●医療
所得格差は、健康状態や寿命を左右する。【海原純子・白鴎大学教育学部教授/ハーバード大学客員研究員(心療内科医)】
米国の調査では、所得格差が大きい州ほど、死亡率、心臓発作や癌の罹患率、殺人件数が高い(1996年、ハーバード大学)。所得格差が大きい州ほど、平均寿命が短い(1992年、ウィルキンソン博士)。単に所得が高ければ健康で長生きするわけではない。富裕者が少ない=所得格差が小さいコミュニティほど住民はストレスフリーで、幸福度が高く、健康だ【注】。【海原教授】
2010年の日本人の平均寿命は、女性が86.39歳(26年連続世界一)、男性が79.64歳(世界4位)。
世界に誇る国民皆保険制度の賜だ。これがTPPによって崩壊する可能性がある。【三橋貴明・経済評論家】
TPP参加によって営利目的を優先する病院が参入し、健康保険外の自由診療をする病院が増える。その結果、公的保険の適用範囲が狭まる。医療の米国化が危惧される。国は、医療費高騰による財政赤字を改善したいから、自由診療の適用範囲を拡大し、保険診療を縮小する方向に動くだろう。富裕層だけが質の高い医療を受け、寿命を延ばすが、貧困層では寿命が縮まる可能性がある。【森田豊・医療ジャーナリスト】
ちなみに、2009年の米国人の平均寿命は79歳(世界29位)で、先進国のなかでは低い。
【注】「貧困は、皆でその苦を分かち合うとき、静かに耐えることができる」(スウェーデン国会におけるエルンスト・ヴィクフォーシュの演説、1928年)【J・ナセニウス/K・リッテル(高須裕三/エイコ・デューク・訳)『スウェーデンの社会政策 -分かち合う福祉-』(光生館、1979)のエピグラフ】
●食の安全
TPP参加によって食文化の変質が起こり、寿命に影響する。日本人の平均寿命は、1961年の国民皆保険制度導入以前から延びていた。最大の原因は食だ。長寿を誇った沖縄男性の平均寿命が、1995年の4位から2000年には突如26位に転落したのは、ゴーヤや豆腐などの伝統食が、米国統治の間にステーキなどの欧米食にとって代わられた影響が出てきたことが一因とされる。【田辺功・医療ジャーナリスト】
日本人は、食に高い安全性を求める。
(a)農薬・・・・農作物のポストハーベスト(収穫後)農薬は、国民の健康や寿命を脅かしかねない。日本では、法律上、収穫後の農作物に対する農薬の使用を禁じている。しかし、米国は日本に輸出する農産物に対し、米国基準を認めるよう、要求している。収穫前後にかかわらず、最大残留農薬基準を設定するよう、迫っているのだ。【安田節子・埼玉大学非常勤講師/食政策センタービジョン21代表】
<例1>サクランボに使用する殺菌剤キャプタン・・・・日本基準は5ppmだが、米国基準は100ppm。
<例2>殺虫剤マラチオン・・・・日本基準は0.1ppmだが、米国基準は8ppm。
<例3>小麦に使う殺菌剤イマザリル・・・・日本基準は0.01ppmだが、米国基準は0.5ppm。
農薬の多量摂取が懸念される。日本では、3・11後、放射能汚染が心配される国産より外国産の農産物を選ぶ人がいるが、どちらが安全という問題ではない。農薬と放射能汚染の相乗効果で毒性が倍加する可能性がある。【安田講師】
(b)遺伝子組み換え食品・・・・米国は、遺伝子組み換え食品表示の撤廃も求めている。表示がなくなれば、それだけ消費者の選択肢がなくなる。【安田講師】
遺伝子組み換えのジャガイモを食べさせたラットは、臓器の重量が小さかったり、免疫が低下する。遺伝子組み換え大豆を食べさせたラットに流産や成長遅延が多いこともロシアでは報告されている。【安田講師】
(c)衛生・・・・現在、米国産の輸入牛肉に課している「月齢0ヵ月以下」規制の撤廃も米国は求めている。肉牛生産量の多い米国では、トレーサビリティーが不可能なうえ、衛生管理が徹底していない。感染症のトップが牛肉由来のサルモネラ菌による。米国のみで認可されている人工ホルモン剤も使用されている。TPPによる輸入規制緩和で、安価でも質の悪い牛肉が食卓に上がる可能性がある。【安田講師】
以上、菊池香「TPPが縮める寿命と家計」(「サンデー毎日」2011年12月4日号)に拠る。
【参考】「【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~」
「【経済】中野剛志『TPP亡国論』」
「【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ」
「【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」」
「【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~」
「【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~」
「【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差」
「【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~」
「【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~」
「【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~」
「【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~」
「【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~」
「【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判」
「【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~」
「【震災】復興利権を狙う米国」
「【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題」
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所得格差は、健康状態や寿命を左右する。【海原純子・白鴎大学教育学部教授/ハーバード大学客員研究員(心療内科医)】
