ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『俺たちの勲章』1975

2018-09-22 00:00:22 | 刑事ドラマ HISTORY









 
とある若者が○月○日に銀行強盗を計画している、みたいなタレコミを受けた時、あなたが刑事ならどうするでしょうか?

その決行日に銀行を張り込み、若者が強盗をやらかすのを待ち構えて現行犯逮捕するのが、武闘派の刑事マシーン=中野祐二(松田優作)のやり方。

片や、若者が強盗しちゃう前に何とか見つけ出し、説得して思いとどまらせるのが、平和主義のヒューマニスト刑事=五十嵐貴久(中村雅俊)のやり方。

その時は思いとどまっても、やる奴はどうせ又やるに決まってる。それが中野刑事の人間観。対して、人間の本質は善だと信じて疑わないのが五十嵐刑事。

考え方は対照的なんだけど、両者とも組織の中で働くには自己主張が強すぎて、サラリーマン的な上司や同僚達から疎まれちゃうハミダシ者。

そんなヤツらはまとめて厄介払いしてしまえって事で、2人は毎回あちこちの地方署に出張させられちゃう。

横浜を拠点にしながらも、日本全国あらゆる町を舞台にして、優作が走り、雅俊が吠える。『俺たちの勲章』は、そんなユニークな設定の刑事ドラマでした。

1975年の春から秋、日本テレビ系列で水曜夜8時に放映された番組ですが、頻繁にナイター中継を挟んだお陰で、全19話という当時としては少ない話数。視聴率もやや苦戦気味だったらしいです。

だけど片や『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役、片や『われら青春!』の沖田先生役で、それぞれ鮮烈なデビューを飾って人気スターの座に就いた2人がコンビで主演ですから、そりゃもう我々世代の男子にとってはたまらん番組でした。

特にやっぱり、革ジャンに革パンの黒づくめで決めた優作さん=中野祐二の、情け容赦ないバイオレンス刑事ぶりが鮮烈で、めちゃくちゃ格好良かった。少年ジャンプに連載された漫画『ドーベルマン刑事』の主人公も、中野刑事をモデルに造形されたんだとか。

萩原健一&水谷豊の名作探偵ドラマ『傷だらけの天使』は、健全路線の『太陽にほえろ!』でマカロニ刑事を演じてたショーケンさんが「俺はもっとアダルトで尖ったドラマがやりたい!」とか言って、プロデューサーにダダをこねた事から生まれた作品でした。

同じように優作さんも、純朴キャラのジーパン刑事役には相当ストレスを溜めておられたそうで、そのワガママに『太陽』プロデューサーが応えて生まれたのが、この『俺たちの勲章』という企画だったんですね。

だからと言って、クールな松田優作がやたら暴れ回るアクション一辺倒の刑事ドラマかと思ったら、実は全然違ってたりします。

本作は後に中村雅俊の『俺たちの旅』や勝野洋の『俺たちの朝』等へと続いて行く『俺たち』シリーズの第1弾でもある。つまり本質は「青春ドラマ」なんですね。

だから、五十嵐がいくら人間の性善説を信じても大抵は裏切られてしまうし、中野の内に秘めた正義感や優しさを理解してやれる人間もほとんどいない。青春とは、痛くてほろ苦いもんなのです。

扱われる事件も、男と女の情念が絡んだ現実的なものが中心で、必ずしも善人が報われるとは限らない、辛辣な結末を迎えるエピソードが多かったように思います。

ゆえにゲスト俳優も水谷豊さんはじめ実力派の人達がキャスティングされ、殊に関根恵子(現・高橋惠子)、篠ひろ子、浅茅陽子、五十嵐淳子、真野響子といった、旬の若手女優さんが毎回起用されるのも大きな見所になってました。

で、五十嵐がいちいち彼女らに惚れちゃうんですよね。美人はみんなイイ人だと思い込んでるフシがあるw 演じる雅俊さんは実際、その中の1人である五十嵐淳子さんと結婚しちゃいましたからね。

