『ジャコウアゲハ観察記(その303)』 で取り上げたきょうだいたちは,それぞれに孵化し終え,これまで自分が入っていた殻を食べていきました。最後まで食べる個体,途中で食べるのをやめる個体,いろいろです。やめても,しばらくは殻のある場所から去るということはありませんでした。それは,この幼虫の習性と群集性を物語っているのでしょう。
さて,問題は二段の団子状態に重なった卵のことです。写真では,左側から二番目がそれです。先に下側の幼虫が出てきて,卵の殻のほとんどを食べ尽くしました。おもしろいというか,なるほどというか,そんなふうに改めて感じたのは上側の卵の支えだけは残している点です。落とさない律儀さ(?)のようなものが垣間見えます。
わたしは,てっきりそのままの状態におかれて,いずれ上の卵が孵化するとばかり思っていました。ところが。事情が大きくちがってきました。
しばらく時間が経ってから見てびっくり仰天! その卵の底部分がぽっかり穴が開いていたのです。見る角度を変えてようく観察してみました。すると,中が空っぽです。「これは食べられたんだ!」と思いました。しかし,その場面を目撃したわけではないので,100%そうだとも言い切れません。たとえそうであっても,これまでに同じような場面を撮影していますから,そう類推することはあながち間違ってもいないでしょう。
上写真中で卵の下にいる個体は,左側から移動してきたものです。全体の個体数は食べられた殻の個数と同じ5です。つまり,上側の殻から個体が出てきたとすれば,6個体になっていると考えられます。
そうした点を含めて総合的に状況を解釈すると,やはり共食いがあったとしか思えないのです。ジャコウアゲハの幼虫間では,共食いは時としてあります。残酷だという印象を持ちやすいのですが,それはわたしたちの主観にすぎません。ただ淡々と割り切って受けとめるだけ。さて,今回の真実はどうだったのでしょうか。