ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『dele/ディーリー』最終回

2018-09-24 12:00:13 | 探偵・青春・アクションドラマ





 
ブログで昭和ドラマを語りつつ、合間に『dele』みたいな最新の番組を観ると、TVドラマの(見せ方の)進化をヒシヒシと感じさせられます。

映像がスタイリッシュで、話の展開がスムーズで、俳優の演技がリアルで、総じてクオリティーが高い。

全ての番組がそうとは決して言えないし、同じ金城一紀さんが手掛けられた作品でも(綾瀬はるか主演『奥さまは取扱い注意』みたいに)うまく行かない時もあるけど、とにかく「見せ方」に関しては行き着く所まで行っちゃった位に進歩してると思います。

例えば昨年の『CRISIS/公安機動捜査隊特捜班』はアクション系刑事ドラマの究極形だと感じたし、この『dele』は『傷だらけの天使』に代表されるコンビ物探偵ドラマの究極形。最終回ではさらに『ザ・ハングマン』の究極形まで見せてくれましたw

『ザ・ハングマン』はシリーズが進むにつれ、荒唐無稽な悪者の「吊し上げ」をギャグにして誤魔化すようになっちゃったけど、この『dele』最終回は徹頭徹尾シリアスに描き切り、失笑を買うこと無くちゃんと我々にカタルシスを与えてくれました。見せ方の進歩があればこその偉業です。

必要以上に視聴者やスポンサーからのクレームを恐れ、女性視聴者に媚びてばかりいる昨今のテレビ番組を、私はふだんボロカスに言ってますし、頭から「今のテレビ番組は下らない」と決めつけてる同世代の人も多いけど、この『dele』最終回みたいな話をシリアスに見せ切ってしまえる手腕、そのクオリティーの高さだけは素直に「素晴らしい」と認めるべきだとも思ってます。

もちろん、好き嫌いがあるのは仕方がない。私とて、どんなにアラが見えようとも(だからこそ)昭和ドラマが大好きって気持ちに変わりはありません。CGがどれだけ進化しようと、特撮ヒーロー物は手作りの温かみを感じる昭和作品の方を断然支持します。

でも、それはそれとして、『CRISIS』や『dele』の凄さをスルーしちゃうのは勿体ないと思います。少なくとも公の場で作品の良し悪しを語るなら、ちゃんと見なくちゃいけません。

図らずも最近ブログをリニューアルすることになり、その作業に時間を取られて全話は観られなかったし、同時期に『透明なゆりかご』という異常にハイクオリティーな作品が存在した為、この『dele』を強く推す機会を逸してしまったけど、現在ならばネット配信なりレンタルなりで観る方法はいくらでもありますので、今更ながら未見の方には是非オススメしておきます。

チャレンジ精神、パイオニア精神に溢れた昭和ドラマはサイコーだけど、窮屈な環境の下で何とか知恵を絞って面白いものを生み出す、現在の(一部の、だけど)ドラマ制作者たちも大いに私はリスペクトします。
 
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『俺たちの勲章』最終回

2018-09-24 00:00:32 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第19話『わかれ』(終)

(1975.9.24.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=降旗康男)

麻薬密売の罪で服役していた男=竹中(樋浦 勉)が脱獄します。すぐさま犯罪仲間の情婦(吉行和子)から拳銃を調達した竹中の目的は、かつての恋人=千恵(片桐夕子)に復讐すること。

かつて喫茶店に勤めてた千恵は、常連客の五十嵐(中村雅俊)と親しくなり、彼を刑事とは知らず恋に落ちた。五十嵐も千恵に本気で惚れてたんだけど、上司の野上係長(北村和夫)は、千恵から竹中に関する情報が何か得られると踏んで、刑事の身分を隠して千恵と交際するよう五十嵐に命じた。

