「原発ゼロの会」は、超党派の国会議員9人で作る【注1】。
7月11日の会合で、次のことを行った。
(1)「東京電力の経営形態に関する提言」の発表【注2】
内容は、原発事故における東電の経営責任を明確化するため、同社を会社更生法に則って破綻処理を行う、等を求める。
家庭用電気料金の値上げが予定され、1兆円の公的資金が早ければ7月末にも投入される。この値上げ分の総括原価に、原発の原価償却費や賠償対応費用等も算入されている点を「原発ゼロの会」は指摘。東電の経営責任があやふやで、合理化も不足している一方、「事故のツケを電気料金に転嫁する姿勢だけが明確」と批判し、再考を求めた。具体的には、5点を提言する。
(a)電力料金の値上げ幅の大幅圧縮。
(b)破綻処理による経営責任の明確化。
(c)発送電の東電からの分離と売却。
(d)独立を前提とした分社化の推進。
(e)賠償・除染費用には上限を設けることなく、国の責任で必要な額の資金注入を行う。
(2)「エネルギー・環境に関する選択肢」の検証
政府のエネルギー・環境会議が6月29日に示した「エネルギー・環境に関する選択肢」についても検証。2030年までに原発依存度を0%、15%、20~25%の3つのシナリオから選ぶ、とする国家戦略室の説明に対し、批判が飛んだ。
●「15%」は既存原発の更新、増設をしない限りあり得ない数字。【浅岡美恵・気候ネットワーク代表】
●再生可能エネルギーを単なる経済負担としてしか捉えていないのはなぜか。【阿部知子・衆議院議員(社民党)】
【注1】阿部知子(社)、近藤昭一(民)、逢坂誠二(民)、河野太郎(自)、長谷川岳(自)、加藤修一(公)、笠井亮(共)、山内康一(み)、斎藤恭紀(き)。【原発ゼロの会公式ブログ】
【注2】「東京電力の経営形態に関する提言」
以上、古川琢也(ルポライター)「超党派「原発ゼロの会」が提言 東電は責任をとり破綻処理を」(「週刊金曜日」2012年7月20日号)に拠る。
*
政府は今、将来の「エネルギー基本計画」作成のため、「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメントを8月12日まで受け付けている。6月に「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」がまとめた3つのシナリオについて意見を政府に伝えるものだ。
この「選択肢」が、問題だらけだ。
(1)シナリオは、2030年までに原発依存度を①0%、②15%、③20~25%の3択とする。これだと、中間をとって両極(①と③)の間に誘導される心理が働きかねない。
(2)国会戦略室が作成した意見募集用の資料には、①では「より大きな再生可能エネルギー、省エネが必要」「省エネ性能が劣る製品の販売制限・禁止」等と大きな制約条件があるかのように記述されている。他方、大飯原発再稼働前は日本の全原発が停止していた事実が無視されている。
(3)資料には、また、「原発依存度を可能な限り減らす」と政府の方針が明示されているものの、②の選択は原発のいっそうの再稼働と稼働率上昇を前提としている。「40年運転制限」の原則を適用すれば、原発の新設もあり得ることになる。
(4)③は②よりもさらに多くの原発新設が必要になり、政府の方針と矛盾する不適格な選択肢だ。
(5)福島原発事故とそれに伴う莫大な賠償などの費用に関する説明がない。
7月19日、国会内で開かれたパブリックコメントに関する政府との意見交換会では、環境団体のメンバーなどから厳しい批判が続出。
●全原発が停止した状態でも支障がなかった以上、直ちにゼロにする選択肢を設けるべきだ。
●シナリオをまとめた「委員会」の委員長が、なぜ原発建設と関係がある新日鉄の会長なのか。
●原発事故で16万人が避難している現実が何も反映されていない。
以上、成澤宗男(編集部)「選択肢に批判集中「エネルギー基本計画」 原発依存度15%に誘導か」(「週刊金曜日」2012年7月27日号)に拠る。
*
「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメントの手法は、明らかに不公平だ。野田政権が、民意は誘導できる、と傲慢にも考えていることが明らかだ。
意見聴取会で配布する「エネルギー・環境に関する選択肢{概要}」に目立つ誘導、トリックを使ったイカサマ議論は以下のとおり。
(1)選択肢①0%、②15%、③20~25%のうち、①では「省エネ性が劣る製品の販売制限・禁止を含む厳しい規制を広範な分野に課し、経済的負担が重くなってでも、相当高水準の再生可能エネルギー、省エネ、ガスシフトを実施する」とある。細かい。しかもネガティブ記述だ。ちなみに、②、③にはネガティブ記述はない。
(2)②と③には原発を動かすという選択肢なのだから、当然、再び原発事故が起きるという想定があり得る。そのコストが明示されていない。・・・・ように見えるが、国家戦略室によれば、pp.7-8に、とても小さなフォントで「原発の社会的費用は1.7円/kWhを下限として試算」がそれだ、という。明らかに表示内容の重要性を無視し、リスクの表記が不公平だ。
