語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>東電の最大30兆円の隠れ債務で現実味を帯びる発送電分離

2011年05月31日 | 震災・原発事故
 東電の2011年3月期の決算は、1兆2,473億円の最終赤字になった。
 問題は、原発事故の賠償費用や廃炉費用の引当金を負債としてほとんど計上しなかったことだ。
 廃炉については、福島第一原発1~4号機への2,070億円の引き当てのみ。政府筋によれば、廃炉には1.5兆円かかる。一部では、10兆円に達する、という見方もあるのだ。
 賠償費用に至っては、債務としてまったく認識していない。政府内部では、事故の影響を受けた20~30キロメートル圏内の約4万世帯に各1億円として4兆円の賠償を想定。企業約2,000社にも、年間売上高約5,000億円の20年分、総額10兆円の営業補償を検討中だ。土地収用費用や外国への賠償費用、使用済み核燃料の処理費用も踏まえると約20兆円に上る。
 つまり政府は、東電が最大30兆円の隠れ負債を抱えている、と踏んでいる。
 それを電気料金の値上げや増税で穴埋めするのは世論が許さない、と政府は考えている。政府がこれまでに明言しているのは、東電の合理化だ。
 東電は合理化へと舵を切った。電気事業に関係のない資産売却やコスト削減で総額1.1兆円以上の資金を捻出。人員削減も年内にまとめる。しかし、まったく足りない。今後1~2年、火力発電による燃料費負担の増加と社債償還だけで2.2兆円の手元資金は確実に枯渇してしまう。

 そこで、切り札として、東電の発電や送配電部門の売却が現実味を帯びるのだ。
 電気事業の固定資産は、簿価で7.6兆円に及ぶ。水力や火力発電設備を売れば、1.6兆円。送電設備だけでも2.1兆円に上る。

 以上、小島健志(本誌)「東電の最大30兆円の隠れ債務で現実味を帯びる発送電分離」(「週刊ダイヤモンド」2011年月日号)に拠る。

   *

 東電のリストラは手緩い。当初は全廃と見られた顧問制度も温存されている。
 “ドン”と呼ばれた荒木浩元会長は、自ら顧問の辞任を申し入れたが、東電には他に顧問が21人もいて、彼らに年間報酬が計2億1,900万円支払われている。
 経産相出身の白川進・元東電副社長ほか10人も退任し、年間報酬は9,800万円に減額できる、と東電側は胸を張る。
 しかし、川島毅(元国交省港湾局長)、栗本英雄(元警察庁刑事局長)、近藤純一(元国際協力銀行)、藤本寛之(元本州四国連絡橋公団総裁)の天下り組は残留。加納時男(元東電副社長、前参議院議員)も顧問のままだ。

 以上、記事「1兆2千億円の赤字でも天下り顧問4人 なぜ切らない」(「週刊文春」2011年月日号)に拠る。
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【震災】浜岡の次に停止すべき原発

2011年05月30日 | 震災・原発事故
 「AERA」誌は、全国の原発の危険度について取材し、地震や原発の専門家9人に意見を聞いた。
 原発リスクは多岐にわたる(地震・津波・活断層・周辺人口・主要施設など)。
 なぜ浜岡原発を止めるのか、という意見(石川迪夫・日本原子力技術協会最高顧問)もあったが、7人は浜岡以外に止めるべき原発を挙げた。

(1)原発が抱えるリスク
 (a)老朽化
 敦賀原発、美浜原発(ともに福井県)など若狭湾岸の原発。

 (b)地震
 浜岡原発(静岡県)は、今後30年以内に震度6弱以上が起こる確率95%。
 東海第二原発(茨城県)は33.4%。
 女川原発(宮城県)は16.9%。

 (c)活断層とプレート(岩盤)
 敦賀原発は、敷地内に活断層があることを電力会社が公式に認めている。
 浜岡原発、東通原発(青森県)、六ケ所村再処理工場(青森県)は、活断層がある可能性が大きい【渡辺満久】。浜岡は、プレート境界型地震が予想されている。
 中央構造線上の伊方原発は、原発のある佐田半島事態が中央構造線の活動によって生まれた土地で、周辺に大地震を引き起こす活断層が数多く存在するのは当然だ【広瀬隆】。なお、最大M8.6の地震が各県庁・各電力会社によって予想されている。

 (d)地震・津波対策
 震災から2ヵ月を経て、海水ポンプの防水癖、扉にシール施工といった対策は進んだ。
 しかし、非常用ディーゼル発電機の設置場所に変化はない。電源車の配備や発電機の追加で対応している。
 防潮堤は、どの原発にも無い。26基の原子炉で防潮堤の設置、防波堤や防波壁のかさ上げが決まっている。

 (e)避難人口(50キロ圏内)
 浜岡原発が214万人。東海第二原発が149万人。玄海原発が148万人。

(2)学者が選ぶ危険度ワースト5
 (a)小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
 すべての原発が危険。
 予測できないから事故なのだ。その上、未知の活断層が続々出てきている。

 (b)小林圭二(元京都大学原子炉実験所講師)
 ①浜岡、②伊方、③美浜、④大飯、⑤高浜。
 伊方は、耐震評価が甘い。東電と関電は、他の電力会社と比べて事故想定が甘い。美浜、大飯、高浜は、若狭湾一帯の活断層の存在とともに、老朽化に大きな不安を感じる。

 (c)石川迪夫(日本原子力技術協会最高顧問)
 当面、電源が喪失しないよう対策を立てればよい。

 (d)中林一樹(明治大学大学院特任教授)
 敦賀、美浜、大飯、高浜。
 若狭湾周辺に集中する関電、日本原電、「もんじゅ」の14原発が不安だ。

 (e)桜井淳(技術評論家)
 ①浜岡、②敦賀、③美浜、④伊方、⑤女川/福島第二。

 (f)広瀬隆(作家)
 浜岡、敦賀、美浜、大飯、高浜、もんじゅ、六ケ所村再処理工場。
 若狭湾には14基が密集している。敦賀には日本最古の原子炉があり、2番目に古い美浜、さらに「もんじゅ」がある。どれか1基がおかしくなれば、残り13基に影響を与えるだろう。六ケ所村には96年から10年まで全国の原発から使用済み核燃料が運びこまれた。電源喪失、爆発で、福島とは比較にならない規模の大惨事になる。

 (g)諸葛宗男(東京大学公共政策大学院特任教授(エネルギー))
 浜岡。
 住民の不安、危機感はわかるし、浜岡の停止は政策措置としてはわかる。しかし、科学的合理性の観点からは、国内で危ない原発は一つもない。

 (h)武田邦彦(中部大学教授・元原子力安全委員会委員)
 すべての原発が危険。
 電源喪失の可能性は、原発の新旧に無関係。個別に停止させ、検査するしかない。問題なければ使用していいだろう。

 (i)渡辺満久(東洋大学社会学部教授(変動地形学))
 敦賀、東通、六ケ所村再処理工場、浜岡。
 活断層があると「揺れ」に対する対策(耐震)をいくらしても、いざ地震が起こると地面が「ズレ」るので、建物の基礎そのものが崩れてしまう。結果として、想像できない甚大な被害が出る可能性がある。調査では、近くに大きな活断層のない原発は、玄海と東海第二の2つだけだった。 

 以上、山根祐作・野村昌二・岩田智博・澤田晃(編集部)「浜岡の次に止める原発」(「AERA」2011年5月23日号)に拠る。
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【震災】原発>台風や梅雨も脅威

2011年05月29日 | 震災・原発事故
 毎日数百トン出る汚染水の処分と同じくらい気がかりなのは、台風だ。原子力事故対策の要諦とされる「止める」「冷やす」「閉じこめる」のうち、今はかろうじて核分裂反応を「止める」が保たれているだけだ。
 使用済み燃料、炉心燃料を含めて、閉じこめられていない放射性物質が台風で巻き上げられ、飛散するリスクに、日本社会は「直ちに」直面することになる。

 梅雨の雨も大敵だ。
 陸のミネラルに富んだ真水が海へ流れこみ、「梅雨の水を飲んだ魚はうまくなる」・・・・はずだが、今年の、来年の、X年先の福島第一原発界隈の海には、原発サイトの土壌にある放射性物質が流れこむ。当然、海水の放射線レベルは上がる。

 雨や風への対策も急務なのだ。
 巨大なドームを作ってレールで運び、原発の上にかぶせる、というアイデアを提案している人もいる。  

 以上、塩谷喜雄「なおも暴走する『原子力村』 虚構と偽りの戦後史」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)に拠る。

    *

 台風2号は、28日、風速25メートル以上の暴風域を伴ったまま東シナ海を北上した。この影響で本州に停滞する梅雨前線が活発化し、東日本大震災の被災地では29日から31日にかけて大雨に対する警戒が高まった。
 東京電力福島第1原発では、季節はずれの台風に対策が間に合わず、“応急対策”でしのぐ。
 現在、原子炉建屋の上部は水素爆発などで鉄骨がむきだしになったまま。建屋の一部や敷地内に散乱した放射性物質を含むがれきが強風に巻き上げられ別の場所へ飛ばされる可能性もある。東電の担当者は、「最大限努力しているが、建屋のカバーまでは出来上がっていない。風や雨に対する具体的な対策はなく申し訳ない」と話した。
 また、タービン建屋の外にあるトレンチの水位は、28日午前7時現在、2号機が地上まで58.6センチ、3号機が43.1センチにまで迫っている。フタのないトレンチに大量に降った雨水が流入すれば、汚染水が外にあふれ出ることもあり得る。これらの対策については「パトロールを強化するなどし、必要ならば応急処置をする」(広報担当者)とした。
 気象庁によれば、台風は今後、北東方面に進み、30日には関東地方の手前で温帯低気圧に変わる見込み。しかし、本州の南岸に停滞する梅雨前線の活動は活発になり、東北地方で29日午後6時までの24時間に予想される雨量は、多い所で30ミリ。30~31日にかけて太平洋側を中心に大雨となる模様。雨以外にも落雷や突風、ひょうの可能性もある。

 以上、記事「祈るのみ…あきれた東電、福島原発“台風対策なし”」( 2011年5月29日 06:00 Sponichi Annex)に拠る。
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【震災】原発>事故時系列データ(3) ~3・11まで~