製作は日本テレビ&東宝テレビ部の『太陽にほえろ!』チームで、メインライターは後に『男女7人夏物語』や『金曜日の妻たち』等を手掛けるヒットメーカー・鎌田敏夫さん。音楽は吉田拓郎&トランザム。

レギュラーキャストは他に、中野&五十嵐が所属する相模警察本部捜査第一係の係長に北村和夫、事務員に坂口良子、鑑識課員に柳生 博&山西道広、行きつけの小料理屋「あすか」のママに結城美栄子、店員に佐藤蛾次郎、中野が捜査の合間にデートする謎の美女に鹿間マリ、といった面々。

プロデューサーの岡田晋吉さんは、ご自身が手掛けられた幾多の名作・ヒット作の中でも、この『俺たちの勲章』が一番の自信作なんだそうです。

また、後に中村雅俊&根津甚八のコンビで続編的内容の『誇りの報酬』('85) が、更にその後番組として舘ひろし&柴田恭兵の『あぶない刑事』('86) が製作される事にもなります。

放映スタートはテレビ朝日系列『TOKYO DETECTIVE/二人の事件簿』の方が1日だけ早かったけれど、日本のバディ物刑事ドラマの原点はやはり、この『俺たちの勲章』と言って差し支えないでしょう。

黒豹みたいな松田優作のハードアクションに痺れるも良し、青春ど真ん中な中村雅俊の悲恋に泣くも良し、’70年代を彩った若手女優たちに萌えるも良し。未見の方は是非、DVDやBlu-rayでご鑑賞あれ。
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『二人の事件簿』シリーズ '75~'77

2018-09-21 12:00:23 | 刑事ドラマ HISTORY

 
第1作『TOKYO DETECTIVE/二人の事件簿』は1975年の4月から11月まで、NET(現テレビ朝日)系列の火曜10時枠で全35話が放映されました。制作は朝日放送&大映テレビ。

その続編となる『新・二人の事件簿/暁に駆ける』は'76年夏から'77年春まで、全35話の放映。同じ火曜日ながら夜8時台に枠が移動してます。

放映スタートは日テレの『俺たちの勲章』と僅か1日違い。この『二人の事件簿』がかろうじて先輩格って事になりますが、日本におけるバディ物刑事ドラマの元祖2つが、ほぼ同時に生まれた事実は興味深いです。

第1シリーズは10時台の放映って事で私はリアルタイムで観てないですが、8時台に繰り上った第2シリーズは何度か観た記憶があります。

裕福な家に生まれ育ったエリート気質の宮坂(篠田三郎)と、孤児院育ちで雑草魂むき出しの真樹(高岡健二)は学生時代からのライバル関係で、そんな二人が刑事になったら同じ署の同じ課に配属されたから驚いた!

という設定で、大人になってもライバル意識が抜けない両者がいつも対立し、常に競い合うという「仲の悪さ」がとにかく印象に残るドラマでしたw

あとはヒロイン(宮坂の恋人役)の土田早苗さんに好感を抱いてたこと位しか記憶に無いんだけど、観ればそれなりに楽しめる刑事ドラマの1本ではありました。

同じ大映テレビが後に制作する『噂の刑事トミーとマツ』も初期は主役コンビをやたら対立させてましたから、この『二人の事件簿』の世界観を受け継いだ作品と見て間違いないでしょう。

レギュラーキャストは他に、主役コンビが勤める警視庁緑橋署刑事課のメンバーに高橋悦史、植木等、大坂志郎、近石真介etc、婦警に牧美智子、署長に竹脇無我という渋めのメンツ。

そのぶん各ジャンルから話題性あるゲストを呼んで来るのが大映ドラマ方式で、本作も第1話の山口百恵はじめ和田アキ子、アグネス・チャン、三浦友和、クレイジー・キャッツなど豪華な顔ぶれが並んでました。

