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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【ターナー】時の移ろいと歴史の変遷への思いを投影《戦艦テメレール号》 ~思いを表現するテクニック~

2018年04月18日 | 批評・思想
 <かつてトラファルガーの戦いで、ネルソン提督が乗るヴィクトリー号を支えて大活躍したテメレール(フランス語で勇猛果敢の意)も、今や老朽船と化し、1838年9月6日、テムズ川沿いのロザハイスにあるに向けて曳かれていった。>
 <同時代の人びとは、沈みゆく夕陽に彼が託した意味合いを直ちに読み取った。ある批評家は、「壮麗なる水平線は、テメレール号の輝きが栄光のうちに没していくことを詩的に暗示している」と評している。>
 <ターナーは展覧会のカタログに、トマス・キャンベル(1777-1844)の詩をベースにした次の2行を載せた。〈戦いにも、吹く風にも立ち向かってきた旗も/もはやその姿をととめず〉。戦艦を曳く小さな蒸気船のマストに掲げられた白い旗は、あたかも降伏のしるしを表しているかのようである。>

●色彩のコントラストで時代の変化を表現
 <日没の空の鮮やかな茜色と、迫りくる宵闇の冷たい青色の対比は、白と金色に塗られた帆船の優美な姿と、ずんぐりとした蒸気船の黒ぐろとしたシルエットの対比とも呼応している。ターナーはこうしたコントラストを際立たせるため、現実にはもはやマストもなく、すっかり古びていたテメレール号を、往時の雄姿で描いた。また、本来は西に向けて進んでいるはずのテメレール号の後方に沈む夕陽を描き込むことで、効果的な構図を作り出している。>

□荒川裕子『もっと知りたいターナー 生涯と作品』(東京美術、2017)のpp.56-57「時の移ろいと歴史の変遷への思いを投影《戦艦テメレール号》」から一部引用

 【参考】
【ターナー】の松と『坊っちゃん』

 J・M・W・ターナー《解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号》1839年 油彩、カンヴァス ナショナル・ギャラリー蔵
 
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【ターナー】の松と『坊っちゃん』

2018年04月17日 | 批評・思想
 <船頭はゆっくりゆっくり漕こいでいるが熟練は恐しいもので、見返えると、浜が小さく見えるくらいもう出ている。高柏寺の五重の塔が森の上へ抜け出して針のように尖(とん)がってる。向側(むこうがわ)を見ると青嶋が浮いている。これは人の住まない島だそうだ。よく見ると石と松ばかりだ。なるほど石と松ばかりじゃ住めっこない。赤シャツは、しきりに眺望していい景色だと云ってる。野だは絶景でげすと云ってる。絶景だか何だか知らないが、いい心持ちには相違ない。ひろびろとした海の上で、潮風に吹かれるのは薬だと思った。いやに腹が減る。「あの松を見たまえ、幹が真直(まっすぐ)で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙っていた。舟は島を右に見てぐるりと廻った。波は全くない。これで海だとは受け取りにくいほど平だ。赤シャツのお陰ではなはだ愉快だ。出来る事なら、あの島の上へ上がってみたいと思ったから、あの岩のある所へは舟はつけられないんですかと聞いてみた。つけられん事もないですが、釣をするには、あまり岸じゃいけないですと赤シャツが異議を申し立てた。おれは黙ってた。すると野だがどうです教頭、これからあの島をターナー島と名づけようじゃありませんかと余計な発議(ほつぎ)をした。赤シャツはそいつは面白い、吾々はこれからそう云おうと賛成した。この吾々のうちにおれもはいってるなら迷惑だ。おれには青嶋でたくさんだ。あの岩の上に、どうです、ラフハエルのマドンナを置いちゃ。いい画が出来ますぜと野だが云うと、マドンナの話はよそうじゃないかホホホホと赤シャツが気味の悪るい笑い方をした。なに誰も居ないから大丈夫ですと、ちょっとおれの方を見たが、わざと顔をそむけてにやにやと笑った。おれは何だかやな心持ちがした。マドンナだろうが、小旦那だろうが、おれの関係した事でないから、勝手に立たせるがよかろうが、人に分らない事を言って分らないから聞いたって構やしませんてえような風をする。下品な仕草だ。これで当人は私も江戸っ子でげすなどと云ってる。マドンナと云うのは何でも赤シャツの馴染の芸者の渾名(あだな)か何かに違いないと思った。なじみの芸者を無人島の松の木の下に立たして眺めていれば世話はない。それを野だが油絵にでもかいて展覧会へ出したらよかろう。>