2011年05月29日 | 震災・原発事故
1954年
 03月01日 米国、ビキニ環礁で水爆実験。(:*10)
 03月05日 日本初の原子力予算案が衆院を通過。(:*10)
1955年
 11月14日 日米本原子力研究協定に署名。(:*10)
 12月16日 原子力基本法など原子力3法が成立。(:*10)
1956年
 01月01日 原子力委員会が発足。(:*10)
1957年
 06月10日 原子炉等規制法公布。(:*10)
 08月27日 日本原子力研究所の研究炉が臨界。(:*10)
 11月01日 日本原子力発電株式会社が発足。(:*10)
1960年
 福島県が原発誘致を表明。(*2)
1961年
 大熊、双葉町議会が原発誘致を議決。(*2)
1964年
 05月27日 原子炉立地審査指針が決定。(:*10)
1966年
 09月01日 国内初の商業炉、東海発電所(茨城県)が営業運転を開始。(*2)(:*10)
1971年
 福島第一原発1号機の営業運転開始(4基目)。(*1)
1974年
 06月06日 電源3法(発電用施設周辺地域整備法、電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法)が公布。(:*10)
1975年
 02月27日 初の電源立地促進対策交付金が福井、福島、愛知の3県に公布。(:*10)
1977年
 09月30日 電力10社、フランス核燃料公社と再処理委託契約に調印。(:*10)
1978年
 01月30日 福島原発の使用済み核燃料が商用として初めて東海再処理工場へ搬入された。(:*10)
 11月02日 福島第一原発3号機、5本の制御棒落下、7時間半も危険な臨界が続いた。07年3月発覚。(:*8) 
1979年
 福島第一原発6号機が運転開始(20基目)。(*2) 
1979年
 米スリーマイル島原発事故で炉心溶融。(*1)
1981年
 01月17日 東海再処理工場が本格稼働開始。
1984年
 07月27日 電気事業連合会、核燃料サイクル施設を青森県六ヶ所村に立地することを同村に申し入れ。(:*10)
1985年
 福島第二原発3号機が運転開始(30基目)。(*2)
1986年
 04月26日 チェルノブイリ原発事故。(*1)
 06月23日 動燃東海事業所でIAEAの査察官を含む12人がプルトニウム汚染。(:*10)
1988年
 10月14日 六ヶ所村でウラン濃縮工場の建設が開始。(:*10)
1989年
 米国で、規制当局が沸騰水型原発にベント配管を設置するよう勧告。(*1)
1991年
 5月 浜岡原発3号機、定期検査中に制御棒3本脱落。07年3月発覚。(:*8)
1992年
 原子力安全委員会がアクシデント・マネジメント(AM)の導入を勧告。(*1)
1994年
 電力業界、勧告に沿って報告書作成。(*1)
1955年
 08月29日 動燃の高速増殖炉「もんじゅ」が初送電を開始。(:*10)
1998
 03月31日 東海発電所の営業運転が終了。国内初の商用炉の廃炉処分が開始。(:*10)
1999年
 福島第一原発1号機でベント配管設置などを含むAM整備が完了。(*1)
 02月08日 東電、関電、原電、「運転開始後30年以上経過の原子力発電所についての60年の運転を想定しても安全性に問題なし」とする報告書。(:*10)
 09月30日 JCO東海事業所で臨界事故。大量被曝した3人の作業員のうち2人が死亡。(:*10)
 12月13日 原子力災害対策特別措置法と改正原子炉等規制法が成立。(:*10)
2000年
 12月 浜岡原発1号機、定期検査中に制御棒3本脱落。07年3月に発覚。(:*8)
2001年
 01月06日 資源エネルギー庁管下に原子力安全・保安院が発足。(:*10)
2002年
 全ての原発でAMの整備が完了。(*1)
 08月29日 東電の福島原発における自主点検作業記録の偽装が発覚。(:*10)
2003年
 03月15日 東電、不正発覚問題を受けて全原子炉17基を停止。(:*10)
2004年
 8月、福島第一原発、第二原発の建設に使われた砂利、砂にコンクリートを弱くする有害成分が含まれていることが発覚(内部告発)。(:*7)
2006年
 北陸電志賀2号機が運転開始(54基目)。(*2)
 04月28日 原子力安全委員会、原発耐震設計審査の新指針案を発表。
2007年
 07月16日 新潟中越沖地震。柏崎刈羽原発、変圧器に火災発生、圧力容器に歪み、など多数の損傷が発生。運転再開まで2年間を要し、しかも全7基中4基しか運転していない(11年4月現在)。(:*8) 断層を、したがって想定地震を過小評価していた結果であり、放射線が漏れた。(:*10) 
2009年
 8月11日 駿河湾地震。浜岡原発5号機タービン建屋でひび割れ発生。外壁に沿った15メートル四方で最大10センチメートルの地盤沈下。制御棒約250本のうち、約30本の駆動装置が故障。(:*8)
2010年
 06月17日 福島第一原発1号機で外部電源遮断、非常用ディーゼル発電機作動せず。原子炉内水位約2m低下の重大事故。【注】
  【注】(:*8)によれば、2号機。 
 08月06日 福島県知事、プルサーマル受け入れ。
 09月02日 福島県で初めてのプルサーマル始動。
 11月21日 「もんじゅ」再事故。
2011年
 02月07日 福島第一原発1号機の10年延長を国が許可。

 以上、記事「東電の本質 161件も起きていた福島原発事故 ~『事故隠し』と『安全神話』~」(「宝島07」No.708、2011年7月号)の「原発事故時系列データ」を基に、若干追記した。

 【追記の出典】
 (*1)記事「神話の陰に(2)」(2011年5月26日付け朝日新聞)。
 (*2)記事「神話の陰に(3)」(2011年5月27日付け朝日新聞)。
 (*3)記事「福島第一震災直後に何が 東電解析結果から」(2011年5月26日付け朝日新聞)。
 (*4)記事「原発情報また訂正」(2011年5月27日付け朝日新聞)。
 (*5)山根祐作・野村昌二・岩田智博・澤田晃(編集部)「浜岡の次に止める原発」(「AERA」2011年5月23日号)
 (*6)記事「政府・東電の情報隠蔽が生む終わりなき『放射能不安』地獄」(「週刊朝日」2011年6月3日号)
 (:*7)記事「東電の本質 161件も起きていた福島原発事故 ~『事故隠し』と『安全神話』~」(「宝島07」No.708、2011年7月号)
 (:*8)広瀬隆『福島原発メルトダウン』(朝日新聞出版、2011)
 (:*9)新潮45取材班「福島第一原発で何が起きたか」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)
 (:*10)塩谷喜雄「なおも暴走する『原子力村』 虚構と偽りの戦後史」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)
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【震災】原発>事故時系列データ(2) ~3月17日以降~

2011年05月29日 | 震災・原発事故
2011年
 03月17日
  09:48 自衛隊ヘリ、上空から3号機に放水を開始。(:*9)
  19:35 自衛隊消防車両、3号機への地上からの放水を開始。以後、継続的に放水作業が続く。(:*9)
 03月19日
  00:30 東京消防庁ハイパーレスキュー隊、放水開始。5、6号機でECCS復旧。(:*9)
 03月20日
  03:40 東京消防庁、3号機への13時間半に及ぶ海水の放水作業を完了。(:*9)
 03月22日
  17:17 東電、生コン圧送機を使い、4号機の保管プールへ放水を開始。
 03月23日
  14:20頃 葛飾区金町浄水場で乳児の飲用に適さない放射性物質が検出され、摂取制限を勧告。(:*9)
 03月24日
  12:10頃 3号機タービン建屋内で、ケーブル付設中作業員3人が被曝。(:*9)
 03月25日
  01:30 保安院、放射線管理の改善を指示。
  11:46 政府、屋内退避の地域住民に自主避難を要請。(:*9)
 03月26日
  10:10 2号機原子炉への注水を海水から真水に切り替え。
 03月27日
  東電、「通常の原子炉の水と比べて放射性物質の濃度が約1,000万倍」とした評価は誤りだった、と訂正。
 03月28日
  東電、一度訂正した物質名を再訂正。
 03月29日
  東電、東電社長は体調不良で入院、今後の指揮は勝俣恒久会長が行う、と発表。
 03月30日
  東電会長、第一原発について「恐らく廃止せざるをえないと考えている」と明言。
 03月31日
  東電、作業員180人が線量計を持たずに作業していた、と発表。 
 04月03日
  東電、4号機タービン建屋地下で3月30日に行方不明となっていた作業員2人が遺体で見つかっていたことを発表。(:*9)
 04月04日
  19:03 集中廃棄物処理施設の「低濃度汚染水」を海に放出。(:*9)
 04月07日
  余震。運転開始から5年余しかたっていない東通原発(青森県)が、震度4の余震で外部電源が遮断され、ようやく翌8日未明に回復した。(*5)(*8)
  余震。女川原発、外部電源3系統のうち2系統が停止。(:*8)
  余震。六ヶ所再処理工場でも外部電源が遮断され、非常用電源でかろうじて核燃料貯蔵プールや高レベル放射性廃液の冷却を続けることができた。「日本消滅の一歩手前」(*8)
 04月09日
  保安院の西山審議官、「多重防護、5重の壁など絶対大丈夫と言ってきたことについて信じてやってきたが、こういう事態になった」と原発の安全対策の不備を認めた。その上で、「今回の経験を踏まえ、これまでのことにとらわれず、すべてのことについて見直す必要がある」と述べた。
 04月11日
  官房長官、「計画的避難区域」と「緊急時避難区域」の設定を発表。
 04月12日
  保安院、福島第一原発事故の国際原子力事故評価尺度(INES)の暫定評価が旧ソ連のチェルノブイリ原発事故とお案じ最悪の「レベル7」と発表。
 04月13日
  東電社長、自身の進退について、「最大の責務は福島第一原発を始めとする現状の事態の収束に最大限取り組むこと」と述べ、引責辞任を否定。一方、経団連副会長、電気事業連合会会長の職はそれぞれ辞任。
 04月15日
  東電社長、「原発避難住民に賠償金の仮払いを4月中に始める」と明言。
 04月17日
  東電、福島第一原発1~4号機の事故を6~9ヵ月かけて収束させるとした「工程表」を発表。
 04月25日
  東電、役員報酬の減額を発表。会長、社長、副社長、常務取締役は、総報酬から50%減額。執行役員については40%減額。
 04月30日
  鼓紀男・東電副社長、飯館村を訪れ、住民に謝罪。
 05月02日
  経産相、経産省を退職後に電力企業の役員または顧問に天下りした人数が過去50年間に合計68人に上る、と発表。
 05月04日
  東電社長、避難生活を送る福島県浪江町の住民に土下座して謝罪。
 05月06日
  首相、「中部電力浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転中止を海江田産業相を通じて中部電力に要請」と発表。
 05月09日
  中部電力、臨時取締役会を開き、浜岡原発の全面運転停止要請を受諾する、と正式決定。
 05月12日
  東電、福島第一原発1号機で溶融した燃料は圧力容器の底部に溜まっているとみられ、核燃料の炉心溶融である、と認めた。
 05月13日
  政府、東電の資産売却やリストラを監視するための専門家チームをつくり、実質的に政府の管理下に置くことを決定。

