南米のコロンビアで5歳くらいの時に誘拐されて、すぐにジャングルに捨てられた女の子の実話です。
生き延びるために彼女が選択したのは、” 猿まね ” でした。
サルが食べる物ならば、自分が食べても大丈夫だが、サルが食べない物は、自分も食べてはいけないという単純なルールです。
やがて彼女はサルの群れの一員となり、四足歩行となり、人間の言葉を忘れていきます。
サルの群れでの生活は、詳細かつ精密に描写されていきます。
ときおり、自分たちの縄張りが、よそ者のアタックを受けることを除けば、生活は楽しく、安定しています。
食べ物は潤沢ですし、サルの群れは愛情に包まれており、彼女もその一員として溶け込んでしまいます。
そのジャングル生活は5年間にも及びますが、それは彼女の人生で最も幸せな時期であったかもしれません。
ある日、縄張りに侵入してきた白人のアベックハンターに拉致されて、田舎の村の売春宿に売り飛ばされます。
そこで、グロリアと名付けられ、腰まである縮れて団子状態になった髪の毛を切られ、二足歩行を強制され、人間の言葉も覚えていきます。
毎日、ひどい暴力を受けながらも、少しづつ掃除や洗濯などの家事もこなしていけるようになります。
しかし推定11歳になったグロリアは、客を取らされそうになった瞬間に、脱兎のごとく、全力で逃走します。
ククタという町にたどり着いた彼女は、大きな公園の木の下で寝ようとしますが、驚いたことには、たくさんの子供たちが、それぞれの木の下で寝ようとしていました。
ククタではストリートチルドレンは珍しくなかったのです。
彼女はストリートチルドレン仲間からポニー・マルタと呼ばれます。
ポニー・マルタとは小さなコーラのような清涼飲料水の商品名です。
ジャングルで鍛えられた俊敏性で彼女は頭角を現していきます。
生計は、かっぱらいで立てていました。
このストリートチルドレン時代も、彼女にとっては、人生に張りのある楽しい時期だったようです。
彼女の次の人生は、マフィアがらみの一家での召使生活で、ロサルバと名付けられます。
隣に住む女主人マルハの助けで、そこを逃げ出した彼女は修道院にかくまわれます。
ここで彼女はジャングルを出て以来、初めてベッドを与えられます。
しかし、その修道院での毎日は彼女にとって苦痛と退屈以外の何物でもありませんでした。
結局、彼女はそこも脱走し、再びマルハの助けで、首都ボゴタに住む、マルハの妹夫婦の家庭に迎えられます。
幸せな人生を送るための必要条件を深く考えさせられる作品です。
まずは食料と自由は絶対でしょうが、認められること、愛されること、自分の能力が発揮されることなどでしょうか。
彼女の推定年齢は私と同じくらいのようです。
現在はルス・マリーナという名前で英国に住んでおり、子供と孫にも恵まれています。
この作品は彼女の次女が、母親の思い出話を書き留めて、ゴーストライターに依頼したものです。