□夏目漱石『坊っちゃん』(『夏目漱石全集2』(ちくま文庫、1987)の「五」から引用

 J・M・W・ターナー《金枝》1834年 油彩・カンヴァス テート美術館蔵 (c)Tate
 

 J・M・W・ターナー《チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア》1832年発表 油彩、カンヴァス テート美術館蔵 (c)Tate
 


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【知覚】の現象学 ポール・セザンヌ「風景」、1879年頃 ~ビュールレ・コレクション~

2018年03月11日 | 批評・思想
 <現象学はバルザックの作品、プルーストの作品、ヴァレリーの作品、あるいはセザンヌの作品とおなじように、不断の辛苦である--おなじ種類の注意と驚異をもって、おなじような意識の厳密さをもって、世界や歴史の意味の生まれ出づる状態において捉えようとするおなじ意志によって。こうした関係のもとで、現象学は現代思想の努力と合流するのである。>

□モーリス・メルロー=ポンティ(竹内芳郎、小木貞孝訳)『知覚の現象学』(みすず書房、1967)の「序文」の末尾を引用
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【本】いかに“米中戦争”を避けるか ~歴史から国際政治を類推する~

2018年03月09日 | 批評・思想
★グレアム・アリソン( 船橋洋一・序文、藤原朝子・訳)『米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』(ダイヤモンド社 2,000円)

 (1)この数年、国際政治の関係者の間で大きな関心を集めている疑問が一つある。それは、「米国と中国は本当に衝突するのか」というものだ。
 欧州ではロシアの脅威が増しているが、東アジアでは中長期的に米中衝突の可能性が取り沙汰されて久しい。その問題を正面から扱った決定版と言えるのが本書だ。
 著者は、米ハーバード大学の名物教授で、1962年の「キューバ危機」に新しい分析法で迫ったことで名高い国際政治学者のグレアム・アリソンである。最近は、北朝鮮の核ミサイル問題を契機として、米中戦争が始まる可能性について学問的に分析している。

 (2)本書の全体的な特徴としては、次の3点が挙げられる。
  (a)本書の「システム」という考え方だ。既存の大国と新興大国が紛争を起こす危険性を古代ギリシャの歴史家の名前を取って「ツキュディデスの罠」とする。
  主に欧州における16の歴史的なケースを振り返りながら、過去にそれが12回も大戦争になったと論じる。ただし、関心はあくまで国際政治の大枠、つまりシステムのレベルでの歪み(罠)が為政者の判断を誤らせ、望まない大戦争に突き進むとする点にある。私たちは、一般的に国際政治を「国家」という単位で考えがちだが、罠という見方は客観的で参考になる。

  (b)そうした客観的な分析を使って「応用歴史学」なるものを提唱することだ。人類の歴史に法則のようなものがあるかどうか実際は疑わしいが、アリソンは学問的な態度で、その難事業に挑戦する。賛成するかどうかは別として、この姿勢は知的に新鮮な感覚を読者に与えてくれよう。

  (c)将来起こり得る戦争を見越した政策提言書となっている点だ。「罠」という概念を使って、米中戦争の可能性が存在することを論じつつ、実際は「いかに米中戦争を避けるか」が提唱される。それ故に、メッセージを発している相手は、主に米国民や政府の外交・軍事関係者となり、極めて政治性が高い。日本の外交関係者にも見逃せないヒントが満載だ。

 (3)本書には、批判がないわけではない。ツキュディデスはアリソンの言う「罠」をそもそも想定して論じていない、核兵器の抑止的役割を過小評価している、中国語が読めないアリソンは故リー・クワンユー(シンガポールの初代首相)の分析に頼り過ぎとの指摘もある。
 しかし、歴史を振り返りながら、現実の国際政治を考えるという意味では、近年書かれた本の中では読みやすく、興味深い。世界史や今後のアジアの運命を考える上で、必読書と言えるだろう。

□奥山真司(IGIJ(国際地政学研究所)上席研究員)「いかに“米中戦争”を避けるか/歴史から国際政治を類推する  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2018年3月10日号)
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 【参考】
【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~
【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【本】いかに“米中戦争”を避けるか ~歴史から国際政治を類推する~

2018年03月09日 | 批評・思想
★グレアム・アリソン( 船橋洋一・序文、藤原朝子・訳)『米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』(ダイヤモンド社 2,000円)