そして五十嵐と一緒になりたかった千恵は、竹中と手を切る為に彼を警察に売ったのでした。ところが竹中が逮捕されて初めて、彼女は五十嵐が刑事であることを知ってしまう。自分が捜査の為に利用されたと悟り、五十嵐の前から姿を消した千恵は、それから転落の一途。現在は売春バーのホステスとして働いてるのでした。

五十嵐は複雑な思いを抱えながら、中野(松田優作)と二人で千恵をガードするんだけど、当然ながら千恵は協力を拒み、そのせいで竹中にあっさり射殺されてしまう。

自暴自棄になって荒れる五十嵐に、中野は「あの女は竹中に撃たれたかったんだ。お前には関係ないんだよ、ああ?」と言って不器用に励まします。

「お前よう、デカだろうが? ああ? 女撃たれて悔しかったらよう、なんで竹中捕まえようと思わないんだよお前! おお?」

中野のゲキによって何とか発奮する五十嵐ですが、上司の野上係長や山下刑事(早川 保)は追い討ちをかけるように汚い策を講じます。マスコミには千恵がまだ生きていると発表し、竹中を病院に誘きだそうと言うのです。

これは残酷大将=鎌田敏夫さん(脚本)の得意技で、元恋人に対する犯人の「想い」につけこみ、死人を利用して罠にかけるという、まさに残酷大将の名に恥じぬ鬼畜っぷり。『太陽にほえろ!』でも同じ手を使ってました。

で、狙い通りに竹中は病院に現れるんだけど、五十嵐が飛び出して「千恵さんは死んだ! これは罠だよ、逃げろ!」なんて叫んじゃう。それで逃走した竹中が、追って来る中野たちに向けて拳銃を乱射し、あろうことか通りすがりの市民に弾丸が当たってしまう! なんたる不運! なんたる残酷大将!

竹中に手を貸してた例の情婦から、彼の隠れ場所を容赦ない暴力で吐かせた中野は、放心状態の五十嵐を無理やり引っ張って現場に向かい、二人して満身創痍になりながらも遂に逮捕するのでした。

不幸中の幸いで、流れ弾を食らった通行人は軽傷で済んだものの、中野には山奥の警察署への異動、すなわち左遷の辞令が下されます。

そして五十嵐は、辞表を出しました。刑事という仕事を続けて行くには、彼はあまりに優し過ぎたのかも知れません。

中野は恋人(鹿間マリ)との待ち合わせ場所に現れず、五十嵐も自分に想いを寄せてくれた事務員の雪子(坂口良子)に別れを告げ、ホームタウンの横浜を去って行くのでした。

いつも通りにフワ~っと事件を解決してフワ~っと終わった続編『誇りの報酬』('85~'86)とは対照的に、実にハッキリとしたケジメが描かれた『俺たちの勲章』の最終回。'60~'70年代のドラマやアニメは、こうした「挫折の美学」で幕を閉じるのが定番でした。刑事物ならやっぱり転勤、退職、殉職の三択ですよね。

『誇りの報酬』は『俺たちの勲章』の10年後をイメージして企画されたらしいけど、こんな辞め方をした五十嵐がまた刑事に戻るとは到底思えません。優作さんにオファーを断られた時点で「別物」と割りきったんでしょうけど、もし優作さんが引き受けてたら『誇りの報酬』は一体どんなドラマになっていたのか?

まぁ'80年代だし、あの『探偵物語』を経た後だからノリはやっぱり軽いものになったかも知れないけど、最終回だけはシリアスに、中野が殉職するようなケジメが描かれたかも知れません。そうなると後番組『あぶない刑事』ももうちょいシリアスにならざるを得ず、刑事ドラマの歴史は少し違った流れになってたかも?

