時間の伸び縮み

だんだん日が長くなってきました
朝目覚めると
カーテンの外は明るくなっています
起きたときに暗いのに比べ
やはりさわやかな感じがします

江戸時代には
日の出から日の入りまでの時間を
６つに分けていたとので
夏と冬とでは一刻の長さが違っていたとのこと

今なら１時間が７０分になったり５０分の長さになったりすることになる
なんといい加減なと一瞬思うけど
これが人間にとって良い加減なのだろうなと思う

欧米の夏時間などの比ではない
自然に寄り添った生き方を　時間の使い方を
われわれの先人は送っていたのでしょうね

治療の選択

悪性リンパ腫や白血病などの中には
化学療法で完治するものもある
しかし　消化管の癌は
化学療法ではまず完治しない

ここ６～７年くらいで
胃癌に対する化学療法は
効き味が良いものが出てきたお陰で
以前なら数ヶ月で亡くなっていたであろう状態でも
１年２年とながらえることも珍しく無くなってきた
平均すればこれまでよりは
この世にお別れする時間がもてるようになってきた

今年中には
また新薬が日本でも認可される予定だ
当然高価な薬となる
これまでの臨床データを見てみると
予後が４ヶ月程度延長されるらしい
ただし当然効く人もいれば全く効かない人もいる
効いた人も最終的にはまず完治までは到らない

認可後にこの薬を使用するか否か
数ヶ月予後を改善する可能性があるとされる薬を
意義あるものと考えるか否か
それは患者自身の考え方　人生観の問題となる

それにしても
医療がお金のかかるものになってきた
世の中の人は
医療費が高いというと医者が悪いように思うようだが
今の医療費のかなりの部分は
製薬会社　診断器機の会社　検査会社　手術器械会社などに吸い取られ
病院にそれほど残るわけではない
だから病院が生き残るためには
働く人に無理がかかる
命を守る立場の人間が疲労困憊していたのでは
よい医療なんて提供できないだろうに

明日をも知れぬ

４月となり新任職員が多数やってきた
卒業したての新人看護師も外科病棟にやってきた
ふと気がつくと
まだまだ新人と思っていた看護師が４年目を迎える
実に年月の流れが速い
音もなく通り過ぎ
汲みとどめようと思っても指の間をすり抜ける

明日をも知れぬ
という言い回しは
病が重く危篤ともいえる状態の時に使われることが多いが
当然われわれすべて
明日をも知れぬわけである

それでも
今を　今日を　精一杯生きて
明日へ希望をつなげたい

うたかた

連綿と続く命の連鎖
永遠といえるその持続の中で
何かの機を得て生を受けた私たち

その生の無常を
流れに浮かぶうたかたに見た古人

しかし
自分が息途絶えれば
自分を取り巻くすべてのもの
　人間　社会　自然　世界　宇宙
もすべてともに
自分にとっては滅び去ることを考えれば

自身の生は
そのうたかたよりも
儚いものと思えてくる

急変

土砂崩れや雪崩れなどは突然起こる
起こるのは突然であるが
その素地は着実に作り上げられてきていたはずである
起こりうる状況になっていることは
周りからはなかなかわかりにくいが
確実にその瞬間に近づいていたのだろう

末期の癌という状態になると
常に　急変　ということを考えておく必要がある
一般の方にはなかなかイメージがつかみにくいかもしれないけれど
「昨日まで普通に話をしていたのに・・・」
ということが起こりうるのである

突然出血をしたり
呼吸が止まったり
血圧が下がったり
と雪崩を打つがごとく
生から死へと崩落していくのである

医師から急変の可能性あり
といわれたら
それはかなり重く受け止める必要がある
目の前で急に意識がなくなっていくということもありうるのである

芽吹き

芽吹き
短期間のうちに
立ち枯れの様に見えていた木々の枝から
緑が吹き出してきた

春の息吹
という言葉通り
まさに春の息使いを感じる

研修医という
若き情熱が
今年もやってきた

さあやるぞ
という意気込みを
つみ取ってしまうような
医療情勢だが

芽生えたばかりの
医師の若葉を
元気に育てたい

エリート

人が９０歳ともなれば
その人は肉体的にエリートである
その肉体とともにある精神も鍛えられているかもしれない

９０歳の方が紹介されてきた
基本的には手術が必要な疾患だが
その体力があるかどうかが気に掛かる

ところが
血液検査
心電図検査
呼吸機能検査
心エコー検査
などなど　すべての検査をクリア
その上歯もほとんどすべて自分の歯

脱帽するのみである

手術を受けるか否か
その明晰な頭で出すご自身の結論に
従おう
家族の意見ではなく

有限であるという かなしみ

若人を送る言葉として
無限の可能性
を持ち出す人を時々見かける
夢を持ち
　やる気を出し
　　向上心を持ってもらおうとの
気持ちから言うのであろう

それはそれで良いと思うが
有限なる生しか持ち合わせぬ人間に
無限なる可能性があるとは思われず
単にどのような可能性があるかわからない
ということを言っているに過ぎないのだと思われる

あまりに夢に振り回されるより
有限であることのやるせなさ　無力さに思いを馳せ
悲しみを胸に抱くことにより
やさしい眼差しを周りに向けることができるという面を
しっかり認識することの方が
今の生をより意義あるものとすると思う