昨夜は、はせがわクリニックのスタッフが居酒屋、" 蔵 " に集まっての祝賀会が開催されるはずでした。
長年、当院で医療事務・受付をこなしているSが2年間の努力の末、准看護師の資格試験に合格したからです。
ところが昨朝Sが右上腕の腫脹と痛みを訴えてきました。
原因は全く不明でしたが、午後には腫れと痛みが悪化したので、整形外科を受診させました。
整形外科でも診断がつかずに、私の知り合いの放射線科にMRIのオーダーを出されました。
その結果が、" 壊死性筋膜炎の疑い " だったのです。
こいつはヤバイ病気です。
死亡率が30%にも達する病気で、治療は切開して壊死組織をすべて切除していくというものです。
つまり、敗血症におびえつつ、患部を切り刻まれて、仕上げには皮膚移植が待っているという、めまいがするくらいに悲惨な病気です。
Sは戻った整形外科で入院を勧められたそうですが、子供の世話があるとの理由で断り、帰宅しようとしていました。
私はすぐに携帯で連絡を取り、そんなにのんびりとした病気ではないことを告げて、即、国立病院受診を勧めました。
居酒屋の予約をドタキャンするわけにもいかず、残ったスタッフで乾杯したのですが、
持ち込んだジョニ黒を飲むなり私は、" 不味いっ! " と叫んでいました。
人生でもっとも不味い乾杯の味でした。
さて、国立に入院して切開された結果ですが、壊死はなく、血腫だけであったそうです。
つまり、壊死性筋膜炎ではなかったとのことで、最悪は免れたと思い、ホッとしました。
ところが、今日になって診断がつきました。
なんと、" 後天性血友病A " だったのです。
原因不明の自己免疫疾患で、血液凝固の第Ⅷ因子に抗体を作ってしまう病気なのです。
第Ⅷ因子が働かないと血液は凝固できません。
とりあえず国立病院は血腫を除去して、止血を試みています。
止血には第Ⅷ因子を投与すれば良いように思われますが、現実的には無理なのだそうです。
なぜならば、投与量の決定が困難だからです。
少ないと凝固しないし、多すぎると血管内で凝固しすぎてDICを引き起こし、死亡する恐れがあるのです。
そこで、" バイパス止血製剤 " なる物が投与されます。
これには3種類あるようです。
詳しくは書きませんが、第Ⅶ因子、第Ⅹ因子などを組み合わせた迂回止血剤です。
輸血も並行して実施されています。
逆に考えれば、輸血を必要とするほどの出血だったということなのでしょう。
止血が落ち着いたら、根本治癒を目指して、ステロイドの単剤投与か
ステロイドと免疫抑制剤の2剤投与が行われるはずです。
まあ、最悪は免れたとは言え、一難去ってまた一難でしょうか.....
Sは当院随一の健啖家です。
肉食獣ですのでステーキは他人の分まで、いくらでも食べることができます。
スウィーツにも目が有りません。
いつぞやの忘年会では男性陣が手を付けなかったスウィーツ8皿を一気食いしていました。
そんなSがいない宴会ではコース料理が余り気味でした。
Sが退院したあかつきには、快気祝いもかねて、" 蔵 " に集まるつもりです。
今度こそ乾杯のウィスキーを、美味しく飲みたいものです。