(1)江戸時代には、中央集権国家はなかった。徳川家は天領の経営で手一杯。地方各藩は、経済も法も文化も自ら決定し、自ら努力した。藩主導による地方の発展があったからこそ、明治維新は起こった。
地方ではほとんどの人が食糧やものの生産に従事していた。
他方、都市には武士たちが暮らし、彼らの消費生活を支える多様な仕事があった。特定の都市に人が過度に集中することはなく、三都や各藩の主要都市などに人が分散していた。江戸は世界最大の人口を擁する都市だったが、それでも今のように全人口の1割超が集中するようなことはなかった。
(2)7月10日以来、衆参両院で行われた閉会中審査の中心は、加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部新設に係る質疑だった。国民にとって重要な論点は二つ。
①政治権力を持つ者が、その権力を使って自らの関係者に有利な画策をしたか。
→内閣府と文科省の関係者が「言った」「言わない」の水掛け論が続き、疑念は払拭されなかった。
②「国家戦略特区」や現在の「地方創生」政策は果たして正しいのか。
→「規制緩和すべきかどうかと、加計学園の獣医学部をつくるべきかどうかは別次元の話」【前川喜平・前文科事務次官/参考人】
では、「国家戦略特区」という方法による規制緩和は、日本にとって良い流れを生み出せるか。岩盤規制を壊して外資を呼び込み、経済成長をなしとげたか。
→現在認定されている242件のうち、外資による事業はゼロ。
(3)少子化に拍車がかかった今、大学機関の新設や自治体への誘致が進む現状をどう考えるか。4割の私立大学が定員を満たせない状況下での大学誘致は、経済活性化や地元の創生につながるか。
「国家戦略特区」で学部を新設するために、自治体は用地を無償で提供し、多大な寄付をしている。しかし、開学してもその地域が投資に見合う活性化を手にできるとは限らない。
大学が学生でにぎわうのは1年のうち約7ヵ月。残りの5ヵ月は、その地域の交通機関や飲食店に大きな利益はない。しかも、昨今の学生は倹約志向なので、価格を抑えねばならない。大学は、利益重視の業者なら敬遠する存在なのだ。
アルバイト先に近い町に住みたい学生は郊外に住もうとしない、という現象もあった。
大学誘致で地域を活性化したいなら、地元住民が中心になって新しい町をつくることだ。学生を「利益をもたらす顧客」とみなしたらうまくいかない。学生をコミュニティの一員と考えて企業を誘致し、働く場所を確保し、安価な住まいや飲食を用意する。それならば、教員も学生もそこで暮らし、やがてはそこの住民にもなるだろう。
そこまでの整備をするための特区であれば、地方創生は実現するだろう。しかし、「国家戦略特区」は特定の人々、組織が「お手盛り」するために使われている。
(4)地方行政は国家の道具ではない。まずは明治以来の中央集権を脱し、地方行政を国から各地域に取り戻す必要がある。
その上で、地方創生は利益という観点でなくコミュニティの再構成という観点から、定住という観点ではなく流動性を前提とした観点から、組み立て直さなければならない。
地方が活性化して、はじめて日本の未来は見えてくる。
□田中優子(法政大学総長)「地方は国の道具にあらず ~現論~」(「日本海新聞」 2017年7月30日)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【森功】【加計学園疑惑】「1校限定」の真の「背景と構図」 ~今治市元幹部は語る~」
「【加計学園疑惑】あの大物政治家に「医学部口利き」疑惑」
「【森功】【加計学園疑惑】もう一人のお友達の「暗躍」 ~下村元文科大臣~」
「【佐藤優】【加計学園疑惑】官邸最高レベル指示を「闇文書」にした理由」
「【加計学園疑惑】獣医学部新設では日本会議人脈、系列中学校では右派系教科書使用」
「【加計学園疑惑】安倍官邸に巣くう加計学園人脈 ~忖度や謀略の裏で“お友達”優遇~」
「【加計学園疑惑】安倍首相答弁にウソ ~獣医師会が反論~」
「【加計学園疑惑】プロセスの再考と公正を迫る前川前次官証言」
「【加計学園疑惑】前川前次官の告発が見事にあぶり出した「メディアの真贋」」
「【加計学園疑惑】説明責任は首相にある ~朝日紙社説・抄~」
「【加計学園疑惑】獣医学部新設に日本獣医師会が「反対」する理由」
「【加計学園疑惑】愛媛県・今治市も「共犯」か ~地元の発言・文書も示す加計学園「総理のご意向」~」
「【神保太郎】首相の妻(安倍昭恵)、日本の公教育を否定」
「【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~」
「【加計学園疑惑】と官邸 ~「総理の意向」隠蔽か~」
「【加計学園疑惑】「忖度」ではなく首相の直接指示か ~首相主導の“官製談合”~」