「if」の話ばかりしても意味ないんだけど、もし優作さんが『誇りの報酬』に出ておられたら、少なくともあんなにフワ~っとしたドラマにはならなかったような気がします。あのフワ~っとした感じって、明らかに雅俊さんの醸し出す空気なんですよね。

で、この『俺たちの勲章』の暗くてシャープな感じは、優作さんの空気。時代背景の違いはもちろん大きいけど、『~勲章』は優作さん、『~報酬』は雅俊さんのカラーに合わせて創られたことが、この2作のテイストを違ったものにした大きな理由の1つ、なのかも知れません。

それにしてもこの最終回、女優陣がやたら豪華です。ゲストは前述の吉行和子さん、片桐夕子さんに加えて『ウルトラマン』のフジ・アキコ隊員こと桜井浩子さん。そしてレギュラーの坂口良子さん、鹿間マリさん、結城美栄子さん。

『俺たちの勲章』はやたら女性の不幸を描きたがるドラマ(たぶん残酷大将の趣味)で、それだけに女優さんのキャスティングにも力が入ってました。

第14話にゲスト出演された五十嵐淳子さんを、優作さんと雅俊さんが奪い合ったっていうのもファンの間じゃ有名な話です。(結果はご存知の通り雅俊さんの勝利で、以降、優作さんとの共演はありませんw)

セクシーショットはメインゲストの片桐夕子さん、当時23歳。日活ロマンポルノから一般作に進出し、成功された女優さんの先駆者で、数多くの作品に出演されてますが、現代劇の連ドラはこの『俺たちの勲章』が処女作だったみたいです。

刑事物へのゲスト出演は他に『はぐれ刑事』『大都会PART II』『大追跡』『大空港』『熱中時代 刑事編』『警視庁殺人課』『特捜最前線』『刑事物語'85』など枚挙に暇なしですが、中でも『太陽にほえろ!』は通算5回の最多出演となりました。

美人なのか不美人なのか、セクシーなのかそうでないのか、見る人によって評価が岐れるかと思いますが、画面で見るよりも実際にお会いした方がずっと色っぽい女性なんじゃないかと、私は勝手に想像してます。
 
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『俺たちの勲章』#07

2018-09-23 12:00:29 | 刑事ドラマ'70年代






 
☆第7話『陽のあたる家』

(1975.5.21.OA/脚本=桃井 章/監督=山本迪夫)

横浜・相模警察本部捜査一係の若手コンビ=中野(松田優作)&五十嵐(中村雅俊)は、スリの常習犯=順子(浅茅陽子)をマークします。

犯行を未然に食い止めたい人情派の五十嵐と、現行犯で捕まえて懲らしめるべきと考えるシビアな中野は対立しますが、まだ若い順子に犯罪から足を洗わせたい気持ちは二人とも同じ。

順子は線路沿いのボロアパート住まいで、坂の上にある陽当たり良好なマンションを1日でも早く購入したくて、何とか手っ取り早く金を稼ごうとしてる。

確かにボロアパートの騒音は酷く、早く引っ越したい順子の気持ちは理解しつつも、犯罪で得た金でマンションに住んで、果たして幸せになれるのか?と、五十嵐は彼女に説きます。

「うるさいわね、アンタなんかに何が解るのよ! 毎日毎日5分おきにガタガタ揺れる家に住んだ事ある!?」

実は順子にはトラウマがあるのでした。母子家庭で、自分を育てる為に必死で働いた母親が、過労による病をこじらせて死んじゃった。

「母さんが死ぬ時、私になんて言ったか分かる? 分かんないでしょ? ……私にも分かんない」

アパートで息を引き取る際、そばにいた順子に何か伝えようとした母親の、最期の言葉が電車の騒音でかき消されてしまったのです。

「なんて言ったんだろうな、母さん……一生懸命喋ってたのに……。私だって、結婚して子供産むかも知れないでしょ? 私が死ぬとき、その子に何か言ってやりたいもんね」

昭和50年、バブル景気もまだ遠い時代だからこそ成立した話で、現在だとシリアスには受け取れないかも知れません。

坂の上にある高級マンションを、ボロアパートから眩しそうに見上げる順子の姿には、映画『天国と地獄』の誘拐犯と重なるものがあります。

そしていよいよ、順子は無謀な賭けに出ます。電車でスッた財布の中に麻薬を見つけて、彼女はその持ち主に1千万円、すなわちマンションの購入費用と麻薬との交換を持ち掛けるのでした。

