( 2007年の記事 桑原が養護教諭時代の記事です)
<授業当日>
エピソード1
清掃の時間に、先生方と体育館そうじの3年生、そして、2年生の生徒が、会場準備。本当にありがたいです。そして、忙しい3年生の先生に無理を言って、BGMの担当もしていただきました。
エピソード2
最初に登場するはずの赤ちゃん人形が見当たらず、午前中に大騒ぎ。
当然あるものと思って箱に手を伸ばすと、「軽い・・・なぜ、いない・・・」
「赤ちゃん行方不明事件」となる。
探している時間はないと、他校の同じ人形を借用。
その後、赤ちゃん人形は、職員室内のロッカーで、すやすや寝ていたことが判明・・(笑) 昨年度使用して、そのあと、ロッカーに入れたのを忘れていました。
みなさま、お騒がせいたしました。
しかし、おかげさまで、二体の赤ちゃん人形を使って授業をすすめることができました。
「ゲストがいるよ」と、生徒に伝え、2年生の若い先生二人に、赤ちゃん人形を連れてきていただきました。
この赤ちゃん人形、ハンパな人形ではありません。だっこしてみると、その重さ、首のぐらぐら加減、やわらかさ。
出産を経験した方なら、生まれたてのわが子を、思い出さずにはいられない・・・そんな人形です。
生徒達にも、代表して二人の生徒に抱っこしもらいました。
どうかな?
抱っこするのが難しいみたいです。・・・抱っこしてみてどうかな?
「意外と重い!!」という感想でした。前に出てくれた生徒も、赤ちゃん人形を大事に大事に 抱いてくれました。これは、とっても嬉しかったです。
さて、生まれた時は、平均で身長50センチ、体重3キロの赤ちゃん。
「一番最初は、どれくらいの大きさだったのでしょう?」
ここで、2年生のT先生が、ボケをかまします。
質問したとたんに、なぜかポケットからピンポン球が・・。
「あっ。これくらいでしょうか?」
生徒からは、
「ちがうよ~。もっと小さいって!!」
「じゃ、どれくらい?」
「0.03ミリ!」「ちがう。それは、精子だろう!」
「あ、0.2ミリ!」
(うーーん。小学校での学びが生きていますね。町内の小学校の養護教諭に感謝)
「そうですね。0.2ミリ。数字で言うと実感わかないね。たとえで言うと、針の先でちょんとついたくらいの小さな生命体。それが、あなたの始まりの大きさ」
「どうやって、こんなに大きくなったの?」
「お母さんの愛!」 (すばらしい!!!) 「へその緒!」
「へその緒がどうするのかな?」
「お母さんからの栄養をへその緒でもらっている」・・知らない子もいたみたいです。
「へその緒。そうですね。この管に栄養がとおってそれによって赤ちゃんは成長します。・・・・では、質問!」
「このへその緒は、だれのもの? お母さんが作ったの? 赤ちゃんが作ったの?」
「えぇぇ?」 考えたこともない質問に、生徒も参観しているお母さん方も困惑気味。
「これは、難しいから、2年生の先生方の意見を聞いてみましょう」
2年生の先生方が、それぞれの意見を、生徒に伝えます。
教師A 「赤ちゃんは、お母さんの愛情で育っているんです。ガソリンスタンドでガソリンもらうみたいに、お母さんが栄養をどうぞってあげるんだよ」
教師B「ちがいますよ!赤ちゃんの力はすごいんです。自分で、栄養をもらうために、へその緒を伸ばして掃除機みたいに、栄養を吸い込みに行くんです」
他の先生もそれぞれの意見をもって、AかBの意見に分かれます。
このときの、先生方の絶妙な演技が、体育館を沸かせました。
さぁ、生徒が考える時間です。班ごとにどっちが正しいのかを話し合い、AかBのカードをあげて答えます。
正解は、「赤ちゃんのもの」
あの小さな針の先ほどの受精卵は、子宮の壁に根を張るがごとく、着床をします。
そして、細胞分裂を繰り返しながら、自ら、胎盤もへその緒も作るのです。そして、栄養を自らの力で取り入れているのです。
これは、まるで、あの小さな受精卵に「生まれたい」という意志があるようにすら思えます。
受精しても、着床できないで死んでしまう受精卵。子宮の中で育ちきれずに成長の途中で死んでしまう胎児もいます。そんな中で、こうやって生まれてきたみなさんは、「生きる意志」があったのでしょう。
次にもっと過去にさかのぼります。
「あなたという人間になりえた卵子(卵子となる細胞)は、いつから存在していたのでしょう?」
これも、学年の先生に登場していただき、もっともらしい理由をつけて、3つの意見を出していただきました。
この学年の先生のチームワークバッチリで、ぼけあり、つっこみあり。すばらしい演技力。