(3)③では、「(原発の)新設、更新が必要」と明示されているが、②には原発の「新増設が難しい状況にあるという実情を踏まえた数字」のみ。結局、新規増設するのかしないのかの重要な点が明らかではない。・・・・国家戦略室によれば、原発新規増設は「あり得る」。このシナリオを出すための試算では、新規増設なしの場合もあり得るが、新規増設2基で依存度17%までは②の範囲内にあることを国家戦略室は明らかにした。そうならば、「新規増設もあり得る」と正確に明記すべきだ。このままでは混乱をもたらす。
以上、吉田有里(国会議員秘書)「エネルギー政策を選ぶ資料が実に誘導的かつ情報が不公平 これでは「イカサマ議論」だ」(「週刊金曜日」2012年7月27日号)に拠る。
*
現在、資源エネルギー庁が全国11ヵ所で行っている意見聴取会。2030年の総電力に占める原発の割合について広く国民の意見を聴く(と称する)目的で行われている。
7月16日、名古屋で行われた意見聴取会で、「個人として参加した」(と称する)岡本道明・中部電力原子力本部××課長が原発を擁護し、放射能の直接的な影響で亡くなった人は一人もいない、とうそぶいて、国民を憤激させた。
くだんの岡本いわく、経済成長と安全・命は別ものではない。いわく、経済が冷え込み、消費が衰退し、企業の国際競争力が低下すれば、福島事故と同じことだ。いわく、0%シナリオを選択したら家庭電気料金が2~3倍になるが、それでいいか。
ちなみに、この意見聴取会では、國丸貴紀・日本原子力研究開発機構が、やはり20~25%シナリオを支持する発言を行っている。
その前日、仙台で開かれた同会でも、岡信慎一・東北電力企画部長、関口哲雄・東北エネルギー懇談会専務理事/東北電力OBも、原発推進の立場かtら20~25%シナリオを支持する発言を行っている。
放射能の直接的な影響で亡くなった人はいない、なんて言えば、かえって反発を買うことは誰でもわかる。「それでもエネルギーとして原発は必要です」と下手に出て意見を言うのが普通の感覚だ。常識から相当ずれている。彼らは、原発がないと経済が冷え込み、日本がダメになるというが、ダメになるのは電力会社であって、日本経済ではない。原発はもはや不良債権なのだ。自分の会社がダメになるのと日本がダメになるのとを混同しているのではないか。そもそも、意見聴取会を開いて何の参考にするのか。結果を尊重する気はあるまい。なぜなら、世論は圧倒的に0%支持なのだからだ。【金子勝・傾向義塾大学教授】
以上、記事「原発ポチたちの貧困なる「想像力」について」(「週刊現代」2012年8月11日号)に拠る。
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7月11日の会合で、次のことを行った。
(1)「東京電力の経営形態に関する提言」の発表【注2】
内容は、原発事故における東電の経営責任を明確化するため、同社を会社更生法に則って破綻処理を行う、等を求める。
家庭用電気料金の値上げが予定され、1兆円の公的資金が早ければ7月末にも投入される。この値上げ分の総括原価に、原発の原価償却費や賠償対応費用等も算入されている点を「原発ゼロの会」は指摘。東電の経営責任があやふやで、合理化も不足している一方、「事故のツケを電気料金に転嫁する姿勢だけが明確」と批判し、再考を求めた。具体的には、5点を提言する。
(a)電力料金の値上げ幅の大幅圧縮。
(b)破綻処理による経営責任の明確化。
(c)発送電の東電からの分離と売却。
(d)独立を前提とした分社化の推進。
(e)賠償・除染費用には上限を設けることなく、国の責任で必要な額の資金注入を行う。
(2)「エネルギー・環境に関する選択肢」の検証
政府のエネルギー・環境会議が6月29日に示した「エネルギー・環境に関する選択肢」についても検証。2030年までに原発依存度を0%、15%、20~25%の3つのシナリオから選ぶ、とする国家戦略室の説明に対し、批判が飛んだ。
●「15%」は既存原発の更新、増設をしない限りあり得ない数字。【浅岡美恵・気候ネットワーク代表】
●再生可能エネルギーを単なる経済負担としてしか捉えていないのはなぜか。【阿部知子・衆議院議員(社民党)】
【注1】阿部知子(社)、近藤昭一(民)、逢坂誠二(民)、河野太郎(自)、長谷川岳(自)、加藤修一(公)、笠井亮(共)、山内康一(み)、斎藤恭紀(き)。【原発ゼロの会公式ブログ】
【注2】「東京電力の経営形態に関する提言」
以上、古川琢也(ルポライター)「超党派「原発ゼロの会」が提言 東電は責任をとり破綻処理を」(「週刊金曜日」2012年7月20日号)に拠る。
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政府は今、将来の「エネルギー基本計画」作成のため、「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメントを8月12日まで受け付けている。6月に「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」がまとめた3つのシナリオについて意見を政府に伝えるものだ。
この「選択肢」が、問題だらけだ。
(1)シナリオは、2030年までに原発依存度を①0%、②15%、③20~25%の3択とする。これだと、中間をとって両極(①と③)の間に誘導される心理が働きかねない。
