Less Invasive Quick Openstenting(LIQS)手術は、遠位弓部大動脈瘤に対して、低体温循環停止下に大動脈弓部を切開してオープンステントを挿入し、近位側の人工血管部分を大動脈内側に縫着して瘤を閉鎖する術式である。これにより、オープンステント部分より近位側を弓部置換する必要がなく、低侵襲・短時間に手術可能となる。しかしこの術式の実施施設は少なく、弓部大動脈置換が実施されているのが一般的である。
LIQSが行なわれない理由として、
①循環停止中の脳血流遮断時間が長くなった場合の脳ダメージのリスク
②視野不良な大動脈内部での人工血管縫着の手技、人工血管を縫着する縫合糸の針穴からの出血リスク
③ブラインド操作での食道や期間の損傷
④エア抜きが不十分になるリスク
⑤先進的なTEVARを実施している施設では、弓部のTEVAR対象となっている
等が考えられます。
安全性の高い応用手技としては、
①左鎖骨下動脈を閉鎖し、上行大動脈に吻合した人工血管で左腋窩動脈に再建することで、より近位側にオープンステントを挿入できます
②大動脈切開を長軸方向へ延長することで大動脈内部の充分な観察をしながらの手技が可能となります。
③弓部分枝の選択的脳灌流を併用することで手技に時間的余裕が出来ます。
④左腋窩動脈へ血行再建する人工血管からエア抜きができます。
より低侵襲な方法として、胸骨部分切開アプローチでも上記の応用により、安全、確実なLIQSが可能となり、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では積極的にこの術式を採用しています。