なお、'75年は他に日本テレビ&東宝による『俺たちの勲章』、日テレ&国際放映の制作で平幹二郎&沖雅也 主演の『はぐれ刑事』、NET&東映+JACのタッグによる千葉真一主演『燃える捜査網』、北大路欣也・藤竜也・財津一郎・小池朝雄といったメンツを揃えたフジテレビ&東映の『新宿警察』、そしてTBS&東映が放った会心のヒット作『Gメン'75』等の新番組が登場、もちろん『太陽にほえろ!』も続行中で、空前の刑事ドラマブームが起こりつつありました。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『夜明けの刑事』シリーズ '74~'79

2018-09-21 00:07:06 | 刑事ドラマ HISTORY





 
『夜明けの刑事』は1974年秋から'77年春まで、TBS系列の水曜夜8時枠で全111話が放映されました。制作はTBS&大映テレビ。

その続編『新・夜明けの刑事』は'77年の春から秋まで全20話、第3弾『明日の刑事』は'77年秋から'79年秋まで全90話の放映。

「コント55号」の坂上二郎さんが警視庁日の出署刑事課の人情味溢れる叩き上げ刑事・鈴木勇に扮し、持ち前の粘り強さと馬鹿力で事件を解決していくという番組で、私はこれもほとんど観たことがありません。

『太陽にほえろ!』で言えば長さん(下川辰平)主役の回だけが毎週続くようなもんですから、当時ガキンチョだった私にはあまりに地味なイメージで、大人になった今でもそんなに観たいとは思いません。

それでもトータルで5年も続いたワケですから、おそらく後の『はぐれ刑事純情派』や『私鉄沿線97分署』みたいに、年配層が落ち着いて観られる人情ドラマとして存在価値があったんでしょう。

また、同じ大映ドラマの『赤い~』シリーズで主役を勤めてた山口百恵さんや三浦友和さん、森昌子さん、石川さゆりさん、キャロル、ダウン・タウン・ブキウギ・バンド、世良正則&ツイスト等、多彩かつ豪華なゲストの顔ぶれも魅力の1つだったみたいです。

地味なイメージって書きましたけど、あの『赤い~』シリーズや『スチュワーデス物語』『スクール・ウォーズ』、そして何と言っても『噂の刑事トミーとマツ』を生んだ大映テレビですから、きっと一筋縄じゃいかない作風で、観ればクセになる魔力があったのかも知れません。

日の出署刑事課のメンバーは坂上二郎さんのほか、石橋正次、鈴木ヒロミツ、藤木敬士、課長に石立鉄男、署長に宇津井健という顔ぶれでスタート。

二郎さんの相棒となる若手刑事が石橋さんから水谷豊さんに交代したり、課長役が『新~』から梅宮辰夫さんになったり、『明日~』から志穂美悦子さん、田中健さん、谷隼人さんが加わったり等のメンバーチェンジがあった模様です。

なお『夜明けの刑事』がスタートした'74年には、犯罪組織の罠によって職を追われた元刑事(藤岡 弘)の復讐を描く『白い牙』(日本テレビ&大映)や、民間警備員の千葉真一さんや志穂美悦子さんらが暴力で全てを解決する『ザ・ボディガード』(NET&東映)など、毛色の変わった事件物ドラマが放映されてました。
 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『太陽にほえろ!』1974~1975

2018-09-20 00:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY









 
さて、3年目に突入した『太陽にほえろ!』は、またもや大胆な賭けに出ます。松田優作に続いて全く無名の新人俳優をキャスティングするワケですが、これまでの人気を築いたショーケンさんや優作さんの、長髪で反体制的なイメージとは正反対な人を選んじゃうんですよね。

それがテキサス刑事こと勝野 洋さんです。角刈りで、いかにも体育会系の爽やかさですから、マカロニやジーパンのアウトロー的な格好良さに憧れてたファンは、それこそ「なんじゃこりゃあー!?」てな反応だったかも知れません。

