池上彰さんの本は面白くて分かりやすい。NHK時代に抑えられてきた思いが、ここにきて一気に爆発したような感がします。
「そうだったのかアメリカ」集英社文庫
1972年6月民主党本部に盗聴器が仕掛けられる事件が起きました。ウォーターゲート事件です。時のニクソン大統領は、「ワシントンポスト」の二人の記者の勇気ある追求の末1974年辞任に追い込まれます。
これからさかのぼる1961年。キューバの亡命者たちが、キューバのビックス湾に進攻上陸しますが、カストロ軍に敗れます。実はアメリカに楯突くカストロを負かそうとCIAが策略したことでした。
「ニューヨークタイムス」は事前にこのことを察知していたにもかかわらず、CIAの介入を伏せて小さな記事の扱いとしました。前もって報道されていたら今回のような失敗はなかった。このときの禍根がウォーターゲート事件に生かされているのです。
1971年、ニューヨークタイムスは、国防総省がベトナム戦争へのアメリカの関与をまとめた文書、歴代の政権が国民を欺いていたということが分かる文書の掲載を始めましたが、ニクソン政権の力で中断。しかし「ワシントンポスト」も参加して報道機関と政府の戦いとなり、裁判ではワシントンポストが勝利することになりました。
口やかましい報道機関が権力を監視し、報道することによって、アメリカの自由主義体制は維持できる。自由主義体制があってこそアメリカの安全保障は成り立つ、と言う論理でした。
結果、国民の大多数の意思で、アメリカ軍はベトナムから撤退することとなります。権力を恐れない報道機関がある、これがアメリカ社会の強みなのです。
もっとも、最近はメディアの巨大化でその伝統は危機にさらされていると警告してみえますが・・・
私が思うに、最近の日本の報道機関には歯がゆさを感じます。悪いことは悪いという根本の判断がぼやけてしまっているような、そんな気がしてなりません。
池上さんは今回の民主党代表選を、どう見ているのでしょうか。