当然ながら麻薬の持ち主はヤバい連中=暴力団と繋がっており、順子はあえなく刺されてしまう。

大量の血を流しながら順子が向かった先は、病院ではなく坂の上のマンション。五十嵐が駆けつけた時にはもう、彼女はエレベーターの入口で倒れたまま、息絶えていたのでした。

このシーンは後に、本作と同じ岡田晋吉プロデューサーによる刑事ドラマ『太陽にほえろ!』の第658話=ラガー(渡辺 徹)殉職編で再現されてます。監督も同じ山本迪夫さんでした。

エレベーターのドアが自動で開閉を繰り返し、その度に遺体が挟まれるというもの哀しい描写が、太り過ぎた渡辺徹さんの場合「まるでボンレスハムの精製工場みたい」と笑いのネタにされちゃったというw、これまたもの哀しい後日談があったりします。

ラガー刑事も最期に自分の一番居心地の良い場所=七曲署へ帰ろうとしてたワケで、最期に陽のあたるマンションへ向かった本作の順子と、山本監督はイメージを重ねられたんだろうと思います。(が、演者の体型までは計算されてなかったw)

本作はとても『俺たちの勲章』らしい、いかにもメインライターの残酷大将=鎌田敏夫さんが書きそうな切ないストーリーだけど、この回の脚本家は桃井章さん。女優=桃井かおりさんのお兄さんであり『太陽にほえろ!』でも数多くの作品を手掛けてらっしゃいます。

第1話における中野と五十嵐の対立(犯罪を未然に防ぐべきか、現行犯逮捕して懲らしめるべきか)が再現され、惚れっぽい五十嵐が例によって女性ゲストと心を通わせ、中野が暴力団相手に大暴れするハードアクション(格闘&銃撃戦)の見せ場もあって、『俺たちの勲章』の魅力がフルコースで味わえる名エピソードでした。

そして順子役の浅茅陽子さんは、当時23歳。まだキャリアは浅く、NHKの朝ドラ『雲のじゅうたん』のヒロインに抜擢される前年のゲスト出演でした。

暗い生い立ちを背負った役柄ですが、天真爛漫な浅茅さんの演技によって辛気臭さが払拭され、爽やかな後味さえ残る作品になりました。

同年に平 幹二朗&沖 雅也の『はぐれ刑事』にもゲスト出演されてますが、朝ドラ主演以降はホームドラマや時代劇、2時間サスペンスへの登板が多く、刑事ドラマのゲスト出演は'85年の『特捜最前線』ぐらいしか見当たりません。

我々世代には「エバラ焼肉のたれ」のCMが何より印象深く、映画『エバラ家の人々』(ドック=神田正輝さんと夫婦役)まで製作・公開されたにも関わらず、トーク番組でうっかりベジタリアンであることを公表しw、CMを降ろされちゃったエピソードも忘れ難い女優さんです。
 
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『俺たちの勲章』#02

2018-09-23 00:00:28 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第2話『狙撃者を追え!』

(1975.4.9.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=澤田幸弘)

中野(松田優作)と五十嵐(中村雅俊)が喫茶店の窓際で張り込みをしていたら、外を歩いてた若いOLがいきなり窓ガラスにへばりついて来るという、衝撃的なファーストシーン。

OLは遠方のビル屋上からライフル銃で狙撃されたのでした。他の通行人たちも次々に撃たれ、中野は五十嵐に救急車を呼びに行かせ、単独で狙撃者を追う。

で、その途中で狙撃者とは別の共犯者である黒人(ウィリー・ドーシー)に襲われ、フルボッコにされて気を失っちゃう。

ジーパン刑事役で「無敵」のイメージが定着してた優作さんが、ほとんど反撃も出来ないままノックアウトされちゃうこの場面がまた衝撃的で、屈指の名シーンとなって後に『太陽にほえろ!PART2』でリメイクされる事になります。(ウィリー・ドーシーがジーパン二世ことブルース刑事=又野誠治を襲撃。ただしブルースの場合は股間蹴りで逆転勝ち)