実際、私より上の世代の男子は、テキサスで視聴をやめちゃったと仰る人が多いです。当然、それは覚悟の上のキャスティングだったかと思います。でも、まだ幼かった私はコワモテのジーパンよりもテキサスの方が親しみ易くて、かえって『太陽』ワールドに引き込まれる羽目になりました。

『太陽』の生みの親である岡田晋吉プロデューサーは、番組の視聴率が30%を超えた時点で、若者以外のファン層を意識されるようになったそうです。子供からお年寄りまで、幅広い層に受け入れられるキャラクターが必要だと。

それと、番組人気が拡大した分、社会的な責任も負わなくちゃならないって事で、若い世代の模範になり得るキャラクターにもしたかった。ずっと青春ドラマを創って来られた方だけに、非常に生真面目なんですね。

マカロニは長髪だし反抗的だし言葉遣いは悪いし、ツバは吐くわ立ちションするわでw、その不良性こそが魅力とは言え、若者の模範には程遠かったワケです。ジーパンは純朴キャラだけど、ボソボソ喋るし煙草は吸うしグラサンしてるし喧嘩は強すぎるし、でもカッコイイから子供は真似したがるワケで……

30%以上の家庭で観られる番組になったからには、視聴者に与える影響も考えてドラマ創りをしないといけない。そんな『太陽』の良心を象徴するキャラクターがテキサスなんですね。

なお、シンコ(関根恵子=高橋惠子)はジーパン殉職を機に退職、お茶汲みの久美ちゃん(青木英美)もテキサス登場から間もなく降板。代わって2代目マスコットガール「チャコ」こと長山久子役で浅野ゆう子さんがレギュラー入りします。

ご存知でしたか? 後にトレンディー女優の代名詞になる浅野さんが、七曲署でお茶汲みをしていた事を! 実は浅野さん、『太陽』ファンの女性達から嫌われ、カミソリ入りの手紙を山ほど送られて、やむなく1クールで降板せざるを得なくなったんだそうです。

当時まだ14歳のアイドル歌手だった浅野ゆう子さんですが、どうやら華があり過ぎたんですね。前任の青木英美さんも洗練されてて色気があったけど、同時に庶民的な感じもあって女性の反感は買わずに済んだ。

キャラクター的にはクミもチャコも大して変わんないのに、あまりに整いすぎた浅野さんのルックスと、何より14歳という若さが、殿下あたりに萌える女子たちの嫉妬を思いっきり買っちゃったワケです。

まだ少女の浅野さんにはお気の毒でしたが、これも当時の『太陽』人気を物語る裏エピソードかと思います。


#112 テキサス刑事登場!

さて、3代目の新人刑事、その名は三上 順。ちなみに初代のマカロニが早見 淳、次のジーパンが柴田 純。なので三代目の「ジュン」って事で三上順。

ニックネームの「テキサス」は、自分の命を狙う犯人をおびき出そうとした彼が、より目立つようにとテンガロン・ハットを被ったから。

実際は岡田晋吉プロデューサーやチーフ脚本家の小川 英さんらがミーティング中に、テレビをつけたら西部劇をやってたもんだから「よし、テキサスで行こう」とw

意外と安易なプロセスで決まっちゃう『太陽』新人刑事のニックネームですが、勝野洋さんを見てると本当に「テキサス」そのもの、他の名前は全く考えられないのが凄いです。

勝野さんは劇団員ではあったものの本来は裏方志望で、実はこの大抜擢オファーを何度も断ってたんだそうです。

それでも岡田Pに食い下がられ、根負けして「ほんとに僕は芝居出来ないですよ」と念押しし、渋々出演する事にw で、いざ撮影が始まったらホントに芝居が出来なかった!