 以上、記事「東電の本質 161件も起きていた福島原発事故 ~『事故隠し』と『安全神話』~」(「宝島07」No.708、2011年7月号)の「原発事故時系列データ」を基に、若干追記した。

 【追記の出典】
 (*1)記事「神話の陰に(2)」(2011年5月26日付け朝日新聞)。
 (*2)記事「神話の陰に(3)」(2011年5月27日付け朝日新聞)。
 (*3)記事「福島第一震災直後に何が 東電解析結果から」(2011年5月26日付け朝日新聞)。
 (*4)記事「原発情報また訂正」(2011年5月27日付け朝日新聞)。
 (*5)山根祐作・野村昌二・岩田智博・澤田晃(編集部)「浜岡の次に止める原発」(「AERA」2011年5月23日号)
 (*6)記事「政府・東電の情報隠蔽が生む終わりなき『放射能不安』地獄」(「週刊朝日」2011年6月3日号)
 (:*7)記事「東電の本質 161件も起きていた福島原発事故 ~『事故隠し』と『安全神話』~」(「宝島07」No.708、2011年7月号)
 (:*8)広瀬隆『福島原発メルトダウン』(朝日新聞出版、2011)
 (:*9)新潮45取材班「福島第一原発で何が起きたか」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)
 (:*10)塩谷喜雄「なおも暴走する『原子力村』 虚構と偽りの戦後史」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)
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【震災】原発>事故時系列データ(1) ~3月11日から16日まで~

2011年05月28日 | 震災・原発事故
2011年
 03月11日
  14:46 三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震発生。福島第一、第二原発、緊急停止。
  14:46 福島第一原発1号機原子炉、緊急停止。(*3)
  14:47 福島第一原発2、3号機原子炉、緊急停止。(*3)
  15:14 政府、緊急災害対策本部を設置。(:*9)
  15:32 福島第一原発2号機、炉心冷却システムが動きだした。(*3)
  15:30 武藤栄・東電副社長、ヘリで福島原発へ向かう。
  15:30頃 福島第一原発に津波襲来。非常電源が動かなくなり、原子炉の水位は徐々に下がっていったと推定される。(*3)
  15:32 原子力安全・保安院、「東北地方の原発は冷却機能が保たれている」と発表。
  15:37 福島第一原発1号機、全交流電源喪失。冷却システム(非常復水器)停止。(*3)
  15:38 福島第一原発3、4号機、全交流電源喪失。(*3)
  15:41 福島第一原発2号機、全交流電源喪失。(*3)
  15:42 非常用ディーゼル発電機が津波で使用不能に。
  16:54 菅直人首相、記者会見で「被害を最小限に抑えるために総力」と表明。
  18:00頃 福島第一原発1号機、燃料露出が始まった。(*3)
  19:03 政府、日本初の「原子力緊急事態宣言」を発令。(:*9)
  19:00頃 福島第一原発1号機、炉心損傷が始まった。(*3)
  19:03 首相、原子力緊急事態を発令。
  20:00頃 福島第一原発1号機、燃料が完全に剥き出しになった。(*3)
  21:23 半径3キロ以内の地域の住民に避難指示。10キロ以内には屋内退避を指示。(:*9)
  22時頃 東電、「福島第一原発の運転状態が不明で、原子炉水位を確認できない」と発表。 
  23:00 首相や海江田経産相、「早く水蒸気を外部に放出すべきだ」で一致。
  23:15 保安院、「電源車が到着すれば冷却機能は動かせる」と発表。
  ●11日、東海第二原発(茨城県、日本原子力発電)でも、非常用ディーゼル発電機3台のうち1台が海水をかぶって故障。原子炉が安定的に停止する「冷温停止」の状態になるまで、通常の2倍以上の3日半もかかり、綱渡りの作業が続いていた。3月26日付け常陽新聞が明らかにした。(*5)(:*8)

 03月12日
  01:12 官邸のファックス、放射能の拡散範囲が飯館村まで及ぶことなどを予測したSPEEDIのデータ受理。しかし、12日早朝に出した避難指示の範囲は10キロ圏内のとどまった。参与らは避難区域を50キロ圏内と想定し、シミュレーションをしたが、政府が輸送手段や受け入れ先を直ちに確保することは困難、という結論に至った。パニックを恐れ、官邸はSPEEDIのデータを開示しなかった。(*6)
  01:30 政府、東電に対し、水蒸気放出を指示。東電は明確に返事せず。
  02:20 保安院、「最終的に開けると判断したわけではない」と発表。
  03:05 海江田経産省、保安院、東電が記者会見。水蒸気を放出する方針を発表。
  05:44 首相、「福島第一原発から10キロ以内の住民は避難を」と発表。(避難指示の対象拡大。(:*9))
  06:00頃 福島第一原発1号機、燃料が圧力容器の底に溶け落ちた。圧力容器が壊れた。(*3)
  06:14 首相、自衛隊ヘリで被災地と福島第一原発の視察に出発。
  06:50 原子炉等規制法に基づき、経産相が1、2号機の格納容器の圧力を下げるよう、東電に命令。
  07:11 首相、福島第一原発を視察。武藤副社長から説明を受けた。
  08:04 首相、福島第一原発を出発。
  09:00頃 福島第一原発1号機、格納容器が損傷。300度以上になった(設計温度は138度)。(*3)
  09:00 東電、福島第一原発1号機の原子炉格納容器の減圧作業を開始。
  10:17頃 福島第一原発1号機、ベント作業開始。(*3)
  11:36 福島第一原発3号機、冷却システム(隔離時冷却系)停止。(*3)
  14:15 保安院、福島第一原発1号機で炉心溶融が起きた可能性が高いことを発表。
  14:30 福島第一原発1号機、ベント成功を確認。(*3)
  14:53 福島第一原発1号機、原子炉への淡水注水が停止。(*3)
  15:01 首相、「大丈夫、水位が上がってきている」と説明。
  15:36 福島第一原発1号機、原子炉建屋が水素爆発。(*3) 原子炉建屋の屋根や壁面上部が損壊。(:*9)
  17:47 官房長官、「何らかの爆発的事象があった」と発表。
  18:25 避難指示の対象が20キロ圏内に拡大し、30キロ圏内は屋内退避指示。(:*9)
  19:04 福島第一原発1号機へ海水注入開始。(*3) 19:20に中断と東電本部は理解していたが、実際は注入を継続していた。(*4)
  20:06 東電、福島第一原発1号機で炉心溶融している可能性を認めた。
  20:41 枝野官房長官、「格納容器は破損していない」と発表。
  23:20 保安院、「福島第一原発の爆発が水素爆発であった可能性が高い」と発表。
 03月13日
  02:42 福島第一原発3号機、冷却システム(高圧注水系)停止。(*3)
  07:00頃 福島第一原発3号機、燃料露出が始まった。(*3)
  08:20 東電、原子力災害対策特別措置法に基づく「緊急事態」を国に通報。
  08:41 福島第一原発3号機、ベント開始、囲碁複数回実施。(*3)
  09:30 福島第一原発3号機、淡水を注入開始。(*3)
  11:00 福島第一原発2号機、ベント開始。効果は不明。(*3)
  13:12 福島第一原発3号機、原子炉へ海水注入開始。(*3)
  18:00 保安院、作業員(160人)に被曝の可能性があることを発表。いずれも「直ちに健康に影響を与えるレベルではない」と発表。
  22:50 東電、計画停電の5つのグループ分けを発表。
 03月14日
  03:00頃 福島第一原発3号機、大部分の燃料が圧力容器の底に溶け落ちた。(*3)
  05:20 福島第一原発3号機、ベント開始、以後複数回実施。(*3)
  09:00頃 福島第一原発3号機、圧力容器破損。(*3)
  10:55 官房長官、「東電の情報提供に不適切な部分があり、国民に無用な心配を与えている」と指摘。
  11:00頃 福島第一原発3号機、水素爆発。(*3) 原子炉建屋が大きく損壊。(:*9)
  13:25 福島第一原発2号機、冷却システム(原子炉隔離時冷却系)が停止。(*3)
  16:34 福島第一原発2号機、原子炉へ海水注水開始。(*3)
  18:00頃 福島第一原発2号機、燃料露出が始まった。(*3)
  18:22 福島第一原発2号機、炉内の水位が低下、一時燃料棒全体が露出。(:*9)
  19:00頃 福島第一原発2号機、燃料のすべてが剥き出しになった。(*3)
  20:00頃 福島第一原発2号機、燃料損傷が始まった。溶けた燃料の大部分が圧力容器の底に落ちた。(*3)
  21:10 官房長官、「原発1、2、3号機すべてで炉心溶融が起きている可能性が高い」との認識を示す。一方で、「チェルノブイリと同じようにならない」と主張。
 03月15日
  00:02 福島第一原発2号機、ベント開始、効果不明。(*3)
  00:10 東電、「再び2号機の燃料棒が露出し、空焚き状態」と公表。
  05:30 政府と東電、原発問題に対応する統合連絡本部を設置。本部長は首相、副本部長は経産相及び清水正孝・東電社長。
  06:00頃 福島第一原発4号機、水素爆発とみられる爆発音。建屋の壁損傷。穴が開き、放射性物質が漏れた。(*3)
  06:10 福島第一原発2号機、水素爆発。格納容器につながる圧力抑制室が破損か。(*3)
  08:00頃 福島第一原発2号機、燃料の大部分が圧力容器の底に溶け落ちた。(*3)
  11:10 首相、「放射能物質漏洩の危険がさらに高まっている」と発表。
  13:30 東電、原発への注水作業に携わらない職員を現地から避難させることを決定。
 03月16日
  05:20 保安院の西山英彦審議官、「4号機のプールの冷却水は沸騰している」との見方を示した。
  05:45頃 4号機で再び火災を確認。保安院がIAEAへの専門家派遣要請を発表。
  04:00頃 福島第一原発2号機、圧力容器が破損。穴が開き、溶けた燃料の一部が漏れた。(*3)
  18:00 管内閣、小佐古敏庄・東大大学院教授を内閣官房参与に任命。