かつて無い屈辱を味わった中野は、リベンジを果たすべく単独で黒人を探すんだけど、彼も主犯の狙撃者に射殺されちゃう。

この狙撃者を演じたのが、まだ髪の毛フサフサだった頃の石橋蓮司さん。アメリカでベトナム帰還兵を相手に男娼をやってたという壮絶な設定で、戦場でベトコンを殺す感覚で無差別殺人をしてるガイキチ野郎。

一方、五十嵐は殺された黒人とかつて交際してた人妻(篠ひろ子)に協力してもらって蓮司を探すんだけど、そのせいで彼女は家庭での居場所を失った上、蓮司に射殺されちゃう。

中野はリベンジの相手を奪われた怒り、五十嵐は自分のせいで罪なき市民を死なせてしまった怒りを胸に、死を覚悟してガイキチ蓮司との対決に臨みます。

かくも非情かつ不条理な犯人像と、ハードな展開、そして切ない結末が『俺たちの勲章』の特色で、メインライター=鎌田敏夫さんの意向がかなり反映されてるように思います。

なので本作に登場するゲスト女優さんは、目の前で恋人や夫を殺されたり、恵まれない境遇から犯罪に走った挙げ句に殺されたり、今回みたいにせっかく掴んだ幸せを壊された上に殺されたりと、皆さん不幸のズンドコを味わって死ぬ運命にあります。

篠ひろ子さん(当時のクレジットは篠ヒロコ)は、そういった薄幸な役を演じる事が多かった印象があります。ルックスは南野陽子さんにちょっと似てるけど、影があるんですよね。

『大都会/闘いの日々』や『ゆうひが丘の総理大臣』でのレギュラー出演が私的には印象深いけど、幅広くご活躍されてました。

最初は歌手としてデビューされ、TBSドラマ『時間ですよ』へのレギュラー出演で女優としてブレイク、作家の伊集院静さんと結婚され、現在は休業されてるみたいです。

なお『俺たちの勲章』には、主役コンビが在籍する横浜・相模警察本部刑事課の事務員=雪子役で坂口良子、定食屋「あすか」の女将=香子役で結城見栄子、中野刑事とデートする謎の美女役で鹿間マリ、といった女優さん達がレギュラー出演されてます。

セクシーショットは坂口良子さん、出演当時19歳。女優デビュー作は吉沢京子&沖雅也 主演の連ドラ『サボテンとマシュマロ』('71) で、翌年の『アイちゃんが行く!』で初主演。

さらに『太陽にほえろ!』のゲスト出演や『新・サインはV』主演、『前略おふくろ様』『池中玄太80キロ』等のレギュラー出演で人気女優の地位を確立。

『新幹線公安官』や『兄弟刑事』『87分署シリーズ・裸の街』『私鉄沿線97分署』等のレギュラー出演で、刑事ドラマファンにもお馴染みの女優さんでしたが、残念ながら2013年に亡くなられました。合掌。
 
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『俺たちの勲章』と44マグナム

2018-09-22 12:00:03 | 刑事ドラマ HISTORY









 
44マグナム(あるいはマグナム44)っていうのは、44口径用のマグナム弾を使う拳銃を指す通称みたいなもので、クリント・イーストウッド御大の出世作『ダーティハリー』で主人公が使ったS&W・M29が一番有名なんだけど、他にも44マグナム弾を撃てる拳銃は存在します。

だけど「こいつは世界一強力な拳銃で、撃てばお前の頭なんか跡形なく吹っ飛ぶぜ」なんて言うハリー刑事の脅し文句がインパクト絶大で、44マグナムと言えばM29、ってなイメージが世間に定着しましたね。

