田辺聖子は1928年に大阪で生まれました。
1956年に、”虹 ” で大阪市民文芸賞を受賞して本格的な作家活動を始めます。
1964年に芥川賞を受賞するのですが、同年に文芸仲間であった川野彰子が急死します。
川野彰子は聖子と同い年で、直木賞の候補に2回選ばれており、早晩受賞するのは確実だろうと噂されていました。
聖子は川野彰子の追悼文を文芸誌に載せました。
それを読んだ彰子の夫が聖子のもとにお礼に訪れます。
この男こそ、後に聖子が結婚することになる皮膚科の開業医・川野純夫だったのです。
川野純夫は、” カモカのおっちゃん ” として聖子のエッセーにたびたび登場します。
1966年に結婚しますが、カモカのおっちゃんは40歳、聖子は36歳でした。
互いを、” カモカのおっちゃん ”、”お聖さん ”、と呼び合って仲良く暮らし、二人して、” おしゃべり夫婦 ”と呼ばれました。
窓を開けますか?は1972年の作ですので、お聖さんは44歳だったことになります。
お聖さんは自分の顔を、” オコゼ顔 ”と例えるくらいですから、不細工なオバチャンです。
しかし不細工でも不思議ともてる女性もいるようなのです。
この作品の主人公である亜希子は、” とんぼ目玉 ” で不細工な32歳のハイミス( オールドミスよりも響きがよろしいそうです )ですが
よくもてます。
OLなのですが、社内のイケメン若手社員をセフレにしていた時代があり、現在でも彼は時々秋波を送ってきます。
行きつけのバーで、初対面の男である桐生にくどかれます。
桐生は41歳で小さな機械工場のオーナーですが中学生の娘を持ち、妻とは離婚しようとしています。
この桐生とのやりとりが、この小説のメインストリームです。
さらに電車で亜希子をにらみつけてくる無骨な男が現れます。
この男も、後に亜希子に一目惚れした外科医としてストーリーにからんできます。
なんだか、もてもてOLの自慢話のようにも聞こえます。
私は、こっちの方がたくさん愛していて、相手の方が少ししか愛してくれない、なんてつまらないからいやである。
ずっと若い頃、そんな経験をしたことがあって、私はそれから、本気に惚れるのをおそれるようになった。
本気に惚れてるとき、女はみにくくなるからである。
情熱的に結婚を迫ってくる桐生を手玉にとりながら亜希子はこんなことを考えます。
私は何となく、物凄い人生のぜいたくをしている気がした。
人の心を湯水のように使って、こっちの心は少しも減らないなんて、バチ当たらないか、今に。
そして、自分がもてる原因は陽気さにあると考えています。
陰気になろうとしても、いうなら、抑えても抑えても水に浮く瓢箪のように、陽気になってしまうところがある。
かなりの長編ですが、楽しく読み切ることができました。