 以上、記事「東電の本質 161件も起きていた福島原発事故 ~『事故隠し』と『安全神話』~」(「宝島07」No.708、2011年7月号)の「原発事故時系列データ」を基に、若干追記した。

 【追記の出典】
 (*1)記事「神話の陰に(2)」(2011年5月26日付け朝日新聞)。
 (*2)記事「神話の陰に(3)」(2011年5月27日付け朝日新聞)。
 (*3)記事「福島第一震災直後に何が 東電解析結果から」(2011年5月26日付け朝日新聞)。
 (*4)記事「原発情報また訂正」(2011年5月27日付け朝日新聞)。
 (*5)山根祐作・野村昌二・岩田智博・澤田晃(編集部)「浜岡の次に止める原発」(「AERA」2011年5月23日号)
 (*6)記事「政府・東電の情報隠蔽が生む終わりなき『放射能不安』地獄」(「週刊朝日」2011年6月3日号)
 (:*7)記事「東電の本質 161件も起きていた福島原発事故 ~『事故隠し』と『安全神話』~」(「宝島07」No.708、2011年7月号)
 (:*8)広瀬隆『福島原発メルトダウン』(朝日新聞出版、2011)
 (:*9)新潮45取材班「福島第一原発で何が起きたか」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)
 (:*10)塩谷喜雄「なおも暴走する『原子力村』 虚構と偽りの戦後史」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)
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【震災】原発>海洋汚染 ~グリーンピースの調査・水産学者の「原子力村」~

2011年05月27日 | 震災・原発事故
 グリーンピースは、これまで空気、土壌、海水に加えて、野菜、海藻についても独自に放射能汚染調査を行っている。結果は公表している。
 5月3~9日の間の海藻に係る調査結果は、次のとおりだ。いずれも福島県内の沿岸または沖合で獲れたものだ。最も危険性の低い放射性ヨウ素の基準値は2,000ベクレル/kg、放射性セシウムの基準値は500/kgだから、いずれもとてつもなく高い値だ。

 ・ホソメコンブ:久之港沿岸で採取・・・・19,000ベクレル/kg以上
 ・フクロノリ:久之港沿岸で採取・・・・16,000ベクレル/kg以上
 ・カヤモノリ:四倉港沿岸で採取・・・・14,000ベクレル/kg以上
 ・ホメソコンブ:四倉港沿岸で採取・・・・18,000ベクレル/kg以上
 ・アカモク(ホンダワラ科の海藻):江名港沿岸で採取・・・・21,000ベクレル/kg以上
 ・アカモク:富神崎南沿岸で採取・・・・23,000ベクレル/kg以上
 ・アカモク:福島第一原発の南東53km沖合で採取・・・・13,000ベクレル/kg以上

 なぜ海藻を調べるのか。
 海に放出された放射性物質は、水より比重が大きいから、いずれは海底に堆積する。海底に棲息して動かない海草類は、放射能汚染の影響を受けやすい。本来、海藻を調べるのが汚染の実態を知る最も簡便な方法だ。しかるに、政府は絶対に調べようとしない。【水口憲哉・東京海洋大学名誉教授】
 放射能汚染を調べる際の、国のガイドラインに、海草類を「指標生物として使う」と明記されている。汚染のマッピングができるのだ。まず海底の土を最初に調べるべきだが、政府はそれすらやっていない。【佐藤潤一郎・グリーンピース・ジャパン事務局長】

 なぜ政府は調べようとしないのか。
 省庁の縄張りを理由にしている。水産庁は漁業を管轄する省庁だから、「食用になる海産物を担当する」という建前がある。だから、海底の土は文科省の担当になる。しかし、文科省は陸の調査で忙しい。普段は利権拡大に利用する縄張りを、今回は怠慢の言い訳に使っている。【匿名・海洋学者】

 遅ればせながら、陸では避難区域が広がり、対応は少しずつ進んでいる。
 これに対し、海洋汚染への対応はあまりにも遅れている。なぜか。
 学者のチェック機能がまったく働いていないからだ。実は、水産関係研究者も「原子力村」に取りこまれている人が非常に多い。理由は簡単で、原発は海辺につくらなくてはならないから、必ず漁業補償の問題が出てくるからだ。放射能は安全だ、原発は安心だ、と漁師たちを説得する時に、水産学者も一役買うのだ。水産系で放射能を扱っている研究所はたくさんあるが、総じて電気事業連合会から研究費を貰っている。放射能を専門にする水産学者の多くは、本籍が原子力村なのだ。【前出の海洋学者】

 「魚は安全」と言い張る水産庁に、勝川俊雄・三重大学准教授(海洋個体群動態学研究室)は警鐘を鳴らす。水産原子力村に反旗を翻す科学者は少数だが、勝川准教授はその一人だ。
 福島原発1号機と3号機から出た汚染水(基準値の100倍とされる)を海に放出する時に、東電と国は2号機の超汚染水との比較で「低濃度汚染水」という呼称を使った。魚でも「PCBやDDTに比べると、放射性物質は魚に溜まらないから安全」という。一事が万事、この調子だ。海にばらまかれた放射性物質は、生物濃縮を経て、いずれ人間に返ってくる。政府が意図的に流す「安心デマ」よって、意識を持っていれば防げた内部被曝を引き起こしてしまうのではないか、心配だ。【勝川准教授】

 グリーンピースの調査を政府が嫌がるのは、コントロールがきかないからだ。

 以上、記事「野菜と海藻 放射能汚染調査の全記録」(「週刊現代」2011年6月4日号)に拠る。

   *

 グリーンピースは、4月17日付けで政府に調査協力を要請し、政府は4月17付けで拒否した。
 グリーンピースは、日本の漁師、サーファー、ダイバーの協力を得て調査し、検体を少なくとも3つの第三者機関に送った。その一つは、フランスの放射能測定を行うNPO「ACRO」。もう一つは、ベルギーの国営研究機関、原子力研究センター(SCK・CEN)だ。
 ①品目、②採取地点、③採取日、④ヨウ素131、⑤セシウム134、⑥セシウム137・・・・の順に記す。なお、放射性物質の単位はBq/kg。県名のない港は、すべて福島県。ヨウ素131の半減期は約8日間なので、採取日の数値は計測日から逆算したもの。
 なお、政府の野菜の基準値はヨウ素131が2,000Bq/kg、セシウム(134と137を足したもの)が500Bq/kgだ。

●ACROによる計測データ
 (1)①アカモク、②原発から南65キロ地点、③5月4日、④28.9、⑤2以下、⑥2以下
 (2)①アカモク、②原発から南東52キロ地点、③5月4日、④119,000、⑤348、⑥364
 (3)①フクロノリ、②久之浜港、③5月4日、④65,000、⑤540、⑥570
 (4)①カヤモノリ、②四倉港、③5月5日、④17,000、⑤1,390、⑥1,450
 (5)①タンバノリ、②江名港、③5月5日、④3,040、⑤580、⑥600
 (6)①アカモク、②江名港、③5月5日、④127,000、⑤800、⑥840
 (7)①アカモク、②勿来港、③5月9日、④20,000、⑤259、⑥266

●SCK・CENによる計測データ
 (1)①コンブ、②宮城県日門港、③5月3日、④180、⑤2.62、⑥2.11
 (2)①ヒトデ、②釣師浜港、③5月4日、④168、⑤467、⑥474
 (3)①ワカメ、②釣師浜港、③5月4日、④149、⑤7.7、⑥7.9
 (4)①アカモク、②釣師浜港、③5月4日、④2,190、⑤17.5、⑥15.3
 (5)①アカモク、②原発から南65キロ地点、③5月4日、④8.8、⑤0.8以下、⑥0.9以下
 (6)①エゾイソアイナメ、②小名浜港、③5月5日、④60、⑤427、⑥430
 (7)①ムラサキイガイ、②江名港、③5月5日、④950、⑤400、⑥406
 (8)①アカモク、②原発から北東42キロ地点、③5月5日、④1,750、⑤5.8、⑥4
 (9)①マナマコ、②久之浜港、③5月5日、④1,240、⑤646、⑥639
 (10)①コンブ、②四倉港、③5月5日、④107,000、⑤980、⑥990
 (11)①カキ、②四倉港、③5月5日、④417、⑤378、⑥362
 (12)①アカモク、②茨城県河原子港、③5月9日、④620、⑤8.1、⑥7.8
 (13)①エゾイソアイナメ、②茨城県久滋港、③5月9日、④1.8以下、⑤6、⑥6
 (14)①シラス、②勿来港、③5月9日、④67、⑤608、⑥611

 以上、上杉隆「原発『海産物汚染』戦慄データを全公開」(「週刊文春」2011年6月2日号)に拠る。
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【震災】原発>3号機も4号機も危機的状態 ~「米軍機密文書」~