(2)国会戦略室が作成した意見募集用の資料には、①では「より大きな再生可能エネルギー、省エネが必要」「省エネ性能が劣る製品の販売制限・禁止」等と大きな制約条件があるかのように記述されている。他方、大飯原発再稼働前は日本の全原発が停止していた事実が無視されている。
(3)資料には、また、「原発依存度を可能な限り減らす」と政府の方針が明示されているものの、②の選択は原発のいっそうの再稼働と稼働率上昇を前提としている。「40年運転制限」の原則を適用すれば、原発の新設もあり得ることになる。
(4)③は②よりもさらに多くの原発新設が必要になり、政府の方針と矛盾する不適格な選択肢だ。
(5)福島原発事故とそれに伴う莫大な賠償などの費用に関する説明がない。
7月19日、国会内で開かれたパブリックコメントに関する政府との意見交換会では、環境団体のメンバーなどから厳しい批判が続出。
●全原発が停止した状態でも支障がなかった以上、直ちにゼロにする選択肢を設けるべきだ。
●シナリオをまとめた「委員会」の委員長が、なぜ原発建設と関係がある新日鉄の会長なのか。
●原発事故で16万人が避難している現実が何も反映されていない。
以上、成澤宗男(編集部)「選択肢に批判集中「エネルギー基本計画」 原発依存度15%に誘導か」(「週刊金曜日」2012年7月27日号)に拠る。
*
「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメントの手法は、明らかに不公平だ。野田政権が、民意は誘導できる、と傲慢にも考えていることが明らかだ。
意見聴取会で配布する「エネルギー・環境に関する選択肢{概要}」に目立つ誘導、トリックを使ったイカサマ議論は以下のとおり。
(1)選択肢①0%、②15%、③20~25%のうち、①では「省エネ性が劣る製品の販売制限・禁止を含む厳しい規制を広範な分野に課し、経済的負担が重くなってでも、相当高水準の再生可能エネルギー、省エネ、ガスシフトを実施する」とある。細かい。しかもネガティブ記述だ。ちなみに、②、③にはネガティブ記述はない。
(2)②と③には原発を動かすという選択肢なのだから、当然、再び原発事故が起きるという想定があり得る。そのコストが明示されていない。・・・・ように見えるが、国家戦略室によれば、pp.7-8に、とても小さなフォントで「原発の社会的費用は1.7円/kWhを下限として試算」がそれだ、という。明らかに表示内容の重要性を無視し、リスクの表記が不公平だ。
(3)③では、「(原発の)新設、更新が必要」と明示されているが、②には原発の「新増設が難しい状況にあるという実情を踏まえた数字」のみ。結局、新規増設するのかしないのかの重要な点が明らかではない。・・・・国家戦略室によれば、原発新規増設は「あり得る」。このシナリオを出すための試算では、新規増設なしの場合もあり得るが、新規増設2基で依存度17%までは②の範囲内にあることを国家戦略室は明らかにした。そうならば、「新規増設もあり得る」と正確に明記すべきだ。このままでは混乱をもたらす。
以上、吉田有里(国会議員秘書)「エネルギー政策を選ぶ資料が実に誘導的かつ情報が不公平 これでは「イカサマ議論」だ」(「週刊金曜日」2012年7月27日号)に拠る。
*
現在、資源エネルギー庁が全国11ヵ所で行っている意見聴取会。2030年の総電力に占める原発の割合について広く国民の意見を聴く(と称する)目的で行われている。
7月16日、名古屋で行われた意見聴取会で、「個人として参加した」(と称する)岡本道明・中部電力原子力本部××課長が原発を擁護し、放射能の直接的な影響で亡くなった人は一人もいない、とうそぶいて、国民を憤激させた。
くだんの岡本いわく、経済成長と安全・命は別ものではない。いわく、経済が冷え込み、消費が衰退し、企業の国際競争力が低下すれば、福島事故と同じことだ。いわく、0%シナリオを選択したら家庭電気料金が2~3倍になるが、それでいいか。
ちなみに、この意見聴取会では、國丸貴紀・日本原子力研究開発機構が、やはり20~25%シナリオを支持する発言を行っている。
その前日、仙台で開かれた同会でも、岡信慎一・東北電力企画部長、関口哲雄・東北エネルギー懇談会専務理事/東北電力OBも、原発推進の立場かtら20~25%シナリオを支持する発言を行っている。
放射能の直接的な影響で亡くなった人はいない、なんて言えば、かえって反発を買うことは誰でもわかる。「それでもエネルギーとして原発は必要です」と下手に出て意見を言うのが普通の感覚だ。常識から相当ずれている。彼らは、原発がないと経済が冷え込み、日本がダメになるというが、ダメになるのは電力会社であって、日本経済ではない。原発はもはや不良債権なのだ。自分の会社がダメになるのと日本がダメになるのとを混同しているのではないか。そもそも、意見聴取会を開いて何の参考にするのか。結果を尊重する気はあるまい。なぜなら、世論は圧倒的に0%支持なのだからだ。【金子勝・傾向義塾大学教授】
以上、記事「原発ポチたちの貧困なる「想像力」について」(「週刊現代」2012年8月11日号)に拠る。
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