「おれは、学年主任だから信じろよ」「先生は、理科の先生よ。信じなさい」「国語の教師はうそはいわん」「
私は、体育教師として、○○先生の意見を支持するよ」「ぼくは、やはり学年主任について行く!」
それに反応する生徒達の姿にも、先生への信頼を感じられました。
3つの意見と理由を聞いて、再び生徒達は、シンキングタイム。
そして、自分のグループの意見をカードで示します。
そして、正解の提示
「お母さんが胎児だった頃から、あなたたちのもとになった卵子細胞は存在していました」
そして、この授業で一番伝えたかったことを、伝えました。
あなたのお母さんがまだ胎児だった時、すでに、卵巣があり、その中に,ちいさなちいさなあなたがすでに存在していました。
まだ、卵子になりきっていない卵子のもとになる小さな細胞がぎっしり。そのなかの一つがあなたです。
そのころは約600万個の卵子のもとが存在します。でも,12才になる頃は,60万個までへります。
この中のひとつぶが,あなたです。この卵子が全部いのちになったら,何万人兄弟になってしまうでしょうか。ぎっしり詰まった卵子のほんのひとにぎりしかいのちになれなせん。
さて、卵子がいのちになるためには、もうひとつ、いのちのもとが必要です。それは、精子です。お父さんの精子とお母さんの卵子がひとつになっていのちとなるのです。
お父さんがお母さんのからだの中に一度に送り込む精子の数は、3億といわれています。600万個のひとつと3億のひとつが、奇跡のような確率で合わさって、
今、あなたがここにいます。他の卵子・他の精子が結び合っていたら、あなたはこの世に存在しません。
遺伝子工学の本には、「一組の両親から、自分というものが生まれる確率は70兆分の1」と書いてありました。
あなたがあなたとして存在する確率は、70兆分の1。ちがう精子が受精していたら、あなたという人間はいません。
よく似た人間かもしれませんが、あなたという魂をもった人間でないのです。
あなたもあなたの隣にいる友達も、奇跡の存在。奇跡と奇跡が隣同士にすわっているのです。
人間は、生まれてくる時に、手を握って生まれてきます。
片手にはミッション(存在意義)を握っている。それは、・・何をするためにこの世に生まれてきたのかということ。
他方の手には、「100%の可能性を握っています。
でも、それらは、生まれた瞬間にその人の中奥深いところに、画されてしまいす。
私たちが、いろいろな学習をし、楽しいことも、つらいことも体験するのは、この二つを探すためです。
みんなはもうすぐ3年生。
進路を決める大切な時期がやってきます。そのときに、自分が生きている奇跡と隠されたミッションと可能性を信じていて欲しいと思っています。
【学年主任からのメッセージ】
学年主任の先生からは、こんなメッセージが生徒達に伝えられました。
「思春期という時期を生きているみんなには、すでに、次のいのちの準備が始まっています。そう、いのちのバトンを持っているのです。
そのいのちはずっと過去からつながってきています。
両親の両親。そのまた両親の両親。・・・そうやってずっとつながってきた。
それをさかのぼると数え切れないくらい先祖の数になります。
その中の一人でも、途中でこのバトンを落としてしまっていたら・・・。あなたが今、ここには存在しなかったことでしょう。
そう思うと、今自分がどれだけのいのちを受けついでここにいるのか。
すごい奇跡であると思います。
これから、3年生になっていくみんな。ぜひ、このことを大切にして、自分のミッション、そして可能性を信じて、生きていって欲しいと思います。」
生徒達は、それまでの盛り上がりとは打って変わって、シンと静まり返って聴いてくれました。
元気な2年生。いろんなことに悩み、あるときは自分を責め、あるときは、自分の可能性を見つけ、笑顔を見せる。
そんなひとつひとつの出来事を大切にして、自分の人生を生きていって欲しいです。
授業の後の、学校医の先生のお話が、医師という立場からの貴重なメッセージもいただきました。ほんとうにお忙しい中を、来てくださったことに感謝です。
今日は、先生方の素晴らしさ、温かさ、生徒の笑顔、真剣なまなざしにたくさん触れることができたすばらしい日となりました。
ありがとうございます。感謝。感謝です。
※生徒の感想は、後日UPします。
じ~~んと来ました。
感想も楽しみです!
ミッションの話は、本当に何度でもしてあげたいと思っています。
また、のぞきに来てね