2011年05月26日 | 震災・原発事故
 (承前)
 2号機については(1)で、1号機については(4)で触れた。では、3、4号機はどうか。

(5)3号機
 3月14日午前、爆発した。米軍機や偵察衛星などの映像解析によれば、突然赤い炎が上がると同時に、灰褐色の煙が400メートルに近い高さまで噴き上がった。これまでの水素爆発とは明らかに違っていた。「核爆発が起きた」と報道した海外メディアがあったほど、凄まじい爆発だった。
 16日にも水蒸気の白煙を出し、23日には原因不明の黒煙が上がった。24日にはタービン建屋地下の水溜まりから高濃度の放射線が検出され、作業員3人が被曝した。  Tレポートは、17日付け第4報、26日付け第13報など5回にわたり、3号機について報告する。
 「14日の爆発の瞬間を捉えた映像を解析した結果、灰褐色の煙の中に多数の巨大な塊が飛び散っているのを確認。さらに映像を拡大して分析したところ、燃料棒のような形状の物体が周囲に飛散していたことが分かった」
 これら物体から、後に他の原子炉周辺の落下物に比べて2~3倍の、毎時300~500mSvという高い放射線量を次々と検出。14日の爆発直後から毎時1,000~1,200mSv超の金属片やコンクリートの塊が幾つも見つかった【注】。
 上空から撮影した映像などによれば、圧力容器の中程に燃料棒が水飴のような状態で引っかかっていた。Tレポートは、後に「メルトダウンした核燃料が飛び散ったもの」と断定したが、実際には制御棒がどんどん落下しており、いつ再臨界状態になっても不思議ではなかった。
 Tレポートは、原子炉内で起きていることも分析している。
 「3号機の原子炉は14日から15日にかけて、再臨界寸前という大危機を迎えていたことが分かった(略)米軍機が上空から炉内の温度を計ったところ、800度まで計測したところで計測不能となったが、融点が2,700度の燃料ペレットが溶け出していたこと。超高温で爆発した結果、大量の放射性物質が放出され、その中にはコバルト60が含まれ、中性子線が観測されたこと。核燃料棒が大破し飛散している様子が映像から窺われること・・・・などから、圧力容器が損傷し、内部では炉心溶融から再臨界寸前まで進行していたことが分かった」
 3号機はMOXを燃料として使っている。後に3号機周辺からプルトニウム238と239を検出。核燃料が外部に漏れ出たことが判明した。
 ちなみに、福島第一には10年末現在で長崎に投下された原爆35発分に当たる210キロが貯蔵されていた。

(6)4号機
 NRCの専門家は、「複数の原子炉や燃料プールの温度が上昇し、制御不能に陥る可能性を捨てきれない」と指摘し、特に4号機の核燃料プールの危険性について言及した。Tレポート第2報に次のような記述があったからだ。
 「高高度無人偵察機で18,000メートル上空から撮影した映像を分析した結果、4号機の使用済み核燃料プールでは核燃料を納めたラックがはっきりと確認でき、核燃料の一部が水中から露出。一部が損傷していることが分かった。迅速な注水が必要と思われる」
 4号機は定期点検中だったが、津波で冷却水が停止、核燃料プールには使用済み核燃料1,331本があり、うち548本は原子炉から取り出してまもないため、他の核燃料プールに比べ発熱量がかなり大きい。上空からの水温と放射線測定によれば、この燃料プールから1日約70トンの水が蒸発していると推定された。
 NRCは、防衛省に映像を提供し、早急な注水を助言した。
 しかし、日本政府の対応が遅く、15日に爆発と火災が発生し、建屋上部だけでなくプールの壁も破損した。今は生コンクリート圧送機で140~200トンの水を注入しているが、水位は上がらず、ダダ漏れの恐れが出ている。
 実際、原子炉建屋の地下が深さ約5メートルの汚染水でほぼ水没し、水面付近で最大、毎時100mSvの放射線を観測しているほか、隣接するタービン建屋地下にも温泉水が溜まり、放射線濃度が1ヵ月で250倍も上昇した。
 最悪の事態にならなかったのは、僥倖にすぎない。爆発の衝撃で隣接する原子炉ウェルから可動式ゲートを通って数百トンの水がプールに流れ込み、たまたま核燃料の過熱を食い止めていたからだった。そのまま過熱が続いていれば、核燃料が溶融し、大量の放射性物質が放出されるなど、大惨事が待ち受けていた。

 【注】「日常的にこれほど高いレベルの放射線が出ていると分かれば、国民の動揺を招くと東電側が公表して来なかった」(政府関係者)

 以上、一橋文哉(ジャーナリスト)/本誌取材班「米軍機密文書入手! 福島原発の『危険な話』」(「新潮45」2011年月6号)に拠る。

   *

 東電は、5月23日に原子力安全・保安院へ提出した報告書の中で、1号機~3号機のすべてで震災後に炉心溶融が起きた、との見解も(ようやく)示した(2011.05.25 CNN.co.jp)。

 報告書によれば、2、3号機の冷却システムが停止し、燃料の出す熱で水が減り、圧力容器内の燃料棒(長さ約4メートル)下部まで水位が低下した。(1)燃料棒の一部が水につかった場合(2)、水位が回復せずに燃料が露出し続けた場合、の2通りでシミュレーションしたところ、3号機は42時間後の13日午前9時ごろから炉心の損傷が開始。(1)の場合は燃料の半分程度が圧力容器の底に落下し、残り半分は本来の位置にとどまった。(2)の場合は大部分の燃料が落下した。東電は、(2)の方が現実に近い、とみている。3号機では60時間後の14日午前3時ごろに燃料の大部分が圧力容器の底に落下する炉心溶融が起き、6~8時間後に圧力容器が破損した。1~3号機では水素爆発が発生したが、燃料棒損傷で生じた水素の量を、3号機600キロと推計した。また、冷却システムが停止し、注水を開始するまでの数時間で、燃料棒を溶融させる3,000度近くに達した(2011年5月25日 毎日jp
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【震災】原発>津波だけが原因ではない ~「米軍機密文書」~

2011年05月26日 | 震災・原発事故
 (承前)
 2号機については、(1)で触れた。では、1号機はどうか。

(4)1号機
 Tレポートは、3月28日付け第15報など5回にわたり、1号機について報告する。
 「原子力安全・保安院は『1号機は燃料の約7割が損傷している』と説明するが、既に一部が再臨界に達している可能性が極めて高い」
 その論拠は、「いくら注水しても圧力容器の温度が下がらない」からだ。
 他の原子炉が概ね100~150度までに抑えられている。これに対し、1号機は3月23日の400度を最高にほぼ200度の高温を保っていた。
 「圧力容器内の気圧が高い状態のままある程度の密閉度が保たれており、高温の水蒸気が逃げにくいため温度がなかなか下がらないと思われる」
 「炉心が高温のまま変化がないと燃料の損傷が進み、今や被覆菅や燃料ペレットが溶けて粒状となっている。それが圧力容器の底部に溜まり、一部は冷やされて水中で固まっている。制御棒も一緒に溶けて落下し、少しずつ再臨界が起きていると言っていいだろう。大量の放射性物質が漏れ出て、注入された水を汚染している」
 ここで注目すべきは、次の点だ。「圧力容器下部の配管が損傷し、炉心にうまく水が回っていない。補修したくとも放射線量が高く、1号機の冷却システム復旧は不可能と見られる」
 3月11日の水位は、燃料棒露出まで残り450ミリ~550ミリと極端に低く、1号機の構造上、格納容器内の配管損傷しか考えられない。津波は格納容器内に入っていない。だから、配管損傷は地震による被害しかあり得ないのだ。
 東電としては、原発事故はすべて想定外の津波のせいにしたかったのだろうが、耐震性にも問題があった。

 再臨界の二つ目の論拠は、「クロル38やテルル129といった放射性物質の検出」だ。3月26日、1号機のタービン建屋地下の溜まり水から検出されたクロル38は塩素の放射性同位体だ。炉内で臨界が起きて出てきた中性子を、注入した海水の塩分が吸収して生じたもの、と分析している。
 また、テルル129は、核分裂の連鎖的な反応が起きている時にしか検出されない。
 炉を冷やすために注入した海水が、壊れた核燃料と反応し、連鎖反応を起こし始めている何よりの証拠だ。
 連鎖的な核分裂反応が制御できなくなる再臨界状態に突入する・・・・これが最も恐ろしい事態だ。
 1号機では既にわずかながら連鎖反応が起きていることは確かだ。4月26日に原子炉建屋1階のポンプ室付近で毎時1,120mSvの放射線量を検出、連鎖反応が継続中であることを示している。
 「1号機はこのまま冷却がうまく行かなければ、水蒸気が格納容器に漏れ出て爆発を起こしたり、燃料棒が自ら出す崩壊熱で溶け落ちて圧力容器内に溜まり、核燃料棒が一つに集まることによって再び核分裂を始める際臨界の可能性が出てくるから要警戒だ」【注】
 
 【注】当初、1号機では政府・東電間で激しいベント論争があった。
 Tレポートによれば、「政府の命令というお墨付きが欲しい企業側と責任転嫁を図りたい政治家・官僚側の駆け引きに過ぎず、最終的に東電社長がベントを決断したことで、会社は潰さないとか、賠償金を国が肩代わりするといった見返り的な密約が交わされた疑いがある」。そもそも政府や東電は、電源喪失で炉心溶融という深刻な事態が起きることを十分に認識していたはずで、「双方がベントを躊躇する理由が全く理解できない」。

 以上、一橋文哉(ジャーナリスト)/本誌取材班「米軍機密文書入手! 福島原発の『危険な話』」(「新潮45」2011年月6号)に拠る。

   *

 東電は、5月23日に原子力安全・保安院へ提出した報告書の中で、1号機では3月11日に発生した地震から18時間後に直径3センチの穴が開き、50時間後には7センチまで広がった、と推定している(現場に立ち入って確認することができないため、穴の大きさなどは推定にとどまる)。また、1号機~3号機のすべてで震災後に炉心溶融が起きた、との見解も(ようやく)示した(2011.05.25 CNN.co.jp)。

 なお、「専門家」がクロル38やテルル129といった放射性物質の検出に注目しなかったはずはない。国民の不安をよそに、知らぬ顔をして口をぬぐっていただけだ。
 沈黙していなかった「専門家」もいる。小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は、4月5日に「再臨界の可能性」を指摘している。その理由として、3週間以上経ってもヨウ素の濃度が一向に減らないこと、タービン建屋の地下水の放射性核種にクロル38が検出されたこと、を挙げている(たねまきジャーナル・MBS毎日放送ラジオ)。
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【震災】原発>東電・政府の情報操作を明らかにする「米軍機密文書」

2011年05月25日 | 震災・原発事故
 米国が在日米軍や国防総省に秘かに調査させた報告書、通称「TOMODACHI」(以下「Tレポート」)は、「トモダチ作戦」が指導し、米国の原発専門家が来日した3月13日に始まり、5月10日付け第38報が最新の報告だ。以下は、その内容のごく一部だ。