 (1)この数年、国際政治の関係者の間で大きな関心を集めている疑問が一つある。それは、「米国と中国は本当に衝突するのか」というものだ。
 欧州ではロシアの脅威が増しているが、東アジアでは中長期的に米中衝突の可能性が取り沙汰されて久しい。その問題を正面から扱った決定版と言えるのが本書だ。
 著者は、米ハーバード大学の名物教授で、1962年の「キューバ危機」に新しい分析法で迫ったことで名高い国際政治学者のグレアム・アリソンである。最近は、北朝鮮の核ミサイル問題を契機として、米中戦争が始まる可能性について学問的に分析している。

 (2)本書の全体的な特徴としては、次の3点が挙げられる。
  (a)本書の「システム」という考え方だ。既存の大国と新興大国が紛争を起こす危険性を古代ギリシャの歴史家の名前を取って「ツキュディデスの罠」とする。
  主に欧州における16の歴史的なケースを振り返りながら、過去にそれが12回も大戦争になったと論じる。ただし、関心はあくまで国際政治の大枠、つまりシステムのレベルでの歪み(罠)が為政者の判断を誤らせ、望まない大戦争に突き進むとする点にある。私たちは、一般的に国際政治を「国家」という単位で考えがちだが、罠という見方は客観的で参考になる。

  (b)そうした客観的な分析を使って「応用歴史学」なるものを提唱することだ。人類の歴史に法則のようなものがあるかどうか実際は疑わしいが、アリソンは学問的な態度で、その難事業に挑戦する。賛成するかどうかは別として、この姿勢は知的に新鮮な感覚を読者に与えてくれよう。

  (c)将来起こり得る戦争を見越した政策提言書となっている点だ。「罠」という概念を使って、米中戦争の可能性が存在することを論じつつ、実際は「いかに米中戦争を避けるか」が提唱される。それ故に、メッセージを発している相手は、主に米国民や政府の外交・軍事関係者となり、極めて政治性が高い。日本の外交関係者にも見逃せないヒントが満載だ。

 (3)本書には、批判がないわけではない。ツキュディデスはアリソンの言う「罠」をそもそも想定して論じていない、核兵器の抑止的役割を過小評価している、中国語が読めないアリソンは故リー・クワンユー(シンガポールの初代首相)の分析に頼り過ぎとの指摘もある。
 しかし、歴史を振り返りながら、現実の国際政治を考えるという意味では、近年書かれた本の中では読みやすく、興味深い。世界史や今後のアジアの運命を考える上で、必読書と言えるだろう。

□奥山真司(IGIJ(国際地政学研究所)上席研究員)「いかに“米中戦争”を避けるか/歴史から国際政治を類推する  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2018年3月10日号)
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 【参考】
【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~
【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
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【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
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【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
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【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
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【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~

2018年03月04日 | 批評・思想
★つげ義春『つげ義春とぼく』(新潮文庫、1992)

 <『つげ義春とぼく』も旅の本。つげさんの漫画も大好きですが、文章も誰も真似ができないほど面白い。起こる出来事をありのままに受け入れて、文章にする。これは簡単なようで実はすごく難しいことです。印象的なのは、見た夢のことをそのまま綴った「夢日記」。夢の中でつげさんがテレビを見ていると「コマツ岬」での生活が紹介される。夢のなかの架空の岬なのに「瀬戸内のような雰囲気」など描写にリアリティがあるのは、感覚を言葉で飾るのではなく、そのまま言葉に移そうとするからだと思う。描写について考えるときに、つげさんの文章が僕にとってひとつの理想形です。>

□滝口悠生「つげ義春は文章も面白い ~わが人生最高の10冊~」(「週刊現代」2018年3月10日号)から一部引用
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【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
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【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
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【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
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【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
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【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~

2018年02月20日 | 批評・思想
★ジョン・K・ガルブレイス(鈴木哲太郎・訳)『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』(ダイヤモンド社、1991/新版、2008)

 株式市場は年明け以降も活況を呈し、1月23日には、終値で2万4000円を回復した。これは1991年11月以来の水準となる。同年に出版されたのが本書だ。無論、株価上昇がいつもバブルであるわけではない。企業業績の今後に見合った株高とバブル現象としての株高の差はどこにあるのか。
 ヒントは、副題の「暴落の前に天才がいる」にある。2017年中に一時25倍もの急上昇を遂げたビットコイン。その暴落の前には数知れない「天才的なトレーダー」が現れ、急速な価格上昇を「説明する」新理論が登場した。日本株がその頂点を迎えようとするときに現れるのはどんな天才、どんな新理論なのか。バブルの懸念に正しく対処するには歴史的事例から学び直す必要がある。

