大村正次著「春を呼ぶ朝」―神様に召される前
―逝ける妹ふさ子の霊に捧ぐ―
凶 電
やはり死んだ、 ふさ子は。
どうせいけないとわかってゐても
若しかしたらと心の隅のどこかに
誰しもがつなぐあはれな
細いけれど妙に断ちがたいその糸が
急に ふつつり切れた時のさびしさ、
再び返らぬものへの涙ぐましい思慕が
しんしんとそこからうづいて來る。
俺の仕事がなんであろ。
なぜもう一度顔を見ておかなかつたろ。
ふさ子はもう死んだのだ。
人見東明
(↑クリックで人物紹介)
御高著ただ今拝受直ちに拝讀致し、ふかい感激を感じてゐます。かゝる詩境に生き得る大兄に心からの敬意を表したいと思ひます。