(1)福島第一原発から50マイル以内の米国人退避勧告の根拠
 Tレポート第1報は、福島第一1、3号機で爆発が起き、日本政府と東電が対応に奔走していた14日にまとめられ、翌15日に国防総省に送付された。
 1、3号機にはほとんど触れず、その時点では外見上問題がなさそうに見えた2号機について、恐ろしい警告を発していた。
 「2号機の圧力容器内の水が大幅に減少し、炉心が空焚き状態になり、燃料の損傷が100%近くまで達しようとしている。このままではやがて圧力容器内で水蒸気爆発が起こり、10数時間にわたって放射性物質が大量に飛散し続ける恐れがある」
 「融点が2,700度という燃料棒の酸化ウランを焼き固めたペレットや、ジルコニウム合金製の被覆管は既に溶け、時間が経つに連れ厚さ16センチの鋼鉄でできた圧力容器を溶かし、やがて格納容器も破損させ、放射能を封じ込める機能をすべて破壊する危険性が高い」
 「もし圧力容器の底が抜けて、溶けた核燃料・制御棒が次々と落花するような事態が生じれば、小規模な再臨界が立て続けに起こり、チェルノブイリ原発事故と同じレベルのチャイナシンドロームに至る」
 事実、翌15日早朝には2号機の格納容器下部にある圧力抑制室付近で爆発があり、同室は損傷した。後に、炉心溶融で配管の隙間などから漏れ出た放射性物質が、爆発で生じた穴や亀裂から2%ほど外部に漏れ出たことも判明した。同室付近は毎時500mSv前後(人体に急性障害が出る)、格納容器内に至っては最高で毎時160Sv(広島の爆心地に匹敵)の放射線で汚染されていた。次に爆発が起これば、残りの放射性物質が一気に放出される危険性があった。
 東電がちっとも「想定」しなかった僥倖のおかげで、危機は当面回避された。すなわち、核燃料が少量ずつ落下し、底に溜まった水の中で冷やされて固まったため、炉内の温度や圧力はさほど上昇せず、放射性物質の外部への大量漏出は生じなかった。
 ちなみに、東電が、しぶしぶと炉心溶融を認めたのは4月に入ってからだ。

(2)チェルノブイリ原発事故を超える放射性物質
 米国政府は、12日午後から連日、米領グアム島を発った高々度無人偵察機「グローバルホーク」を原発上空に飛行させ、写真2万枚余を撮影した。
 米軍は、空中から大気の放射線と地上の放射線レベルを測る空中測定システム(AMS)2基を投入し、詳細なデータを測定した。偵察衛星や最新鋭電子偵察機「RC-135U」を使い、放射性物質の成分を分析した。
 米軍はまた、10人編成の放射線収集管理チーム(RCMT)を事故対応の拠点Jヴィレッジに送りこみ、原発周辺の情報がレポートに厚みを加えた。
 こうした独自の調査結果とオーストリア気象地球力学中央研究所の予測データをもとにTレポートが作成された。
 3月末段階で、福島第一原発から1日平均で放出されるヨウ素131は、10京ベクレル、セシウム137は5京ベクレルに上り、累計ではこの時点で既にチェルノブイリ原発事故を超える数字をはじだしている。

(3)34種類の放射性物質
 東電は、4月上旬、1,500億ベクレルの放射性物質を含む汚染水を意図的に太平洋に放出した。そして、今も大気中へ放出し続けている。
 付近の海水から多くの放射性物質が検出され、確認できただけで既にチェルノブイリ原発事故時を上回る34種類を数えた。
 最も恐ろしいとされるのが、3月24日、22日に3号機付近の土壌から検出されたプルトニウム238とプルトニウム239だ。他の放射線と比べてエネルギーの大きいα線を放出し、毒性が極めて強い。骨に蓄積すると半永久的に内部被曝を与え続け、骨腫瘍や白血病を引き起こす恐れがある。
 セリウム144は、タービン建屋地下1階に溜まった汚染水から、なんと1ミリリットル当たり220万ベクレルも検出された。燃料棒自体が損傷していなければ出てこない数値だ。燃料棒がドロドロに溶けたことを意味する。
 同じく燃料棒損傷の証拠となるのが、ランタン140とバリウム140だ。両者は、普通燃料棒の中に封じ込められていて、出てこない物質だ。「ランタン140は、福島第一付近の海水から検出された。気体になりにくい物質で、注入された冷却水に混じり燃料棒から漏れ出た可能性が高い」「バリウム140は核反応によって生成するもので、燃料棒が損傷し、再臨界寸前だったことを示唆している」
 3月23日に海水から検出された「ジルコニウム95は燃料棒の被覆管の材料で、被覆管が溶けて漏出した」。
 このほか、同じ海水からルテニウム105とモリブデン99、テクネチウムを検出。さらに、肝臓や骨に蓄積してガンになりやすいトリウム232やアメリシウム241なども検出された。主に骨に蓄積して骨腫瘍を起こすストロンチウム90やラジウム226も出た。
 目に見えない放射性物質が複数かつ大量、漏出し飛散し、福島周辺の大気と陸と海に放射線を注ぎ続けているのだ。
 政府は、ヨウ素131やセシウム137の実測データを一部公開しているが、その他の、上記のような放射性物質の詳細は、まだ明らかにしていない。

 以上、一橋文哉(ジャーナリスト)/本誌取材班「米軍機密文書入手! 福島原発の『危険な話』」(「新潮45」2011年月6号)に拠る。

   *

 東電は、5月23日に原子力安全・保安院へ提出した報告書(24日公表)の中で、2号機では、3月11日に発生した地震から21時間後に直径10センチの穴が開いた可能性が高く、さらに15日に起きた水素爆発で、同10センチの別の穴が開いた、と推定している(現場に立ち入って確認することができないため、穴の大きさなどは推定にとどまる)。また、1号機~3号機のすべてで震災後に炉心溶融が起きた、との見解も(ようやく)示した(2011.05.25 CNN.co.jp)。

 報告書によれば、2号機の冷却システムが停止し、燃料の出す熱で水が減り、圧力容器内の燃料棒(長さ約4メートル)下部まで水位が低下した。(1)燃料棒の一部が水につかった場合(2)、水位が回復せずに燃料が露出し続けた場合、の2通りでシミュレーションしたところ、2号機は地震から77時間後の14日午後8時ごろから炉心の損傷が開始。(1)の場合は燃料の半分程度が圧力容器の底に落下し、残り半分は本来の位置にとどまった。(2)の場合は大部分の燃料が落下した。東電は、(2)の方が現実に近い、とみている。2号機では101時間後の15日午後8時ごろに燃料の大部分が圧力容器の底に落下する炉心溶融が起き、6~8時間後に圧力容器が破損した。2号機では計測された圧力データから、格納容器に10センチ相当の複数の穴が開いている可能性が浮かんだ。1~3号機で水素爆発が発生したが、燃料棒損傷で生じた水素の量は、1号機800キロ、2号機400キロ、3号機600キロと推計した。また、冷却システムが停止し、注水を開始するまでの数時間で、燃料棒を溶融させる3,000度近くに達した(2011年5月25日 毎日jp)。
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【震災】「創造的復興」による二次災厄 ~復興災害~

2011年05月24日 | 震災・原発事故
 最も基本的な問題は、復興のミッションをどこに設定するか、だ。
 「復興構想会議」は、4月14日の初会合で5項目の基本方針を示した。
 財源問題は重要だが、それは手段であり、根本問題は何をするか、だ。その点で、第3項目の「創造的復興」というキーワードは本質的な意味を持つ。
 「会議」のメモは、きわめて具体的なハード整備のイメージを提示している。が、はたしてそれが創造的復興と言えるか。
 他方、「被災地主体の復興」という項目では、被災者・被災自治体のニーズや意向を受け止めつつ日本社会が共有すべき安全水準に照らして全体計画をつくる、と言うが、現時点では被災者の多くが避難状態で、ニーズがきちんと捉えられているとは思えない。「にもかかわらず、こうした具体的なハード整備の目標が述べられるのはどういうことか。被災者ニーズと創造的復興が提示するハード整備は整合するのか」
 本当にすべての被災者が元の水準以上に到達できるのか。

 阪神・淡路大震災の「創造的復興」はどうだったか。
 「光と影」をもたらした。すべての分野で誰もが以前より高いレベルに復興した、とはとても言えない。いまだ立ち上がれない人、復興途上で落命した人が少なからずいる。
 光の面は、高速道路や鉄道や港湾施設などのインフラで、これらは総じて早く立派に復旧・復興した。
 再建された高速道路は、交通運輸の役に立っているが、結局のところ以前と同じような景観破壊・公害元凶の道路であり、環境によいまちづくりとはまったく逆行したものだった。多額の資金を投入した神戸空港も採算がとれず、いまや手の打ちようがない状態だ。
 火災で全焼した新長田駅南地区では、面積20ヘクタール、総事業費2,700億円の巨大再開発事業が創造的復興のシンボルとして行われた。しかし、16年経った今も継続中だ。完成したビルの商業・業務床の売却・賃貸は進まず、地下や2階は軒並みシャッター通りとなっている。07年12月の時点で、実質赤字は313億円。破格の賃貸料ダンピングを行い、新規テナントには内装費まで面倒を見ている。こうしたうデタラメな運営の結果、再開発ビルの床には価格がつかなくなった。廃業を決意した商店主は床の売却処分さえできず、税金と共益費の支払いに追われている。被災商店主は、今なお開発的復興の犠牲となっている。
 復興住宅は、新しくて設備が整い、家賃は安い。最大の問題は、コミュニティの喪失だった。社会的孤立の最悪の結果が孤独死だ。仮設住宅と復興公営住宅の孤独死は、この16年間で合計914人に上る。
 10年になって、新たに借り上げ公営住宅の退去問題が発生した。借り上げ公営住宅(県・市が民間事業者・都市再生機構の住宅を借り上げて被災者に低家賃で貸す)では、20年の契約期間がまもなく切れる。今から順次、転居せよ・・・・。当時60歳だった被災者は、もうすぐ80歳になる。
 こうした復興の過程における二次的災厄を「復興災害」と呼ぶが、「創造的復興」は弱い人々に復興災害をもたらすのである。

