(1)診療報酬の「不適切」請求にまつわる厚生労働省と医師会などとの癒着問題について、朝日新聞が、5月11日から14日にかけてスクープ記事を3回掲載した 【注1】【注2】【注3】【注4】。
医療をめぐる癒着と不正の構造が、堂々と生き残っていることを示す重要な報道だった。
利権は、どのようにして守られるか。
(2)厚労省の地方出先機関(全国7つの厚生局および四国支局)は、「不適切請求」の疑いがある8,000の医療機関のうち、およそ半数を放置していた【注1】。
15%程度しか調査していない都道府県もある。不正請求の情報があるケースやすでに問題ありとして指導したのに医療機関側が従わなかったケースなど、保険料を取られている国民からすれば、すぐにでも乗り込んで不正請求を返せと言いたいところだが、厚生局は今も放置したままだ。
記事には独特の言い回しがあって、そこには官僚の思惑が透けて見える。
<例1>「不正」請求の情報があるのに、「不適切」請求の疑いがある、と言い換える。不適切だが、不正かどうかは分からない、と言いたいのだ。
<例2>「指導したが改善がない」・・・・本来は指導など不要で、即お縄にすればよい。
(3)健保組合側が証拠を揃えて調査を要求したのに、放置された例まである。
不正請求なのに、診療報酬を返せ、と言わず、改善してください、と「お願い」しているだけだのに、対外的には「指導」というアリバイを作る。これで何かやっているように聞こえる。
実は、不正請求分の返還を求めるには「監査」が必要だが、監査はめったなことではやらず、「調査」と「指導」でお茶を濁す。
「調査」をして「指導」。
それに従わなくても、再「調査」。
さらに続けても、まだ「監査」。
よほどのドジだけが、役所のアリバイのために捕まることになる。
(4)驚くべし、個別指導を行う際には、医師会や歯科医師会が指定した医師が立ち会う(厚労省の法令による)。
当然ながら、立ち会う医師は、不正を認めないよう立ち回る。
厚労省のルール自体が、医師のためのものとなっている。
(5)医師だけでなく、官僚にも甘い仕組みになっている。
(a)医療費請求の適否を審査する仕事を請け負う2つの団体(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)は、いずれも厚労省や自治体の天下りや現役出向の受け入れ先となっている。給与は公務員より高く、宿舎も完備。事業仕分けで両組織の統合が提案されたが、厚労省は完全無視。
(b)法律によれば、人件費などの経費をそのまま審査手数料として請求できる。2団体が見つける医療費削減額はわずか600億円。2つのシロアリ団体に払う審査手数料は1,200億円。600億円ものぼったくりだ。
(c)国保連が審査した後、漏れがないかを市町村が行う再点検を、また国保連に委託している市町村が31都道府県で存在することも判明した。国保連は、自分が見落としたものを再点検して手数料をもらう。二重取りだ。
(6)どこまでも医師と官僚のための仕組み。
この仕組みの温存の見返りに、自民党は医師会などの政治献金と票を当てにしてきた。
見事なまでの政官民癒着の構造だ。」
規制改革会議が、これから、この癒着の構造にどこまで切り込めるか。
【注1】記事「「疑いあり」医療機関、半数放置 厚労省、不正請求調査」(朝日デジタル 2014年5月11日)
【注2】記事「厚労省、検討会を3年放置 医療費審査2団体の統合」(朝日デジタル 2014年5月13日)
【注3】記事「厚労省、検討3年放置 医療費審査団体の統合・合理化」(朝日デジタル 2014年5月13日)
【注4】記事「厚労相、否定的考え 医療費審査団体の統合」(朝日デジタル 2014年5月14日)
□古賀茂明「医師と官僚「癒着の構造」 ~官々愕々第110回~」(「週刊現代」2014年6月7日号)
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【参考】
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
医療をめぐる癒着と不正の構造が、堂々と生き残っていることを示す重要な報道だった。
利権は、どのようにして守られるか。
(2)厚労省の地方出先機関(全国7つの厚生局および四国支局)は、「不適切請求」の疑いがある8,000の医療機関のうち、およそ半数を放置していた【注1】。
15%程度しか調査していない都道府県もある。不正請求の情報があるケースやすでに問題ありとして指導したのに医療機関側が従わなかったケースなど、保険料を取られている国民からすれば、すぐにでも乗り込んで不正請求を返せと言いたいところだが、厚生局は今も放置したままだ。
記事には独特の言い回しがあって、そこには官僚の思惑が透けて見える。
<例1>「不正」請求の情報があるのに、「不適切」請求の疑いがある、と言い換える。不適切だが、不正かどうかは分からない、と言いたいのだ。
<例2>「指導したが改善がない」・・・・本来は指導など不要で、即お縄にすればよい。
(3)健保組合側が証拠を揃えて調査を要求したのに、放置された例まである。
不正請求なのに、診療報酬を返せ、と言わず、改善してください、と「お願い」しているだけだのに、対外的には「指導」というアリバイを作る。これで何かやっているように聞こえる。
実は、不正請求分の返還を求めるには「監査」が必要だが、監査はめったなことではやらず、「調査」と「指導」でお茶を濁す。
「調査」をして「指導」。
それに従わなくても、再「調査」。
さらに続けても、まだ「監査」。
よほどのドジだけが、役所のアリバイのために捕まることになる。
(4)驚くべし、個別指導を行う際には、医師会や歯科医師会が指定した医師が立ち会う(厚労省の法令による)。
当然ながら、立ち会う医師は、不正を認めないよう立ち回る。
厚労省のルール自体が、医師のためのものとなっている。
(5)医師だけでなく、官僚にも甘い仕組みになっている。
(a)医療費請求の適否を審査する仕事を請け負う2つの団体(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)は、いずれも厚労省や自治体の天下りや現役出向の受け入れ先となっている。給与は公務員より高く、宿舎も完備。事業仕分けで両組織の統合が提案されたが、厚労省は完全無視。
(b)法律によれば、人件費などの経費をそのまま審査手数料として請求できる。2団体が見つける医療費削減額はわずか600億円。2つのシロアリ団体に払う審査手数料は1,200億円。600億円ものぼったくりだ。
(c)国保連が審査した後、漏れがないかを市町村が行う再点検を、また国保連に委託している市町村が31都道府県で存在することも判明した。国保連は、自分が見落としたものを再点検して手数料をもらう。二重取りだ。
(6)どこまでも医師と官僚のための仕組み。
この仕組みの温存の見返りに、自民党は医師会などの政治献金と票を当てにしてきた。
見事なまでの政官民癒着の構造だ。」
規制改革会議が、これから、この癒着の構造にどこまで切り込めるか。
【注1】記事「「疑いあり」医療機関、半数放置 厚労省、不正請求調査」(朝日デジタル 2014年5月11日)
【注2】記事「厚労省、検討会を3年放置 医療費審査2団体の統合」(朝日デジタル 2014年5月13日)
【注3】記事「厚労省、検討3年放置 医療費審査団体の統合・合理化」(朝日デジタル 2014年5月13日)
【注4】記事「厚労相、否定的考え 医療費審査団体の統合」(朝日デジタル 2014年5月14日)
□古賀茂明「医師と官僚「癒着の構造」 ~官々愕々第110回~」(「週刊現代」2014年6月7日号)
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【参考】
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」