河野製作所が販売しているニットパッチは、PTFEの繊維をニット状に編み込んだシート状の製品です。従来のePTFEに比べて通気性が少ない分、針孔などの出血が実際の手術に比べて少なくなっています。また大動脈の断端形成に使用するPTFEフェルトは不織布の構造で、こちらも通気性が良好な分、針孔出血が多いのですが、このニットパッチを使用すると針孔出血がほとんどなく術中の止血操作が非常に楽になります。
横須賀市立うわまち病院でもニットパッチを多くの症例に使わせてもらいました。急性大動脈解離における内外二重のニットパッチによる断端形成、胸部大動脈瘤に対する上行大動脈置換術の人工血管縫合部のNative血管側の補強、小開胸アプローチでの大動脈弁置換術(MICS-AVR)において大動脈壁が薄く脆弱な症例の大動脈縫合部の補強、左室形成術における左室縫合部の補強、大動脈弁狭窄症に対するApico-Aortic Conduit手術における心尖部導管縫着のためのプレジェットとして使用、左室壁肥厚・拡張障害による低心拍出症候群に対するApical Myectomyにおける左室切開部縫合閉鎖の補強、心房縫縮術における右房閉鎖時の補強などに使用しました。ほかに今後の可能性として、大動脈弁狭窄症の狭小弁輪症例に対する弁輪拡大に使用するパッチとしても有用ではないかと思われます。
新しい素材として今後期待できる商品ですが、その使用経験について、今回の浜松での心臓血管外科学会でランチョンセミナーの講演を依頼されております。