終戦後にイギリス政府は秘密裏に児童達の強制移民を続けました。
健康な白人で3歳以上であることが適用条件であり、障害者や黒人は難を逃れました。
貧しい家庭に声をかけ、子供たちを施設に収容し、頃合いをみて、強制的に移民させたのです。
”オーストラリアは太陽が素晴らしく明るいし、毎朝オレンジをかじれるんだぞ。”と騙して。
そして、その子の親には、”立派な里親に引き取られたので探すな。”と嘘をついたのです。
行先は、この映画の舞台であるオーストラリアが多かったようですが、他にも、農家に対する安価な労働力としてのカナダや、
また白人のエリート経営者を保護するための旧ローデシア(現ジンバブエ)がありました。
この秘密のプロジェクトは1970年まで続けられ、その総数は、なんと13万人にのぼりました。
そして、そのほとんどが、劣悪な状況下で重労働を強いられ、暴行を受けています。
ある修道院では、収容されたほとんどの少年達が、牧師らにレイプされ続けていました。
1986年にイギリスでソーシャルワーカーとして働いていたマーガレット・ハンフリーズが、
オーストラリアから来英した女性の思い出話に疑問を抱き、調査を開始しました。
その女性は幼い頃に英国の児童養護施設から、オーストラリアに集団移送させられていたのです。
英国政府も豪州政府も知らぬ存ぜぬの態度を貫きましたが、マーガレットは多くの証言を集め、最近で言うNPO団体である”児童移民トラスト”を夫と共に立ち上げました。
1987年のことですが、夫婦は現在もそこで活動中です。
イギリスがこのようなとんでもないプロジェクトに手を染めた背景には日本の影響もあるそうなのです。
太平洋戦争で1942年2月に日本軍はイギリス軍を打ち破りシンガポールを陥落させ、多数のイギリス軍、オーストラリア軍の兵士を捕虜としました。
それ以来、1943年の12月まで、オーストラリアは日本軍の空襲を受け続けたのです。
その苦い経験から、英国政府も豪州政府も、ある結論に至ったのです。
それは領土を守るためには、イギリス人の人口を増やす必要があるというものでした。
豪州政府がこのプロジェクトの存在を認め、首相が謝罪したのは2009年11月でした。
英国政府がこのプロジェクトの存在を認め、首相が謝罪したのは2010年2月でした。
知っていても、しらを切り通そうとするのは日本政府だけでは無いのですね。
主役のエミリー・ワトソンは以前に”レッド・ドラゴン”で盲目の女性を演じていました。
45歳でイギリスを代表するような女優だそうですが、私も大好きです。
とくに、相手の目をじっとのぞき込むときの凛とした表情が素晴らしいと思います。
あの表情でのぞき込まれると、私ならすぐになんでもゲロしてしまいそうです。