『太陽にほえろ!』でもスコッチ刑事(沖 雅也)が初登場してしばらく経った頃にM29を使った殺人事件が発生し、射撃訓練場でボン(宮内 淳)が試し撃ちをしてみたら、強烈な反動で撃った本人が数メートル吹っ飛んじゃったというw、いくら何でもそこまでって思うような描写がありました。(第234話『おさな子』)

だけど、撃てば人間の頭が粉々に吹っ飛んじゃう位の威力があるのは事実で、本来は熊狩りなんかに使用する目的で開発された武器であり、刑事が護身用に持ち歩くなんて、かなり荒唐無稽な設定なんですよね。

マカロニ・ウェスタンでスターになったイーストウッド御大だからこそ、そういう現実離れしたキャラクターでも何となく許容されたのかも知れません。

あと、御大は2メートル近い長身ゆえ、それ位デカい拳銃でないと絵にならない、みたいな事情もあったのかも知れません。ともかく、映画が世界的に大ヒットしたお陰で、M29=44マグナムも当時、たぶん世界一有名な拳銃になった次第です。

そして日本でもモデルガンが発売され、バカみたいに売れちゃうブームが巻き起こりました。当然、私も44マグナムのモデルガンは持ってます。自分で買ったのは大人になってからだけど、初めて手にしたのは中学時代、クラスメートから譲り受けた国際産業(現コクサイ)の金属製モデル(4インチ)でした。

私が44マグナムに憧れたのは、ダーティハリーよりも『俺たちの勲章』で中野刑事(松田優作)が使ってたから。日本で一番44マグナムが似合うのは、やっぱこの人でしょう。

優作さんが使ってたのは、M29の6インチでした。人気銃だけあって、モデルガンは老舗のMGCやCMC、コクサイなど各メーカーが競作してましたから、『俺たちの勲章』で使われたのがどのメーカーの物なのか、中途半端なガンマニアである私には判別出来ません。(画像のカタログ写真はMGC製品)

モデルガンを提供するメーカーは様々ながら、とにかく44マグナムを主人公に持たせた刑事ドラマは当時、やたら多かったです。それだけ、荒唐無稽なアクション物が沢山創られてたワケですねw

私が憶えてるだけでも『華麗なる刑事』の草刈正雄、『大都会 PART III』『西部警察』の寺尾聰、『警視庁殺人課』の菅原文太、『爆走!ドーベルマン刑事』の黒沢年男、そして『太陽にほえろ!』のスコッチ(後期のみ)、ボギー(世良公則)、ブルース(又野誠治)、さらに『もっとあぶない刑事』の仲村トオルetcと、カスタム系を除いても枚挙に暇ありません。

この内、寺尾さんと沖さん、又野さんがモデルガンじゃ一番長い8・3/8インチ、世良さんと仲村さんが4インチで、他の皆さんは6インチ(あるいは6.5インチ)を使っておられたと記憶します。細かい事だけど、銃身の長さで印象がかなり違うんですよね。

’70~’80年代の刑事ドラマでは44マグナムを所持する刑事さんが、かくも沢山おられたワケですが、非常に大雑把ではあるんだけど、それらを2つのグループに分ける事が出来ます。

1つは44マグナムを「人の頭を吹っ飛ばす威力を持った」極めて危険な武器と認識してる刑事さんのグループと、もう1つは何も考えず、片手で気軽にバンバン撃ちまくる刑事さんのグループですw

後者の代表格は、間違いなく『西部警察』の寺尾聰さんでしょうw もはや『西部』の世界では44マグナムであろうがショットガンであろうが関係無しですからね。その銃を使う理由はただ1つ、とにかくカッコイイからw

他の番組でも、大方は普通の銃と変わんない扱い方をしてたように思います。その辺のリアリティを気にするなら、刑事がこんな銃を持ってること自体が有り得ないだろ?って事なんでしょうね。

