猛烈寒波が来襲、とても写真を撮る気分ではないので、日ごろ気になっていたライカについてのあれこれを…
◆液晶モニターがない!
ライカから、写真の原点に回帰するようなカメラが相次いでいます。
一つは液晶モニターを廃した、デジタルレンジファインダーカメラ「ライカM Edition 60」。
発売日が12月20日に決定しました。世界で600台の限定モデルとか。
「ライカM Edition 60」(ライカのホームページより)。
今年、「ライカM レンジファインダーシステム」が誕生60周年を迎えるのを記念したモデル。
ボディーは、プロ仕様の最新モデル「ライカM-P(Typ240) 」(9月13日発売)がベース。前面に赤い“ライカバッジ”がない、控えめな外観。Audiとのコラボレーションによる特別なデザインだそうです。
「ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.」レンズが付いて、価格は税込232万2,000円! (デジカメWatch参照)。
希少な記念モデルとはいえ、高価ですね。
「ライカM Edition 60」の背面(ライカのホームページより)。
背面には液晶モニターがなく、ファインダーのほかにはISO感度設定ダイヤルがあるだけ。撮った画像を見るには、パソコンでRAWファイル(DNG)をRAW現像ソフトで開く必要があります(ソフトはネットからダウンロード)。
普通のデジタルカメラのように、たくさんのボタンやダイヤル類(メニュー、画像再生、画像送り、画像拡大、画像消去、ライブビュー、ファンクションetc. …)を省略。動画も、連写機能もありません。
◆心得のある人なら撮れる…
なぜわざと液晶をなくし、撮った画像をすぐには見られないという制限を設けたのか、デジタル的な要素を極限までそぎ落としたのはなぜなのか、ライカがこういうカメラを出すねらいはどこにあるのでしょう。
ライカのホームページによると、
『カメラに本当に必要な要素だけに絞り込んだ「ライカM Edition 60」は、デジタルカメラでありながら、シャッタースピード、絞り、フォーカシング、ISO感度など、写真撮影に必要な最低限の機能だけに集中することを意図した世界初のデジタルカメラであり、あたかもフィルムカメラのように写真撮影を楽しむことができます。』
と説明されています。
さらに、ライカ側にインタビューしたデジカメWatchの記事が面白いです。
フォトキナ2014の会場で、独ライカカメラAGの社主アンドレアス・カウフマン氏に聞いたもの(以下、デジカメWatchより抜粋)。
『カウフマン氏によると、この液晶モニターをなくすアイデアはおよそ2年前からあったという。カメラの主流がデジタルになってから、ユーザーがカメラに目線を落として操作している時間が長いことに気付き、「いっそ取っ払っては」と考えたのだそうだ。 (中略) 「(ライカM60は)控えめなステータスシンボル。使い方を知っていることを自慢するカメラだ」
同じくお話を伺ったライカカメラAGのアルフレッド・ショプフCEOによると、英語にはChimping(チンピング)という表現があるという。デジタルカメラで撮影しながら、1枚撮ってはモニターで確認し、また撮ってはモニターを確認……というスマートでない様子を指す。
一方ライカM60は、試し撮りを確認する液晶モニターすらないので、撮ったらパソコンに取り込んでみるまでわからない。いわば「アンチ・チンピングカメラだ」と笑う。』
つまり、撮った後いちいち液晶モニターを見るのはスマートでない、という撮影スタイルの問題なんですね。
カメラに心得のある人なら液晶モニターなどなくても使えるはずだ、という考え方。
ましてや、ライカを使おうかという人なら…
ここには、デジタル機能をてんこ盛りして、だれでも簡単にキレイな写真が撮れるようにした現在のカメラに対する、強烈なアンチテーゼが感じられます。
(とはいえ、「ライカM-P(Typ240) 」はデジタル機能てんこ盛りなんですけど… )
この異色のカメラを買ってみようと思うリッチな方のために、ライカのホームページから取扱説明書をダウンロード、テクニカルデータを見てみました。下のように非常にシンプルです。
*シャッター速度は8~1/4000秒、ISO感度は200~6400。
2400万画素の35mmフルサイズセンサーを搭載、明るいレンズ付きのモデルなので、画質自体は素晴らしいに違いありません。
一方、注意しなければならないのは、
・JPEG撮影不可(RAW現像後、JPEGで出力できます)
・ホワイトバランスは自動調整(RAW現像時に調整可能)
・色空間がAdobe RGB (商用印刷などプロ向き。対応していないプリンターで印刷すると非常に地味な色合いになります。普通はsRGB)
という点ですが…
そんなことに関わりなく発売・即完売になってしまうかもしれません。
◆露出計も無くしてしまった!
さらにカメラを使うハードルを上げたのがフイルムカメラ「ライカM-A(Typ127)」(11月29日発売)。
現行のフイルムカメラ「ライカMP」から露出計まで取り払って、電池不要の完全メカニカルカメラにしたもの。
価格は税込58万3,200円(デジカメWatch参照)
「ライカM-A(Typ127)」(ライカのホームページより)
なんでそこまで使いにくくするの? という感じ。
露出計がなくったって、昔はそれで撮ってたでしょう、といわれればそうなのです。でもね~
ライカのホームページから引用すると、
『ライカM-Aは、高精度なメカニズムを備えた純粋な機械式カメラです。無駄を徹底的に省き、撮影に必要な基本的な要素だけを残した設計により、これまでにない新しいクリエイティブな表現が可能です。液晶モニターも露出計もなく、バッテリーさえも必要としませんが、その代わりに高度なメカニズムが凝縮されており、これまでの100年の歴史でライカが培ってきたノウハウの重みを感じることができます。シャッタースピードと絞り値はカメラ本体とレンズで直接設定できるため、被写体だけに集中できます。心地よいシャッター音も、高精度なカメラづくりの技術の高さを裏付けています。』
なるほど…
確かにシンプルで、ボディーの厚みがデジタルのライカMより薄いのは良いです。
ライカMシステムと同じ60周年を迎えたコダックのモノクロフイルム「トライ-X 400」が付属します。ライカM-Aとの相性も抜群だとのこと。
昔の写真雑誌が「トライ X」のオンパレードだった頃を知る、我々世代のノスタルジーに訴えかける作戦かな~
◆ハードルを下げるイベントも
カメラの原点に帰る一方、ライカは親しみを持ってもらえるような顧客サービスにも力を入れています。
「ライカM (Typ240) 」で実際に撮影体験できる、ライカMテストドライブプログラム「YOU AND LEICA M」が全国各地のライカストアなどで開催中(2014年8月1日~2015年3月31日)。
このイベントでデータ持ち帰りができるかどうか分かりませんが、新しくできたライカ京都店の「ライカ ミニセミナー」(12月20日、21日)では、持参のSDカードを使って試写できるようです。
買えるかどうかは別にして、ぶらっと訪ねてみるのも面白いかもしれません。
「ライカM (Typ240) 」(ライカ大丸心斎橋店で)。
日本製のデジタルカメラがあふれる今も、「いつかはライカ」?
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