□飯田泰之(明治大学政治経済学部准教授)「バブルを描く古典的名著 ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月24日号)
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 【参考】
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
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【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
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【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~

2018年02月19日 | 批評・思想
★塩野七生『ギリシア人の物語3 新しき力』(新潮社 3,200円)

 (1)今、塩野七生氏と小泉進次郎衆議院議員の対談(「月刊文藝春秋2月号」に掲載)が評判になっている。
 塩野氏/「長編歴史エッセイはこの本が最後」
 小泉氏/「年末年始はこの本にどっぷり浸かりました」

 (2)本書で描かれるのは、アレクサンドロス大王(紀元前356~同323年)だ。20歳でマケドニアの王となり、東方に遠征してペルシャ帝国を打ち破った。エジプトからインダス川までの巨大版図を打ち立てたが、33歳を目前にして病に倒れた。死後に分解した王国では、ギリシャとオリエントが融合したヘレニズム文化の花が咲いた。
 幾多の逸話の中でも、「ゴルディオンの結び目」は、その真骨頂だ。ペルシャの街、ゴルディオンには、「この結び目をほどいた者はアジアの王になる」と伝えられるぐるぐる巻きのひもがあった。アレクサンドロスは、長剣を抜き、結び目を一刀両断。
 ここから「複雑な問題の解決には、断固とした意志と果断な対処が必要」という教訓を導き出すのが塩野七生流だ。そんな資質を持つリーダーは、めったに居ない。ただし、現世で見当たらなくとも、歴史を繙けば
事例が豊富だ。

 (3)塩野作品は、歴史書ではない。脚注はなく、著者の独断も目立つ。「民衆が描かれていない」という批判もある。学者が見たら、あらが目立つだろう。塩野氏は、まるで惚れた男ののろけ話のようにカエサルやアレクサンドロスの生涯を語る。長年の読者には、それが魅力だ。
 かつて、司馬遼太郎が戦国時代や幕末を身近なものにしてくれたように、塩野作品は地中海世界の魅力的な男たちを紹介してくれた。アレクサンドロス大王の短い生涯も、本書によって多くの日本人が知るところとなるだろう。

 (4)ところで、冒頭で紹介した「塩野・小泉対談」は、年長者が見どころのある若者に助言し、若き政治家はそれを拝聴するという今どき稀有な対話となっている。
 歴史とは、ただ史実を正確に知ればいいというものではない。誰かと共に語り合うことで、歴史はその価値を増す。世代を超えた歴史談議や人物月旦(げったん)は、人生を豊かなものにしてくれる。塩野作品は、その格好の入り口となるはずだ。

□吉崎達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト)「充電後の執筆再開を熱望する/塩野七生、最後の歴史大長編  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月24日号)
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 【参考】
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【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~

2018年02月17日 | 批評・思想
★鯨岡仁『日銀と政治 暗闘の20年史』(朝日新聞出版 2,000円)

 (1)経済学の理論モデルでは、専門家集団を率いる中央銀行の総裁が、政治的な雑音のない静かな環境の中で、メリットとデメリットを比較考量しながら、不確実な将来をにらんで金融政策の運営を行う。
 だが、現実の世界ではどうなっているか。
 本書は、1998年の日本銀行法の改正から、異次元緩和までの20年に及ぶ金融政策をめぐる政治との攻防を、第一線の経済記者が綿密な取材を元に描いた秀逸のドキュメントだ。当初、少数派だったリフレ派が政界で影響力を広げ、アベノミクスとして採用されるまでの経緯が詳しく描かれる。
 目玉は、2013年の正副総裁の選定過程を明らかにしたことだ。18年の正副総裁人事でも、麻生太郎財務大臣と共に本田悦郎スイス大使が鍵を握るのか注目される。

