぶしく反射していました。

 

色々な建物が立ち並ぶ境内。中央は法隆寺の夢殿を模した勅封心経殿。

嵯峨天皇ら6天皇の直筆般若心経を収め、60年に一度しか開けられないそうです。

 

右側は、大覚寺の歴史に大きな役割を果たした人々の尊像を安置する御影堂(みえどう)。建物は大正天皇の即位のさい立てられた饗宴殿を移築。

 

勅使門。

 

御霊殿(安井堂)。

京都・東山にあった安井門跡蓮華光院の御影堂を移築した建物で、江戸時代中期の様式。中央には、後水尾天皇の等身大の僧形像が。

 

安井堂天井雲龍図。

内部の装飾が美しいお堂です。

 

格天井(ごうてんじょう)の板に描かれているのは、密教法具や花鳥など。

 

天井のアップ。

一つひとつ見ていくと面白いです。

 

五大堂に来ました。ここが大覚寺の本堂です。

 

五大堂。

不動明王を中心とする五大明王を安置。

 

大沢池に面し、広いぬれ縁(観月台)があります。

 

大沢池の眺望。

 

嵯峨天皇が離宮造営にあたって、唐の洞庭湖を模して造らせた日本最古の人工の林泉。

中秋の名月の夜にはここで「観月の夕べ」が催され、池に張り出した特設舞台(いま小鳥が群れているところ)で満月法会があります。

写真の中央上あたりに月が昇るので、一度撮りたいと思っている場所のひとつ。

 

五大堂のお守り授与所で見かけた嵯峨菊香。

11月限定、1100円。どんな香りがするのでしょうか…

 

                  ◇

 

京の旅の楽しみといえば、食事も大切。

ただ、時間に余裕がなくて、この日は大覚寺門前の「しぐれ茶屋」ですませました。

「しぐれ茶屋」。

 

こういう茶屋で頼むのは大体いつも「にしん蕎麦」。

立ちのぼる湯気に、旅の疲れが癒されます。

 

大覚寺ではこれからの紅葉の時期に、夜間特別拝観「真紅の水鏡」(11月13日~12月6日)という催しもあります。

大沢池にライトアップされた紅葉が映り、写真になりそうですが、

さてどうしましょうか…

 

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撮影カメラ・レンズ

   キヤノン EOS 6D

    EF24-105mm F4L IS USM

   ソニーRX100

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関連記事・サイト

   ・大覚寺ホームページ

   ・『古典菊の魅力 Part 1』(2014年11月10日記事)

   ・『古典菊の魅力 Part 2』(2014年11月12日記事)