ボス=石原裕次郎さんが「やれやれ、『太陽』もテキサスで終わりだな」とボヤかれた位、初期の勝野さんはホントに下手だった。だけど、それでも一生懸命に取り組む姿が劇中のテキサス像と重なり、視聴者のハートに響いたのか、気がつけばマカロニやジーパンを凌ぐ人気者に。

と同時に、芝居が拙いテキサスをカバーすべく他のレギュラー刑事たちの活躍もより一層強化され、全員が主役として成立する『太陽にほえろ!』のスタイルが確立する事にもなりました。

テキサスで終わりどころか、いよいよ巨大なお化け番組となって日テレの看板を背負う存在になった『太陽』は、同じブレーンで萩原健一&水谷豊の探偵物『傷だらけの天使』、松田優作&中村雅俊の刑事物『俺たちの勲章』等、副産物としての新たな人気ドラマも生み出して行きます。

それを見て他局が手をこまねいてる筈がなく、大スターを起用して勝負をかけた刑事ドラマが次々と登場する事になります。その中でいち早く人気を獲得したのが、丹波哲郎さんをボスに据えたTBSの『Gメン’75』です。


#116 マカロニ・ジーパンそしてテキサス

着任早々、早くもテキサスが絶体絶命の危機に陥り、一係メンバーたちの脳裏にマカロニとジーパンの死がよぎります。

その回想シーンで、私は初めてマカロニ刑事の姿を観ました。本放映当時、私はジーパン時代の後期から番組を観始めたので、映像でマカロニを見る機会がそれまで無かったんですね。

当時の私は小学生で『太陽』以外は特撮ヒーロー物やアニメしか観てなかったから、ショーケンさんの事もよく知らず、ゆえにあの独特な佇まいには衝撃を受けました。新人刑事が背広を着てる事が、逆に新鮮でもありました。

悪役ゲストは真屋順子さんと「死神博士」こと天本英世さん。お2人とも実に不気味でしたw


#122 信念に賭けろ!

ゴリさん(竜 雷太)に恋人が出来ます。お相手の道代さん(武原英子)は実直なお人柄で、誠実で不器用なゴリさんとお互い敬語で会話する初々しさが、観ていて微笑ましく心地良かったです。

殿下(小野寺 昭)は既に2人の女性(有吉ひとみ、真野響子)との恋愛が描かれてますが、貴公子のスマートなロマンスには興味ありませんw


#126 跳弾

テキサスが犯人追跡中に、川の水面に向けて威嚇射撃した弾丸が、川べりを歩いていた通行人に当たって重傷を負わせてしまいます。

弾丸が水面上で跳ねて方向が変わってしまった不慮の事故なんだけど、テキサスが水面に向けて撃った事実が証明出来なければ、免職どころじゃ済まなくなってしまう……

現実にも起こり得る問題をドラマに取り入れた意欲作で、こうして拳銃の使用を巡って刑事が裁かれる立場に回っちゃうエピソードは、以降も『太陽』でたびたび描かれることになります。


☆1974年

#132 走れ!ナポレオン

『ドーベルマン・ギャング』だったかと思いますが、訓練されたドーベルマン犬が銀行強盗に利用されるアメリカ映画がヒットして、『太陽』でもそれをモチーフにしたエピソードが創られました。

ここで強盗の片棒を担ぐのは3匹のシェパードで、その内の1匹がナポレオン。負傷したナポレオンは、面倒を看るテキサスと心を通わせるようになり、犯人逮捕に協力します。

そしてナポレオンは警察犬に採用され、「ジュン」と改名されて『太陽』のセミレギュラー出演者として長期に渡り活躍、私らファンも「犬シリーズ」と呼んで楽しみにしてました。

今の眼で見ると、テキサスの殉職を知ったジュンが涙を流したりw、ちょっと擬人化が過ぎて苦笑しちゃう場面も多いんだけど、そんな演出にも何となく納得させられるような勢いが、当時の『太陽』にはありました。