 (2)法改正で日銀に与えられた独立性は、選挙に直面する政治家からの金融緩和圧力を遮断するために導入された仕組みだ。
 しかし、経済低迷が長引いたこともあり、法改正後、独立性はむしろ損なわれていく。自由民主党が政権を奪還した12年末の衆議院議員選挙では、金融政策が争点とされ、先進国では異例の展開となった。
 ただ、野党時代に日銀を擁護した民主党も、政権を獲得すると日銀への圧力を強めたのは事実であり、金融政策の政治利用はアベノミクスに限った話ではない。
 こうした政治介入は、90年代以降の政治改革や行政改革によって、首相官邸に大きな権限が集中するようになったことも影響しているのだろう。かつては専門家に任せ、人事も財務省に一任されていたが、任命権をバックに政権が金融政策を政治活用するというのが今後も一般的になるのかもしれない。正副総裁3人の任期が同時期に集中するという制度上の欠陥も、こうした傾向を助長する。

 (3)中央銀行の独立性はインフレ抑制のためのものであって、デフレ脱却には弊害が大きいという反論もあるかもしれない。ただ、より本質的な意味合いは、財政赤字の中央銀行ファイナンスを回避することにある。終章で論じられる通り、財政と金融が統合に向かいつつあることを強い懸念材料である。
 改正日銀法のスタート時に、インフレ時代の中央銀行像を抱えた速水優氏が総裁に就任したことが、政治との大きな亀裂をもたらした。その後、日銀は修復を試みたが、失敗。それが独立性喪失の遠因にもなった。日銀が手にした独立性は、あくまで大蔵省解体という、言わば棚ボタによるものに過ぎなかった。真の独立性は、将来、異次元緩和の出口の際に、政治との闘争の中で培われていくのかもしれない。

□河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長)「日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月17日号)
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【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
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【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~

2018年02月13日 | 批評・思想
★高田創・編著『シナリオ分析--異次元緩和脱出 出口戦略のシミュレーション』(日本経済新聞出版社 2,000円)

 (1)今春の3~4月にかけて、日本銀行の現執行部が任期を迎える。アベノミクスの第一の矢として大きな成果を挙げてきた「大胆な金融緩和政策」は、まだ2%のインフレ目標を達成せず不十分だとする向きがある一方で、将来の出口戦略がどうなるかを注視する向きもある。
 こうした中で、本書は、日銀には出口を困難にする“三つの不都合な真実”があるとし、永遠の超金融緩和を余儀なくされることをリスクとする。金融緩和を長期化すれば、出口における日銀の追加的なコスト負担も避けられない、ということを詳しく解説している。

 (2)三つの不都合な真実とは、以下の通り。
  (a)日銀の出口は米国が金融緩和に転じるまでの限られた猶予期間しかないとする。
  (b)日銀は金利ターゲットに転換したことで日銀自身による追加緩和は困難であり、緩和の効果は米国経済次第であるとする。
  (c)マイナス金利とイールドカーブコントロール(長短金利操作)が市場との対話を困難にしており、金融システムに対して副作用が大きいとしている。

 (3)長く債券市場に携わってきた編著者は、日銀を中心にしつつも政府と金融機関も含めた三位一体の構造の視点から出口戦略を展望する。日銀のバランスシートの毀損や民間金融機関への影響などの分析を通じて、出口戦略に関するさまざまな体系や枠組みを提示する。
 また、1990年のバブル崩壊から四半世紀以上もデフレ経済が長期化したことで、日本人の行動様式に適合的期待形成が定着してしまったという。それまでの通常の経済では当たり前だった積極的な「肉食系の行動原理」から、慎重な「草食系の行動原理」に陥ってしまったとする。

 (4)アベノミクスによって極端な円高と資産デフレは是正されたが、5年程度で長年蓄積されたデフレ均衡を払拭することは困難だ・・・・と編著は認識する。おそらく、この点は、共感する有識者も多いであろう。
 しかし、本書のように意見が分かれるかもしれない。
  ①政府と日銀と金融機関が一体となって出口に向かうべきと考えるか。
  ②むしろ政府と日銀が一体となって金融緩和を強化すべきと考えるか。
  ③現状維持を続けるべきか。

 (5)一方で本書は、日銀の黒田東彦総裁の任期はこの4月8日までとする。現状では、黒田総裁続投の観測あるいは期待が高まっているが、新総裁は出口戦略を含む総括的検証を再び行う必要があると提言する。個人的には、実施するのなら、出口観測の高まりによる円高で金融緩和効果を削がないように慎重に行ってほしいと考える。

□永濱利廣(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)「最悪の選択は現状維持と分析/黒田日銀の5年間を問う好著  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年2月3日号)
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 【参考】
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~