「【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~」
地方ではほとんどの人が食糧やものの生産に従事していた。
他方、都市には武士たちが暮らし、彼らの消費生活を支える多様な仕事があった。特定の都市に人が過度に集中することはなく、三都や各藩の主要都市などに人が分散していた。江戸は世界最大の人口を擁する都市だったが、それでも今のように全人口の1割超が集中するようなことはなかった。
(2)7月10日以来、衆参両院で行われた閉会中審査の中心は、加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部新設に係る質疑だった。国民にとって重要な論点は二つ。
①政治権力を持つ者が、その権力を使って自らの関係者に有利な画策をしたか。
→内閣府と文科省の関係者が「言った」「言わない」の水掛け論が続き、疑念は払拭されなかった。
②「国家戦略特区」や現在の「地方創生」政策は果たして正しいのか。
→「規制緩和すべきかどうかと、加計学園の獣医学部をつくるべきかどうかは別次元の話」【前川喜平・前文科事務次官/参考人】
では、「国家戦略特区」という方法による規制緩和は、日本にとって良い流れを生み出せるか。岩盤規制を壊して外資を呼び込み、経済成長をなしとげたか。
→現在認定されている242件のうち、外資による事業はゼロ。
(3)少子化に拍車がかかった今、大学機関の新設や自治体への誘致が進む現状をどう考えるか。4割の私立大学が定員を満たせない状況下での大学誘致は、経済活性化や地元の創生につながるか。
「国家戦略特区」で学部を新設するために、自治体は用地を無償で提供し、多大な寄付をしている。しかし、開学してもその地域が投資に見合う活性化を手にできるとは限らない。
大学が学生でにぎわうのは1年のうち約7ヵ月。残りの5ヵ月は、その地域の交通機関や飲食店に大きな利益はない。しかも、昨今の学生は倹約志向なので、価格を抑えねばならない。大学は、利益重視の業者なら敬遠する存在なのだ。
アルバイト先に近い町に住みたい学生は郊外に住もうとしない、という現象もあった。
大学誘致で地域を活性化したいなら、地元住民が中心になって新しい町をつくることだ。学生を「利益をもたらす顧客」とみなしたらうまくいかない。学生をコミュニティの一員と考えて企業を誘致し、働く場所を確保し、安価な住まいや飲食を用意する。それならば、教員も学生もそこで暮らし、やがてはそこの住民にもなるだろう。
そこまでの整備をするための特区であれば、地方創生は実現するだろう。しかし、「国家戦略特区」は特定の人々、組織が「お手盛り」するために使われている。
(4)地方行政は国家の道具ではない。まずは明治以来の中央集権を脱し、地方行政を国から各地域に取り戻す必要がある。
その上で、地方創生は利益という観点でなくコミュニティの再構成という観点から、定住という観点ではなく流動性を前提とした観点から、組み立て直さなければならない。
地方が活性化して、はじめて日本の未来は見えてくる。
□田中優子(法政大学総長)「地方は国の道具にあらず ~現論~」(「日本海新聞」 2017年7月30日)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【森功】【加計学園疑惑】「1校限定」の真の「背景と構図」 ~今治市元幹部は語る~」
「【加計学園疑惑】あの大物政治家に「医学部口利き」疑惑」
「【森功】【加計学園疑惑】もう一人のお友達の「暗躍」 ~下村元文科大臣~」
「【佐藤優】【加計学園疑惑】官邸最高レベル指示を「闇文書」にした理由」
「【加計学園疑惑】獣医学部新設では日本会議人脈、系列中学校では右派系教科書使用」
「【加計学園疑惑】安倍官邸に巣くう加計学園人脈 ~忖度や謀略の裏で“お友達”優遇~」
「【加計学園疑惑】安倍首相答弁にウソ ~獣医師会が反論~」
「【加計学園疑惑】プロセスの再考と公正を迫る前川前次官証言」
「【加計学園疑惑】前川前次官の告発が見事にあぶり出した「メディアの真贋」」
「【加計学園疑惑】説明責任は首相にある ~朝日紙社説・抄~」
「【加計学園疑惑】獣医学部新設に日本獣医師会が「反対」する理由」
「【加計学園疑惑】愛媛県・今治市も「共犯」か ~地元の発言・文書も示す加計学園「総理のご意向」~」
「【神保太郎】首相の妻(安倍昭恵)、日本の公教育を否定」
「【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~」
「【加計学園疑惑】と官邸 ~「総理の意向」隠蔽か~」
「【加計学園疑惑】「忖度」ではなく首相の直接指示か ~首相主導の“官製談合”~」
「【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~」