現に、明らかにこの犬シリーズの影響を受けたであろう『刑事犬カール』や『爆走!ドーベルマン刑事』といったTVシリーズが、後に創られましたからね。多部未華子さんの『デカワンコ』もその延長線上にあると言って差し支え無いでしょう。


#149 七曲藤堂一家

ボスに昇進の話が持ち込まれますが、一係メンバーを家族のように思うボスにその気は無い。けど、「君が動かなきゃ部下(山さん)も出世できないじゃないか」と言われて、心が揺らぐ……

張り込み捜査で銭湯に入ったテキサスが、ゲイだと勘違いされてオジサンに迫られる珍場面があるんだけど、後に中村雅俊&勝野洋の劇場映画『刑事珍道中』でも又、銭湯で「ホモ牛乳」を呑む勝野さんを見て雅俊さんがビビる場面がありましたw 実際に勝野さんがやたらゲイにモテるのをパロったネタらしく、どちらも鎌田敏夫さんによる脚本です。

「藤堂一家」と言うとヤクザみたいに聞こえるけど、これはストレートに「家族」の意。決して「軍団」とは呼ばせない所が『太陽』の『太陽』たる所以かと思います。


#155 家族

『太陽』はある意味、ドラマの総合デパートです。ボスが主役ならハードボイルド、テキサスなら青春(成長)ドラマ、ゴリさんなら熱血アクション、殿下なら女性絡み、山さん(露口 茂)なら本格ミステリーと、誰がその週の主役を勤めるかによって並ぶ商品が違って来るんです。

そんな中で最年長の長さん(下川辰平)は、最もスタンダードな捜査ドラマを見せてくれました。現実の警察関係者たちが口を揃えて「長さんが一番リアル」と評した程に、最も刑事らしい刑事が長さんでした。

捜査一係で唯一人、ごく普通の家庭を築いてる点でも、長さんってスタンダードな存在なんですよね。山さんは奥さんが病弱で子供が授からず、後に養子をもらう事になるし、他のメンバーはボスをはじめ全員、チョンガー(独身)ですからね。

だから長さんは『太陽』デパートのホームドラマ売り場も担当、娘の思春期から結婚問題、息子の反抗期から受験、就職問題に至るまで、10年に渡って描かれる事になります。

で、この『家族』ってエピソードは長さんファミリーが旅行先で事件に巻き込まれる話で、とても印象に残ってます。

刑事の家族が危険に晒される話は他のドラマにもあるでしょうけど、家族全員が犯人と対決する羽目になるシチュエーションって、けっこう珍しいのでは? 全員キャラが立ってる長さんファミリーだからこそ成立するエピソードかも知れません。


#163 逆転

完全犯罪による殺人を目論んだのは、山さんに捜査のイロハを叩き込んだ先輩刑事にして、現職の警視(西村 晃)。自分の手の内を知り尽くす師匠を相手に、山さんはその完璧なるトリックとアリバイを突き崩す事が出来るのか?

髪の毛が伸びるにつれ、服装や仕草が刑事コロンボ化して来た山さん(露口茂さんは実際、ピーター・フォークの自然な演技に感銘を受けておられたそうです)。その主演エピソードも、身分の高い知能犯と取調室や法廷で対決する、コロンボ的な内容が多くなって行きます。

でも、単なるコロンボの劣化コピーに留まる事なく、切れ味鋭い山さんならではの渋い味わいと、露口さんの計算され尽くした演技力、そして藤堂一家メンバー達のサポートにより、どれも実に見応えある作品に仕上がってました。


#167 死ぬな!テキサス

マカロニもジーパンも着任から丸1年で殉職したもんだから、心配したファン達から「テキサスを殺さないで!」っていう助命嘆願書が局に殺到し、殉職をあまりパターン化させたくない岡田Pの意向もあって、テキサスの寿命はもう1年延びる事になりました。