2018年02月07日 | 批評・思想
 ①トム・ウェインライト(千葉敏生・訳)『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』(みすず書房 2,800円)
 ②ジェフリー・ミラー (片岡宏仁・訳)『消費資本主義! 見せびらかしの進化心理学 』(勁草書房 3,500円)
 ③ロバート・B.チャルディーニ (安藤清志・監訳、曽根寛樹・訳)『PRE-SUASION 影響力と説得のための革命的瞬間』(誠信書房 2,700円)

 (1)①では、英「エコノミスト」誌の記者が、中南米の麻薬ビジネスの実態をレポートする。単なる潜入ルポではなく、実は麻薬カルテルが、私たちが知るグローバルビジネスと同じ手法を使うと指摘し、麻薬撲滅には経済学的な対策が必要だと訴える。
 〈例〉コカ畑掃討作戦で供給量が減ってもコカイン相場が上がらないのは、カルテルがウォルマート並みのサプライチェーンを掌握し「買い手独占」状態を敷いているから。多大なコストを負っているコカ畑農家に対して、他の作物への補助金支給というアメこそ掃討作戦というムチに勝る。その他にも章見出しは、人材問題、広告、フランチャイジングなどと経済からの視点と説得力に引き込まれまれる。

 (2)経済学者S・ウェブレンによる「見せびらかし消費」を進化心理学的な視点から考察したのが②。オスの孔雀が美しい羽の維持にコストを掛けるのは質実剛健のシグナルとなるから。そんな「コスト高シグナリング」は人間にもある。身体的なものを強調する「物理的表現」と教養や資質を強調する「行動型の表現」だ。最近は物質的なものの所有より精神的資質を強調するのがトレンドとか。最近の売れ筋ビジネス書のタイトルがいろいろ連想され興味深く、賢い消費生活を考えるヒントがある。

 (3)『影響力の武器』の社会心理学者による33年ぶりの単著が③。プリ・スエージョンPRE-SUASIONとは「下準備」の意。前著は、人に影響を与えるための手法の分析だったが、本書は影響力が強い達人たちが、同意を得るためにどのような下準備を、「いつ」行っているかを詳細に考察する。逆に言えば私たちはどのような力に影響されて同意するのかを知らされる。『消費資本主義!』ではアピールと同意の生物学的な背景を、本書では社会的な主体としての背景を学ぶという読み方もできる。

□宮野源太郎(丸善・ジュンク堂書店営業本部)「麻薬撲滅のための経済学思考/アピールと説得の理論と方法 ~目利きのお気に入り~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月10日号)
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 【参考】
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
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【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
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【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
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【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【本】滋味あふれる知恵の書 ~『眠られぬ夜のために』~

2018年02月05日 | 批評・思想
 日記の体裁をとった断章の集成。全編滋味があふれ、知恵の書と呼ぶべきか。
 例えば、今日、2月5日。

 <こころみに、しばらく〈批判すること〉をすっかりやめてみなさい。そして、いたるところでの力のかぎり、すべて善きものをはげまし、かつ支持するようにし、卑俗なものや悪いものを下らぬものかつほろび去るものとして無視しなさい。そうすれば、前よりも満足な生活に入ることができよう。実にしばしば、まさに〈この点に〉一切がかかっているのである。>

 【注】〈〉内は本書では傍点。

□ヒルティ(草間平作、大和邦太郎・訳)『眠られぬ夜のために 第1部』(岩波文庫、1973改訳第1刷)
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 【参考】
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
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【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
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【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
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『【本】『世界をまどわせた地図』
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【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
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【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~

2018年02月04日 | 批評・思想
★伊藤敏樹『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』(講談社、2004)

 西洋史と中国史を分けて学んだ人にはなじみが薄い西アジア、中東、ロシア、東欧で繰り広げられた13世紀の阿鼻叫喚の“大戦争”の話だ。
 本書には、イスラム諸国のスルタン、王、武将、キリスト教諸国の教皇、王、十字軍、はるかモンゴル高原から世界制覇をもくろみ西進するモンゴル帝国の王や武将たちが登場する。
 今でもロシアには「タタールのくびき」という言葉がある。モンゴル人が支配した約200年間を指す。本書は、13世紀、1206年のチンギス=ハンの大汗即位から91年のマムルーク朝による中東でのキリスト教最後の拠点、アクレの陥落までを描く。かつてモンゴルは、ユーラシア大陸を制覇した。
 世界の“三大勢力”が覇を競った歴史を学んでおきたい。

