アメリカ人の日本の歴史や文化に対する知識はこの程度か。
低く見られたもんだな。
こんにちは、へちま細太郎です。
ぼくたちが玄関前で騒いでいると、中の方に女の人が立っているのがみえました。暗くて顔がはっきりわかりません。
ぼくはどきどきしました。あの女の人は、きっとおかあさんなんでしょう。
ぼくはつばさくんじゃないとバレるんじゃないかと、顔を伏せました。
「ほら豆太郎、おかあさんだよ」
おじいちゃんが言いましたが、ぼくはますますうつむきました。さっきからばくばくいっている心臓が口から飛び出しそうになりました。おかあさんが近寄ってきました。
「豆太郎…」
優しいやわらかな声でした。 ぼくが夢の中できいたあの声でした。細くて白い指がぼくのほおにふれました。
「細太郎」
突然、おかあさんが名前を呼びました。
「翔」
ぼくは顔をあげました。
「おかあさん」ぼくはじわっと涙があふれてきて、顔がおぼろにしかみえません。
「どうしてわかったの?」
「細太郎、おかあさんだからよ」
「おかあさん」
ぼくはほおに添えてあるおかあさんの手に、ぼくの手を添えました。
「おかあさんおかあさん」
が、その時です。
「細太郎、テニスのラケットを買いに行くわよ」
「えっ」
ぼくは涙をふいて目の前のおかあさんを見ようとしました。いっしゅん、おかあさんの顔がみえた気がしました。が、みるみるおとうさんの顔になっていきました。
「え」
周りを見回しました。すると、おじいちゃんとおばあちゃんの顔が、一緒に住んでいるおじいちゃんとおばあちゃんに変わりました。
「細太郎、ラケットを買いに行こう。テニスをしような」
「ええ~っ」
ぼくは、にぎっていた手をふりほどこうとしました。でも、ふりどけません。
「さ、行くぞ」
「いやだあ~っ」
ぼくは大声で叫びながら、目を覚ましました。 目を開けると、自分の部屋でした。
「え?え?」
夢?夢だったの?家出のことも、つばさ豆太郎君のことも…。
ぼくはがっかりしました。 みんなみんな夢だったなんて…。
おかあさん、ぼく、夢なんかじゃなくてほんとにおかあさんに会いたい。
ぼくは涙が出てきました。
なぜいつも夢なんだろう。
なぜ夢は、覚めると悲しいんだろう。ぼくが涙をふいているときでした。
「細太郎、起きろラケットを買いに行くぞ」
おとうさんがドアを開けて、意気揚々と入ってきました。
「いやだあ」
お願い、夢なら覚めて~(◎ ̄ロ ̄◎;) 。。。