この「死ぬかと思ったら助かっちゃった」エピソードもまた恒例となり、テキサス以降の新人刑事は代々、着任から1年目で必ず死にかける事になりますw

でも実際、仕事を覚えて自信がついて来た時期に、つい調子に乗って危ない目に遭うというのは、一般社会でもありがちな事かも知れません。

このエピソードをもって、1人の新米刑事の成長過程を描く青春ドラマとしての『太陽にほえろ!』は終焉を迎え、ボン(宮内 淳)が登場する次回からは又、新たなステージへと進む事になるのでした。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『非情のライセンス』シリーズ '73~'80

2018-09-19 00:00:09 | 刑事ドラマ HISTORY



 
『非情のライセンス』第1シリーズは1973年春から'74年春まで、NET(現テレビ朝日)系列の木曜夜10時枠で全52話が放映されました。制作はNET&東映で、生島治郎氏による小説『凶悪』シリーズが原作になってます。

同じ枠で'74年秋から'77年春まで第2シリーズ全124話、'80年春から冬まで第3シリーズ全26話が放映されてます。

当時ガキンチョだった私は夜9時以降のテレビ視聴を親に禁止されてた為、この番組はほとんど観たことがありません。再放送で観る機会はいくらでもあった筈なのに、積極的に観たいとも思いませんでした。

その原因はやはり、主人公の会田刑事(天知 茂)が醸し出す陰気なオーラに尽きるかと思います。どう見ても『太陽にほえろ!』の明るさとは対極にあるイメージで、私はそういうのが一番ニガテなんです。

実際、会田刑事は広島出身で被爆者の一人であり、両親も原爆で亡くしてる設定。おまけに実姉は在日米軍兵にレイプされて自殺しており、ゆえに犯罪者を徹底して憎むニヒルな男として描かれてる。

当時は終戦後まだ30年も経っておらず、各エピソードも戦争の傷痕を織り込んだものが多かったみたいです。戦争が忘却されつつある今となっては貴重とも思えるけど、とにかく辛気臭いのがニガテな私はひたすら敬遠してました。

だけど考えてみれば、その暗さこそが本来の刑事ドラマなんですよね。犯罪をテーマとして扱い、そこに至った人間のダークサイドを描くワケだから、暗くて当たり前なんです。それを明るいイメージに一変させちゃった点こそが『太陽にほえろ!』最大の革命だった、と言えるかも知れません。

けれども、あえてハミダシ刑事ばかり集めた「警視庁特捜部」という設定は、同じテレ朝&東映タッグによる『特捜最前線』や『相棒』等に受け継がれ、今やすっかり刑事ドラマのメジャースタイルとなり、『太陽にほえろ!』や『踊る大捜査線』みたいに所轄署を舞台にした作品の方が逆に珍しくなっちゃいました。作風も暗いものが増えてきた気がするし、時代は巡り、世相はまた戦争時代に戻りつつあるのかも?なんて思ったりもします。

それはともかく、悪を駆逐する為なら手段を選ばず、容疑者を拳銃で脅すなんてのは日常茶飯事で、上司の命令は聞かないどころか気に障ればぶん殴るというw、後のスコッチ刑事や『あぶない刑事』たちも真っ青な会田刑事の暴走ぶり。

最終回ではとうとう主人公が刑務所にぶち込まれてジ・エンドという『非情のライセンス』、機会があれば是非観てみたいと今は思ってます。

天知茂さん以外のキャストは、特捜部を取り仕切る矢部警視に山村聰、会田と対立する捜査一課の係長に渡辺文雄、特捜部刑事に葉山良二、多々良純、宮口二郎、梅津栄、左とん平、江波杏子、篠ひろ子、財津一郎、柳生博、小野武彦etc…といった面々。画像の集合写真は第3シリーズにおける特捜部です。

なお、1973年は『太陽にほえろ!』と『非情のライセンス』のほか、フジテレビ系列で『トリプル捜査線』『科学捜査官』『ロボット刑事』等の刑事ドラマも放映されてました。
 
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする