太陽をさえぎる林
お客は居なかった、狭いカウンターの内側で女将は一人お酒を飲んでいた。
「前を通ったら明かりがついていたので寄ってみました、もう店は、やってないと思っていました、みんな昔のままですね」。
「何度もやめようと思ったのだけれど、古い常連さんに励まされてね、でも櫛の歯が欠けるように皆さん居なくなってしまってさ、私も87だからねえ」としみじみと言った。
私は熱燗の杯を傾けながら、遠い日のことを思い出していた。
「先代会長が亡くなって、もう13年になります、会長とよくここにお邪魔して、おでんをいただきました、モツ煮もおいしかったなあ」
ひとしきり昔話で盛り上がった店を出た。
「本当によく来てくれた うれしいよ また訪ねておくれよ」女将の目も声も潤んでいた。
お酒のせいもあるけれど、頬にあたる風が心地よく、暖かい気分で次の会場まで歩いた。
お客は居なかった、狭いカウンターの内側で女将は一人お酒を飲んでいた。
「前を通ったら明かりがついていたので寄ってみました、もう店は、やってないと思っていました、みんな昔のままですね」。
「何度もやめようと思ったのだけれど、古い常連さんに励まされてね、でも櫛の歯が欠けるように皆さん居なくなってしまってさ、私も87だからねえ」としみじみと言った。
私は熱燗の杯を傾けながら、遠い日のことを思い出していた。
「先代会長が亡くなって、もう13年になります、会長とよくここにお邪魔して、おでんをいただきました、モツ煮もおいしかったなあ」
ひとしきり昔話で盛り上がった店を出た。
「本当によく来てくれた うれしいよ また訪ねておくれよ」女将の目も声も潤んでいた。
お酒のせいもあるけれど、頬にあたる風が心地よく、暖かい気分で次の会場まで歩いた。
夕刻 忘年会会場に向うため松本城外堀に沿って片端通りを歩いていた。
遮るものがなく真っ向から襲いかかる寒風にたまらず、吹きさらしを逃れて路地に曲がる、強い風が家並みに遮られ、風圧から解放された体は急に軽くなり、ほっとする暖かさが戻ってくる。
狭い路地の一角に、古い格子戸から遠慮がちに明りが洩れてくる小さな居酒屋があった。
路地に曲がった時から、もしかしたらと期待する気持ちはあったのだけれど、現実に洩れこぼれる灯りを目の当たりにすると時間の秩序が崩れてしまった。
建てつけの悪い格子戸をあける、当時の作りのままの店内は何一つ変わってはいない、かすかに灯油の燃える匂いがする石油ストーブもそのままである。
カウンターの女将がびっくりしたように顔をあげた。
クリスマスが近い
知り合いのブログに子供たちが野球に興じている様子が写真入で紹介されていた。
写真で見る限り、野球というよりチョコベースに近い遊びに思える。
チョコベースの球は布を芯に糸を巻いた糸毬、捕球は素手、バットは掌である。
塁は1塁 2塁 本塁の三角形 小さな空き地があればどこでもグランドになった。
チーム対戦ではなく打撃順番制で打者、走者以外は全員守備に就く。
守備より打つことがはるかに楽しかったから、打順が回ってくると喜び勇んで打席に立った。
しかしヒットを放つのは難しく簡単にアウト、肩を落とし、打席に未練を残して守備に戻った。
チョコベースは野球をヒントに子供たちが発明したスポーツだったように思う。
とにかく素手で競うチョコベースは楽しかった。
知り合いのブログに子供たちが野球に興じている様子が写真入で紹介されていた。
写真で見る限り、野球というよりチョコベースに近い遊びに思える。
チョコベースの球は布を芯に糸を巻いた糸毬、捕球は素手、バットは掌である。
塁は1塁 2塁 本塁の三角形 小さな空き地があればどこでもグランドになった。
チーム対戦ではなく打撃順番制で打者、走者以外は全員守備に就く。
守備より打つことがはるかに楽しかったから、打順が回ってくると喜び勇んで打席に立った。
しかしヒットを放つのは難しく簡単にアウト、肩を落とし、打席に未練を残して守備に戻った。
チョコベースは野球をヒントに子供たちが発明したスポーツだったように思う。
とにかく素手で競うチョコベースは楽しかった。