だけど、そんな中でも優作さんと草刈さんは、44マグナムをちゃんと44マグナムらしく扱ってるように見えました。さすがは当時最大のライバルどうしで、こだわり所がよく似てるからこそ、お互い意識せずにいられなかったのかも知れません。

ちなみに『俺たちの勲章』で優作さんとコンビを組んだ中村雅俊さんの使用拳銃は、45口径のオートマチック=コルト・ガバメント。電気発火式なんでブローバックはしませんでした。

後に世良さんや舘ひろしさんが使うようになって、ガバメントもヒーローの拳銃として見られるようになるんだけど、'70年代は悪役が使う銃ってイメージが強かった気がします。少なくとも私の中じゃそうだったんで、主役の刑事が使うのには違和感がありました。

それはともかく、基本的に『俺たちの勲章』は青春ドラマなんで、マグナムやガバメントというイカツい銃を使ってるからって、派手な活劇アクションを期待すると肩すかしを食らう事になります。

そんな中でもガンアクションが印象に残ったエピソードをいくつか挙げますと、まずは第1話の『射殺』。

遠距離からライフルで狙って来る敵を前にして、中野刑事(優作さん)が五十嵐刑事(雅俊さん)をオトリ役として走らせ、援護するのかと思いきや煙草を一服し始めるというw、コミカルな場面があって、同じ青春路線でも『太陽にほえろ!』とは違った味わいのアクションを見せてくれました。

それでいて最後は、犯人の恋人(関根恵子=高橋惠子)が見てる目の前で、やむなく彼を射殺するに至るというほろ苦さ。シンコの元カレだったジーパンが、新しい彼氏を殺しちゃったワケですねw

第5話『人質』はかなりハードなエピソードです。かつて犯人を追跡中に人質を取られ、手が出せずに逃がしたら、後日その人質が死体で発見され、マスコミに叩かれた苦い過去がある中野刑事。

その時の犯人を街で偶然見つけて、今度こそはと追いかけたら、またもや人質を取られ、逃がした上に人質の死体が発見されて、マスコミに叩かれるという悪夢のような負の連鎖。

そしてまたもや、中野に追い詰められた卑劣な犯人は、か弱い女性を人質に取る。二度ある事は三度あるのか、あるいは三度目の正直で中野は人質を救えるのか?

過去の経験から犯人の動きを見切った中野が、壁越しにマグナムを撃って犯人と人質を引き離すという、世界一強力な拳銃の威力を活かした戦法で、ついに逆転勝利を収めます。

その後に展開される犯人との殴り合いも壮絶で、鉄杭で脚を刺された中野が、最後にブーツを脱いでひっくり返したら血がジャーって流れたりして、優作さんらしいリアルな描写が光る一編です。

第12話『海を撃った日』は、傷害罪のチンピラ(小野進也)を護送する中野&五十嵐コンビが次々と刺客に襲撃され、応戦しながら本署を目指す『ガントレット』的なロードムービー・アクション。

そのチンピラが実は、暴力団と癒着する警察上層部の秘密を握っており、どうやら黒幕が警察内部にいるらしいのもイーストウッド監督・主演の映画『ガントレット』とよく似てます。

共に闘う2人の刑事とチンピラとの間に生まれる友情。だけど結局はチンピラを守り切れなかった中野が、最後に感情を爆発させ、海に向かってマグナムを連射します。

脚本はメインライターの鎌田敏夫さん。『太陽にほえろ!』でジーパンが初めて銃を手にした『海を撃て!ジーパン』も鎌田さんの作品で、優作さんに海を撃たせるのがよっぽどお好きなんですねw

ほか、雅俊さんが後に結婚する五十嵐淳子さんと共演した第14話『雨に消えた…』や、水谷豊さんが二度目のゲスト出演を果たす第15話『孤独な殺し屋』、そして中野が左遷され、五十嵐が刑事を辞めちゃう最終回『わかれ』等がオススメ作品です。
 
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