□庄司太郎(元アラビア石油取締役、オイルアナリスト)「モンゴルのユーラシア制覇 ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月10日号)
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【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~

2018年01月28日 | 批評・思想
★堺屋太一『歴史からの発想 停滞と拘束からいかに脱するか』(日本経済新聞出版社、1983/日経ビジネス人文庫、2004)

 戦後の日本は、応仁の乱以降と類似点が多いという。技術も人口も違う二つの時代であるにもかかわらず、歴史が繰り返される理由は、人間の本性がそれほど変わらないからだ。旧体制が崩壊した戦国時代は、海外から伝来した技術を取り入れることで技術的にも経済的にも急成長を果たした。
 1983年の旧版ではその後の日本に停滞がやってくることを示唆していたが、2004年の新版で振り返ると、日本はその通りの歴史を繰り返している。
 今読み返すと、さらにその先の現在までの流れも当てはまっているところが興味深い。本書の中盤で展開される「人間には作物と雑草の二通りがある」という理論は、この先の日本を誰がどう変えていくかについての考察として捉えると示唆に富む。

□鈴木貴博(百年コンサルティング代表)「歴史はどう繰り返すのか ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年2月3日号)
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【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【本】大学が舞台の米中スパイ合戦、聖域の実態をえぐる告発の書 ~『盗まれる大学』~

2018年01月25日 | 批評・思想
★ダニエル・ゴールデン(花田知恵・訳)『盗まれる大学 中国スパイと機密漏洩』(原書房 2,800円)

 (1)留学が人生の転機になる場合は多い。家族や友人と別れ、不慣れな生活環境と格闘しながら外国語での勉強に打ち込む日々。その結果得たものは、かつては想像もつかなかった知識や経験だったり、新たな職業だったりする。

 (2)大学が学生に貴重な体験を提供できるのは、共同と公開を基調とした研究文化を持っているからだ。だが、国際政治の現実は、大学が“聖域”であることを許さない。それを米ピュリツァー賞受賞記者が活写したのが、本書である。
 〈例〉米国の私立大学で超一流とされるデューク大学に電子工学の大学院生として留学した劉若鵬は、戦闘機やドローンのステルス化にも役立つ研究成果を巧妙に中国に流した。それだけではなく、彼はベンチャー企業の創業者として深?で大成功を収めている。
 中国国家安全部直属で「スパイ養成学校」ともいわれる国際関係学院は、米国中西部の小規模大学と密接な関係の構築に成功した。多数の留学生を送り込み、主要な資金源の一つにもなっている。
 外部に開かれた大学は、外部に浸透する“窓口”でもある。米南フロリダ大学で彭大進・教授の不祥事が発覚した際には、FBI(米連邦捜査局)が影響力を行使して彼の地位を保った。中国が同大学に設立した「孔子学院」の院長としての、同教授の情報収集能力などを期待したからだ。

 (3)米国は、安全保障に極めて熱心な超大国である。ベトナム戦争の時期には、多くの大学が情報機関に対して冷淡だった。だが、それは昔話にすぎない。今日、情報機関に公然と協力する学長もいれば、就職先として教え子を推薦する教授もいる。米ハーバード大学ケネディ・スクール(公共政策大学院)には、CIA(米中央情報局)の工作員が身分を隠して入学する。
 そうした場は、米国の大学だけではない。留学先で出逢った愛想の良い親切な外国人が、その国の、あるいは別の国の情報機関の手先だ、ということもある。魅力的な女性が現れて小論文の執筆を依頼され、執筆の度に報酬が払われる。そして、ホテルなどの密室の会合で「仲間」を紹介される。
 学会も聖域ではない。CIAは、外国の学会に出席したイラン人の研究者を勧誘し、核開発を遅らせた。誘いに乗らなければ生命の危険を告げることすらあるという。

 (4)人類共通の利益のために、知識を蓄積するのが学問である。だが、大学は、国民や企業からの拠出に存立を依存しており、国益や企業の利益への貢献を求める声は強い。
 特定の国、大学、あるいは研究者が、聖域に留(とど)まるのは難しい。本書が明かす実態は、わが国の大学にも課題を突き付けている。

□玉井克哉(東京大学教授、信州大学教授)「大学が舞台の米中スパイ合戦/聖域の実態をえぐる告発の書  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年1月27日号)
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 【参考】
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
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