 「創造的復興」の実態をよく示すのは、823項目に及ぶ復興事業費の使われ方だ。
 阪神・淡路大震災の被害額は10兆円と言われる。復興事業費16.3兆円が投じられた。その中身を見れば、実際に復旧・復興に投じられたのは多く見積もっても10兆8千億円にすぎず、残りは将来の防災や震災と関係のない通常事業だ。
 「被害額10兆円」は相当小さく見積もられており、建物倒壊棟数や再建築費を正確に計算すれば18兆円に上ると言われる。
 被災者の救済・復興に投入された資金は不十分だった。復興には直接関係しないハード事業に復興の名がかぶせられ、多額の資金が投じられた。その結果が光と影となって現れたのだ。

 復興は、被災者の生活再建を第一義とすべきだ。
 その上で、さらに高い水準に到達させたり、将来の防災の事業に要する費用は、復興ではなく、別勘定にすべきだ。
 「復興は遠い将来のためでなく、被災者が生活と生業を取り戻し、立ち上がるためになされねばならない。若者に働き口があり、地域に住み続け、電灯を受け継ぎ、新しい文化や芸術が育っていくような地域社会にしていくことこそが、『創造的復興』である。巨大な防波堤や高台の住宅や病院・学校をつくっても、そこに人間がいないのでは『創造的復興』とは言えないだろう」

 以上、塩崎賢明(神戸大学大学院工学研究科教授)「“創造的”復興で2次災厄も 阪神大震災の教訓を生かせ」(「週刊エコノミスト」2011年5月24日号)に拠る。
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【震災】「脱原発」に舵を切った大新聞、原発推進に固執する大新聞

2011年05月23日 | 震災・原発事故
 テレビにかぎらず、日本の大メディアはこれまで原発に関して政官財に追従し、原発依存からの脱却を正面きって説くことに腰が引けていた。原発と共振してきた、と批判されても仕方ない道を歩んできた。
 ところが、新聞報道に関しては、4月に入って事態が変わってきた。

●毎日新聞【脱原発】
 4月15日付け朝刊の社説は、「震災後 地震国の原発」という見出しのもと、「政策転換を図れ」と題する。
 「予測不能な大地震だけでも日本が抱える大きなリスクである」
 海岸沿いに54基の原発が立ち並ぶ。「地震国日本は原発と共存できるのか。真摯に検証した上で、早急に打つべき手を打ちながら、原発政策の大転換を図るしかない」
 大地震の影響を考えれば、「女川原発など被災した原発の再開も非常に慎重に考えざるをえない。今後の原発の新設は事実上不可能だろう」。「大災害を転機に、長期的な視点で原発からの脱却を進めたい」
 具体的には、「危険度に応じて閉鎖の優先順位をつけ、依存度を減らしていきたい」。第一に廃止すべきは浜岡原発だ。
 最後に、脱原発への道として「温暖化対策で注目された再生可能エネルギーの促進や低エネルギー社会の実現がひとつの鍵になるはずだ。地震国日本に適した電源と、それに基づく暮らし方、今こそ探っていく時だ」。

 4月15日付け朝刊の左肩に、原発を抱える(建設中、建設計画中を含む)道県と市町村の計39自治体の首長に対して実施したアンケート調査の結果を発表した。現状の対策のまま今後も運転を継続できる、と答えたのは北海道泊村と福井県高浜町だけだった。
 高浜町と泊村は、原発設置受け入れ交付金に財政が依存している割合が全国トップ・クラスだ。その事実を毎日は付言していない。

 社説が打ち出した「脱原発」路線に、名物コラム「風知草」が4月18日付けで「浜岡原発を止めよ」と題して応援歌を送っている。

●朝日新聞【脱原発】
 4月20日付け朝刊の社説は、「脱・原発にかじを切れ」と題する。
 「ただ、福島第一原発の事態収拾には時間がかかる。その決着を待たず、原発に依存してきた国のエネルギー政策を見直す議論を直ちに確かめるべきだ」
 具体的な方法として、「今回の事故を教訓に、一定の原発は安全管理を徹底することで動かしていく」一方、「最新の地震研究などをもとに、事故のリスクが多すぎる原発は廃止への道筋をつけるような仕分け作業」を提案する。
 エネルギー政策の議論は時間がかかるし、夏の電力不足は目前だ。「エネルギー需要の拡大を前提に組み立てられてきた過去の政策からかじを切る好機でもある」

●読売新聞【原発推進】
 「原子力の父」正力松太郎を元社主にいただいていた同紙は、原発についてその本音を剥き出しにする。事故を逆手にとって、、他のさまざまな分野の社論実現に向けて大車輪だ。
 これだけ重大な事故が起きているのに、3月29日付け社説は「全世界が注視する日本の対処」と題し、「エネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点からも、原発は安全に管理する限り、電力供給で重要な位置を占め続けよう」と宣言する。  
 4月1日付け社説は「子ども手当」という小見出しのもと、「震災予算に最大限振り向けよ」と題する。「赤字国債の増発や、何らかの増税が避けられまい」と述べ、子ども手当・高校授業料無償化のようなバラマキ政策の撤回が前提でなければ国民の理解は得られまい、と主張する。
 4月1日付け社説は「原発と温室ガス」という小見出しがある。「25%削減の撤回が不可欠だ」という主見出しを持つ。原発事故による未達成の罰則を避けるため、京都議定書で日本が約束した目標を撤回する必要がある、というものだ。上記のいくつかの例のように、経団連の主張と似かよっている。
 極めつきは、4月8日付けの社説だ。「復興の青写真を早急に示せ」と題する。「期限付き大連立で強力政権を」という脇見出しが振ってある。福田康夫・小沢一郎会談に遡る渡邊恒雄社主の大連立構想がこの危機まで利用して登場している、と見られても仕方あるまい。

●日本経済新聞【原発推進】
 同紙が得意とする一面の左側の続きものでも、一般の記事でも、社説でも、原発の運用に焦点を絞ったものばかりで、原発依存をどう減らしていくか、というような根源的なものは皆無だった。

【参考】ニューヨーク・タイムズ
 3月13日付けワシントン電(一面トップ)・・・・死傷者が増え、放射能の危険が大きくなり、日本は混乱(脇見出し:原子炉からの放射性物質の流出は数週間あるいは数ヶ月続く見こみ)
 同日付けワシントン電(中面)・・・・原子炉の部分的溶融の解説(写真と図付き)
 3月16日付け東京電(一面トップ)・・・・別の原子炉の容器にひび割れの可能性で危機が広がる
 3月17日付けワシントン電(一面トップ)・・・・米国、原子炉で「極めて」高濃度の放射能を探知、日本側と見解が割れる
 3月18日付けワシントン電(一面トップ)・・・・(無人機の計測で)放射性物質の拡大を確認
 同日付け東京電(中面)・・・・原子炉よりも使用済み核燃料がより危険

 以上、神保太郎「メディア批評第42回 (2)ついに切られた『脱・依存』への舵」(「世界」2011年6月号)に拠る。
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【震災】原発>握りつぶされた「東電解体案」 ~東電の政治力~

2011年05月22日 | 震災・原発事故
 5月13日に発表された東電賠償スキームは、日本航空の処理と比べると、甘さが際だつ。
 最大の要因は、東電の経済産業省支配にある。
 今回の賠償スキームは、「内閣官房原子力発電所事故による経済被害対応室」の室長、北川慎介・総括審議官が作成した。北川審議官は松永和夫・経産省事務次官の直系だ。電力会社の地域独占体制を温存してきた経産省主流派の産物が、今回の賠償スキームだ。
 産業再生機構への出向経験もある古賀茂明・同省大臣官房付が作成した「東京電力の処理策」は、握りつぶされた。いわゆる“古賀ペーパー”は、送電と発電を切り離し、地域独占を打破する大胆な改革案だ。村田成二・事務次官時代の02年に検討された「電力自由化(送発電分離)」が甦ったような内容で、しかも東電の経営責任も厳しく問うものだ。
 危機感を抱いた経産官僚と財務官僚が、東電に甘く国民に負担を回す「原発賠償機構案」を広め、厳しい破綻処理を封じこめたのだ。

 “古賀ペーパー”は、「東電による日本支配の構造」を次のように指摘する。
 自民党には、全国の電力会社に古くから世話になっている政治家が多い。電力会社は、各地域の経済界のリーダーであり、資金面でも選挙活動でも、これを敵に回して選挙に勝つのは極めて困難だ。だから、今回の事故後にも、自民党の政治家で具体的に東電解体論などを唱えているのは、河野太郎議員ら極めて少数だ。東電に厳しい政策は、なかなか通りにくい。逆に東電を守ろうとする露骨な動きも表面化している。
 民主党も、電力総連の影響を強く受ける。内閣特別顧問の笹森清は東電出身で、電力総連会長から連合会長に上り詰めた人物だ。

 13日の閣議決定前後に、民主党内“東電応援団”が表面化した。
 玄葉光一郎・国家戦略担当相は、金融機関の債権放棄に係る枝野発言を「言い過ぎた」とテレビで批判した。旧民社党議員もスキーム決定寸前に、国が賠償責任を果たせ、東電の免責を認めよ、と発言。
 ちなみに、電力総連は、民主党候補者を推薦する場合、反原発の発言をしないこと、と書かれた文書にサインさせる。多くの民主党議員が反原発・脱原発を明言しない大きな原因になっている。
 経営陣と労組が、同じ立場で原発を推進、国会議員に“縛り”をかけているのだ。
 “古賀ペーパー”は提案する。「東電の影響力をできるだけ排除した形で政治的判断をできるようにするために、直ちに東電及び東電労組による政治家への献金、便宜供与、ロビー活動の禁止などの措置をとる」

 閣議決定の日、「環境エネルギー政策研究所」は、「被害救済と国民負担最小化のための福島原発事故賠償スキーム」をプレスリリースした。いわく・・・・
 東電の「利益」から賠償資金を捻出する政府のスキームでは、東電の再編成(送発電分離など)は事実上不可能になる。資産売却は「利益」減少となるため、東電のリストラを不徹底とし、賠償金は電気料金へ容易に転嫁される、云々。

 賠償スキームは閣議決定されたが、曖昧な内容【注】なので解釈に幅があり、東電解体の可能性も残っている。
 東電解体に踏みこもうとする推進派(改革派)と反対派(守旧派)のバトルが増すのは必至だ。

