内田康夫のトラベルガイドには定評がある。例えば、本書プロローグに曰く、
<新神戸駅の裏--北側には街はない。駅の向こうには、いきなり六甲山の急峻な斜面が立ち上がる。
日本でもっとも魅力的な都市の一つといわれる神戸の市街地と、駅の建物を隔てたほんの背中合わせに、深山幽谷のおもむきさえ感じさせる、緑濃い山肌が迫っている。文字どおり「光と影」の対照の妙が鮮やかである。こんな不思議な風景は、ほかでは見ることはできない。
駅裏にたった一本だけある細い山道を辿ると、布引の滝に達する。
(中略)この道は、ガイドブックなどに、遊歩道として紹介されているのだが、市民ですらその存在を知る者が少ない。むろん、余所から神戸を訪れる一般の観光客は、滅多に立ち寄らない。近隣に住む者だけの、いわば秘密の小径になっている。
(中略)布引の滝は、登るにつれて、「雌滝」「鼓ヶ滝」「夫婦(めおと)滝」「雄滝」の順で現れる。雌滝は19メートルほどだが、いちばん上の雄滝は50メートル近い勇壮な飛瀑である。四つの滝からは、たえず霧が湧き上がり、周辺の樹木を潤す。>
小径へ突き出る小枝には蜘蛛の巣がかかり、俯いて歩いていると、頭にくっついたりする。駅裏から雄滝まで、上りは30分くらいみたほうがよい。
もう少しオーソドックスなコースは、つづれ折の長い道だ。ハーブ園に至る。ハーブ園にはロープウェイを使ってもよい。往路のみでもよいし、時間がなければ往復ともロープウェイを使うとよいが、花々をめでつつ、ゆっくり歩いて降りていくほうが風情がある。
□内田康夫『神戸殺人事件』(中公文庫、2007)
↓クリック、プリーズ。↓
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雄滝
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<新神戸駅の裏--北側には街はない。駅の向こうには、いきなり六甲山の急峻な斜面が立ち上がる。
日本でもっとも魅力的な都市の一つといわれる神戸の市街地と、駅の建物を隔てたほんの背中合わせに、深山幽谷のおもむきさえ感じさせる、緑濃い山肌が迫っている。文字どおり「光と影」の対照の妙が鮮やかである。こんな不思議な風景は、ほかでは見ることはできない。
駅裏にたった一本だけある細い山道を辿ると、布引の滝に達する。
(中略)この道は、ガイドブックなどに、遊歩道として紹介されているのだが、市民ですらその存在を知る者が少ない。むろん、余所から神戸を訪れる一般の観光客は、滅多に立ち寄らない。近隣に住む者だけの、いわば秘密の小径になっている。
(中略)布引の滝は、登るにつれて、「雌滝」「鼓ヶ滝」「夫婦(めおと)滝」「雄滝」の順で現れる。雌滝は19メートルほどだが、いちばん上の雄滝は50メートル近い勇壮な飛瀑である。四つの滝からは、たえず霧が湧き上がり、周辺の樹木を潤す。>
小径へ突き出る小枝には蜘蛛の巣がかかり、俯いて歩いていると、頭にくっついたりする。駅裏から雄滝まで、上りは30分くらいみたほうがよい。
もう少しオーソドックスなコースは、つづれ折の長い道だ。ハーブ園に至る。ハーブ園にはロープウェイを使ってもよい。往路のみでもよいし、時間がなければ往復ともロープウェイを使うとよいが、花々をめでつつ、ゆっくり歩いて降りていくほうが風情がある。
□内田康夫『神戸殺人事件』(中公文庫、2007)
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雄滝
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