Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

血液は流れていないと

2006-07-02 | 医療・病気・いのち
 人は60兆個の細胞から構成されていると言われます。心臓というポンプで送り出される血液は、その多くの細胞のすべてに栄養と酸素を送り届けるとともに、老廃物を取り払います。

 血管が狭くなったり、血のかたまりが血管の中に出来たりすると、この血液の流れが悪くなったり、途絶えてしまったりします。そして、そこから先の臓器には十分な酸素などが供給されなくなり障害が起きます。

 心臓へ行く血管が問題であれば、狭心症や心筋梗塞となり、脳へ行く血管に問題が起これば一過性脳虚血発作や脳梗塞が起きます。

 大腸へ行く血液の流れが障害されれば、虚血性大腸炎を起こします。突然の腹痛とともに下痢や下血が症状としては起こりやすいことです。半数以上の方は、一時的な症状のみで、合併症無く治癒しますが、急性期を過ぎた後に腸管が狭くなってしまい手術が必要となる場合もあります。最も重症なのは、腸管が壊死してしまう場合です。緊急手術で腸を切除する必要があります。壊死した上に破れてしまうと、重症腹膜炎となり、敗血症からショック、他臓器不全となり、死に至ることもあります。

 元内閣総理大臣の橋元龍太郎さんが亡くなられたとの新聞報道を見ました。原因はこの虚血性大腸炎とされていましたが、事実ならば急速に重症化してしまうタイプのものだったのでしょう。テレビでもよく紫煙をくゆらせる姿を見せていた方ですから、もともと血管も傷んでいたのかもしれませんね。

 ご冥福をお祈り致します。

メメント・モリ

2006-07-02 | 医療・病気・いのち
 様々な分野で、日々技術は進歩していく。医療の分野でも、またそれを取り巻く領域でも技術革新は著しい。

 現代日本人の多くは、神や仏、人智を超えた力なるものに代わり科学技術に対する信仰が強くなり、自然とはコントロールできるものと考えている節がある。医療分野でも同様で、人という宇宙(自然)におきる異常(病気)は、技術で何とかできるというふうになんとなく信じているようである。

 その究極は、人体を機械とみるものである。

 未熟児に様々な管をつけてこの世につなぎとめ、悪くなった血管を人工物で置き換え、手術で体を修繕し、はては悪くなった臓器を他人のものと置き換える。これらは偉大なる進歩だが、確かに人体を機械と考えさせるには十分な事実だろう。

 でも当たり前のことながら、人は生命体だ。生あるということは、必ず死を内包している。医療技術でなんともならないことは、漠然と思っている以上にたくさんあり、何とかできることのほうがはるかに少ないのである。

 現代のように死が身の回りから遠避けられた時にこそ、死を想う(メメント・モリ)必要があるだろうし、その教育が必要だと考える。