米国の調査では、所得格差が大きい州ほど、死亡率、心臓発作や癌の罹患率、殺人件数が高い(1996年、ハーバード大学)。所得格差が大きい州ほど、平均寿命が短い(1992年、ウィルキンソン博士)。単に所得が高ければ健康で長生きするわけではない。富裕者が少ない=所得格差が小さいコミュニティほど住民はストレスフリーで、幸福度が高く、健康だ【注】。【海原教授】
2010年の日本人の平均寿命は、女性が86.39歳(26年連続世界一)、男性が79.64歳(世界4位)。
世界に誇る国民皆保険制度の賜だ。これがTPPによって崩壊する可能性がある。【三橋貴明・経済評論家】
TPP参加によって営利目的を優先する病院が参入し、健康保険外の自由診療をする病院が増える。その結果、公的保険の適用範囲が狭まる。医療の米国化が危惧される。国は、医療費高騰による財政赤字を改善したいから、自由診療の適用範囲を拡大し、保険診療を縮小する方向に動くだろう。富裕層だけが質の高い医療を受け、寿命を延ばすが、貧困層では寿命が縮まる可能性がある。【森田豊・医療ジャーナリスト】
ちなみに、2009年の米国人の平均寿命は79歳(世界29位)で、先進国のなかでは低い。
【注】「貧困は、皆でその苦を分かち合うとき、静かに耐えることができる」(スウェーデン国会におけるエルンスト・ヴィクフォーシュの演説、1928年)【J・ナセニウス/K・リッテル(高須裕三/エイコ・デューク・訳)『スウェーデンの社会政策 -分かち合う福祉-』(光生館、1979)のエピグラフ】
●食の安全
TPP参加によって食文化の変質が起こり、寿命に影響する。日本人の平均寿命は、1961年の国民皆保険制度導入以前から延びていた。最大の原因は食だ。長寿を誇った沖縄男性の平均寿命が、1995年の4位から2000年には突如26位に転落したのは、ゴーヤや豆腐などの伝統食が、米国統治の間にステーキなどの欧米食にとって代わられた影響が出てきたことが一因とされる。【田辺功・医療ジャーナリスト】
日本人は、食に高い安全性を求める。
(a)農薬・・・・農作物のポストハーベスト(収穫後)農薬は、国民の健康や寿命を脅かしかねない。日本では、法律上、収穫後の農作物に対する農薬の使用を禁じている。しかし、米国は日本に輸出する農産物に対し、米国基準を認めるよう、要求している。収穫前後にかかわらず、最大残留農薬基準を設定するよう、迫っているのだ。【安田節子・埼玉大学非常勤講師/食政策センタービジョン21代表】
<例1>サクランボに使用する殺菌剤キャプタン・・・・日本基準は5ppmだが、米国基準は100ppm。
<例2>殺虫剤マラチオン・・・・日本基準は0.1ppmだが、米国基準は8ppm。
<例3>小麦に使う殺菌剤イマザリル・・・・日本基準は0.01ppmだが、米国基準は0.5ppm。
農薬の多量摂取が懸念される。日本では、3・11後、放射能汚染が心配される国産より外国産の農産物を選ぶ人がいるが、どちらが安全という問題ではない。農薬と放射能汚染の相乗効果で毒性が倍加する可能性がある。【安田講師】
(b)遺伝子組み換え食品・・・・米国は、遺伝子組み換え食品表示の撤廃も求めている。表示がなくなれば、それだけ消費者の選択肢がなくなる。【安田講師】
遺伝子組み換えのジャガイモを食べさせたラットは、臓器の重量が小さかったり、免疫が低下する。遺伝子組み換え大豆を食べさせたラットに流産や成長遅延が多いこともロシアでは報告されている。【安田講師】
(c)衛生・・・・現在、米国産の輸入牛肉に課している「月齢0ヵ月以下」規制の撤廃も米国は求めている。肉牛生産量の多い米国では、トレーサビリティーが不可能なうえ、衛生管理が徹底していない。感染症のトップが牛肉由来のサルモネラ菌による。米国のみで認可されている人工ホルモン剤も使用されている。TPPによる輸入規制緩和で、安価でも質の悪い牛肉が食卓に上がる可能性がある。【安田講師】
以上、菊池香「TPPが縮める寿命と家計」(「サンデー毎日」2011年12月4日号)に拠る。
【参考】「【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~」
「【経済】中野剛志『TPP亡国論』」
「【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ」
「【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」」
「【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~」
「【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~」
「【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差」
「【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~」
「【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~」
「【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~」
「【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~」
「【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~」
「【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判」
「【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~」
「【震災】復興利権を狙う米国」
「【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ」
「【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題」
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