 以上、横田一「東京電力の正体 ②賠償スキームは誰を救済しているのか? 阻まれた『東電解体案』“古賀ペーパー”」(「週刊金曜日」2011年5月20日号)に拠る。

 【注】「『今回のスキームには曖昧な部分が多く、いろんな逃げ道を作っている感じ。結局、菅総理も誰も自分の任期中に公的資金を投入したくなく、判断を先延ばしにしただけ。何の解決にもなっていません』(21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹)」(記事「東電管内『電気代』は38%上昇する」、「週刊新潮」2011年5月26日号)。
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【震災】原発>国民に負担を転嫁する東電賠償スキーム ~電気料金値上げ~

2011年05月22日 | 震災・原発事故
 「週刊ダイヤモンド」誌は、「極秘資料」を入手した。これは、政府案を作成する際、東電の将来の財務状況について政府内部で独自に試算したシミュレーションだ。ペーパーの右上には、「会議後回収」の判が押され、政府高官しか目にしていない。
 この資料は、政府案を作成する際に東電の将来の財務状況について政府内部で独自に試算したものだ。

(1)破綻させないことを前提にした都合のいい数字の積み上げ
 試算の前提条件として、被害者への賠償金を10兆円と仮定し、2011年度から5年にわたって年間2兆円ずつ支払う、としている。資金は機構から援助されるが、東電は機構に対し、負担金というかたちで25年かけて返済する、という設定だ。
 シミュレーションは、「絶対に東電を破綻させない」という大前提で作成されている。電力の安定供給を維持しつつ、確実な賠償の支払い義務も負わせる必要があるからだ。
 そのため、出発点として「社債でのリファイナンスがメインストーリー」とされている。つまり、社債を発行し、自ら資金調達できる状態にまで自立することがゴールとされている。
 東電が15年度から社債を7千億円発行する、と想定している。そのためには、前年度には黒字化しなければならないし、社債発行には格付けでA格が必要だ。そこで、自己資本比率が最低でも10%を維持していなければならない。
 11年度に10兆円の賠償金が負債に乗ると、東電はすぐさま債務超過に陥る。そのため、「機構宛請求権」なるものを資産側に同じ額だけ計上し、相殺している。資産と負債に等しい額を乗せても、維持しなければならない自己資本比率は引き下がるから、11年度に機構が優先株を引き受けるかたちで1兆8千億円を資本注入することにしている。
 それでもなお、原子力発電の代わりとなる火力発電の燃料費がコストを押し上げるため、12年度末には自己資本比率が10%を下回る危険性がある。それを回避するためには約1兆円の電気料収入の増加が必要で、その多くを電気料金としていとも簡単に転嫁することとしている。
 かかる“荒業”を使わなければ、社債の発行やリファイナンスがままならない。東電が破綻の憂き目に遭わないように、さまざまな数字を“創作”しているのだ。

(2)すべて電気料金に転嫁
 (1)の前提条件が甘い。格付けが維持されていても社債を発行できるとは限らない。自己資本比率が10%以上であればA格かといえば、それだけで決まるわけではない。原発の廃炉費用も、10兆円という見通しもあるなかで、わずか1.5兆円しか計上していない。ことに、賠償金を10兆円と仮定しているが、バランスシート上で資産と負債に同額を計上しているため、賠償額がいくらであろうと東電自身はなにも傷まず支払うことができる、という奇策が講じられているのだ。
 では、東電がこうしたスキームを使わねばならないほど追い込まれているか、といえば、そうでもない。
 東電が取り組むとしているコストカットは、5兆5千億円の営業費用のうち、人件費の1割カットなどわずか3,100億円にとどまる。少なくとも6千億円は所有しているはずの不動産や株式などの資産の処分額は、3千億円にすぎない。これとは別の、1千億円の海外資産も保有したままだ。
 東電だけではない。株主責任という意味でいえば減資するのが普通だが、株主の負担は検討されていない。それどころか、18年度からは既存株主への配当を再開させる、としている始末だ。
 金融機関や社債権者に至っては、毎年1,545億円の利息が据え置かれており、まったく傷まない。「こうした状況で利息が保証されるというのも、なんとも都合のいい話ではある」
 つまり、東電はもちろん、本来責任を負うべき利害関係者すべてが責任を逃れるスキームだ。
 唯一、負担を押し付けられているのが国民だ。「極秘資料」を基に電気料金を試算すると、一般世帯の月額負担を6,142円とすれば、東電管内の一般家庭の負担は25年間で約30万円上乗せされる。全国で見ても10,800円(中国電力)~38,700円(関西電力)だ。
 電気料金への転嫁だけではない。賠償機構に入る資金の出どころは、すべて税金だ。
 「結局負担を強いられるのは国民だけなのだ」

 以上、池田光史/小島健志/山口圭介(本誌編集部)「独自入手の極秘資料が暴 く国民欺く東電賠償スキーム」(「週刊ダイヤモンド」2011年5月28日号)に拠る。

   *

 (a)原発が使えない以上、火力発電に頼らざるをえない。となると、燃料費が年間7千億円から1兆円余計にかかる。このコスト増などを賄うためには、電気料金を16%値上げせざるをえない。
 (b)新設される機構に、東電は毎年2千億円を拠出しなければならない。このうち、1千億円(東電を除く電力9社が分担する額)は「総括原価方式」のコストとして認められる。つまり、2%値上げできる。
 (c)福島原発の廃炉にどれだけのコストがかかるか、不明だ。政府は1兆5千億円と見込むが、財務省単独の試算では10兆円。その差額分も値上げで賄うしかない。
 (d)東電は、為替変動による燃料調達費の増減を調整するため、毎月料金の改定を行っている。6月も、原油高を受けて値上げする予定になっている。
 (e)東電管内で15%の節電が行われた場合、その分東電の収入が減る。収入が減っても利益を出さねばならないから、当然値上げで賄うことになる。
 ・・・・(a)及び(b)で18%、(c)、(d)及び(e)その他で20%、合計38%の値上げになる。月の電気代が1万円なら、一挙に4千円近く値上げすることになる。
 さらに留意しておくべきは、現時点では賠償額がどれだけ膨らむか、不透明なことだ。5兆円どころか、20兆円はいく、という試算もある。

 以上、記事「東電管内『電気代』は38%上昇する」(「週刊新潮」2011年5月26日号)に拠る。
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【震災】原発>東電退職者の企業年金は月額40万円

2011年05月21日 | 震災・原発事故
 東電の社員数は38,000人。役員は、取締役が20人、執行役員が29人、顧問が21人という大世帯だ。
 その上、関連会社が63社ある。
 東電という名の巨大公害企業には、“ムダ”が蔓延している。
 どれだけ身を削ることができるのか。それが今後の最大の課題だ。

●企業年金
 東電OBには、65歳から10年間、公的年金とは別に企業年金が支給される。平均して月額40万円だ。
 老齢厚生年金の月額を23.3万円とすると【注】、東電OBの65歳から10年間の収入月額は、少なくとも63.3万円だ。

 【注】夫は40年間就労、妻は専業主婦、現役時代の平均収入を39.3万円とした場合(Wikipedia「厚生年金」の項目に拠る)。

●子会社
 「東電不動産」は、東電の不動産部門を担い、オフィスビル管理やオール電化の賃貸マンションに加え、日本橋と田町にビジネスホテルも経営している。
 「FISH・ON!王禅寺」は、釣り場(神奈川県川崎市および山梨県都留市)を経営し、エサ釣り、ルアー、フライそれぞれの釣りが楽しめる。電力事業とは無縁のレジャー産業だ。   
 「当間高原リゾート」は、高原リゾート施設「ベルナティオ」(新潟県十日市町市)を経営している。ゼネコンの鹿島も出資し、開発費は425億円。東京ディズニーランドの10倍の敷地にゴルフ場、宿泊施設や温泉などがある。
 「テプコーユ」は、燃料の納入代行業務やリース事業を行う。東電社員のために、“格安マイカーリース”を提供している。現在、特選車キャンペーン中で、トヨタのプリウスが月額35,175円で借りられる。
 「新日本ヘリコプター」は、中部電力も50%出資し、14機のヘリコプターを所有する。送電線のパトロールが本来の業務だが、ナイトフライトや貸切遊覧飛行も受けている。
 「東電ハミングワーク」は、障害者雇用促進のため設立され、故・平岩外四元社長の蔵書を集めた「平岩文庫」の管理業務を兼ねる。
 「リサイクル燃料貯蔵」は、使用済核燃料の貯蔵・管理を行うが、「すじ青のり」という品種の青海苔養殖も手がける。

 東電は、公益事業者ゆえに、全ての経費に一定の報酬を上乗せして電気料金を徴収できる特権を与えられている(「総括原価方式」)。必ず儲けがでる。子会社の会計制度も、電気事業会計をそのまま導入していて、一定の利益が出るように東電が調整している。「いわば、東電から利益の“飛ばし”が行われているのだ」
 それだけではない。

 電力会社は、変電所用の用地など、と称して市街地の付加価値の高い土地を複数所有する。それを子会社が駐車場にする際、電力会社から子会社への土地取引は時価ではなく、簿価で行われる。原価が安く抑えられ、その分儲けが出る。
 公益事業という独占事業で得た資金で、子会社が殿様商売をやっているのだ。
 そして、儲けが電力料金の値下げに貢献することはない。
 浜松町周辺の駐車場に隣接する一等地に、東京電力が所有する古びた二階建ての建物がある。土地は国際興行のもので、東電の子会社「東京リビングサービス」が書類を置く倉庫として使っている。狙いは、将来の再開発利権だ。
 東電は、寝かせておくだけで、いずれ利益を生む“打ち出の小槌”をいくつも持っている。
 
 「テプスター」は、東電の燃料関係子会社だ。東電副社長から参議院議員に転身した加納時男が代表を務めていた自民党の政党支部は 、「テプスター」所有のビルに事務所を構えていた。かつては通産・エネルギー政策や石油業界に強い自民党議員も「テプスター」が支援していた(らしい)。「テプスター」は、政治と東電をつなぐパイプ役だった。

 以上、記事「東電よ、血税投入の前に身銭を吐き出せ ~大欲者の企業年金は月40万円、社員に格安で自家用車をリース・・・・~」(「週刊文春」2011年5月26日号)に拠る。
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