底抜けに明るい菊芋の花
台風の余波で、里山の空は蒸し暑い雲に覆われているけれど、菊芋の黄色い花の明るさは、そこだけ日が差しているように輝く。
詳しいことは判らないが、菊芋は大戦末期、軍の奨励で耕地の隅や土手の傾斜地に植えられたようだ。
食糧増産の一環だったかもしれないし、今風に云えば芋からバイオ燃料を精製する計画があったのかもしれない。
芋は煮ても焼いても食べられたものではなかったが、唯一味噌漬だけは独特の歯ごたえがあって旨かったように思う。
しかし 一時の物珍しさ的なもので、常食には至らなかった。
やがて菊芋は人間から見放され、放置された雑草のように繁茂したが、誰も掘り出して食べることはしなかった 。
先年里山に猪が異常に増えたことがあり、菊芋が彼らの味覚に合致したのか、ブルトーザーのような鼻先で菊芋が茂る土手が掘り返されて、食べつくされた。鼻ブルトーザーの馬力はすごく、一抱えもある大石が無造作に転がり出ていた。
最近菊芋に血糖値を下げる特効があるとされて栽培する農家が出てきた。これも今は下火になった、もっと良い薬が開発されたのかもしれない。
我が家では猪が食べ残した菊芋が再生し、薬効を信じて手入れをしたので、途方もない大きな群落となって明るい花が今を盛りと咲き誇っている。