(1)今年7月、堺市の泉ニュータウンで地中に敷設された水道管が破裂した。基幹管路だったので、33,000世帯に断水、濁り水などの影響が出た。破裂したダクタイル鋳鉄管は、耐震性や耐蝕性に優れる、とされる。では、口径800mmの大きな管の底が、なぜ1mも引き裂かれ、外側にめくれあがったのか。
要因の一つが老朽化だ。破裂した管は1976年に敷設された古い水道管だった。堺市の水道管の総延長は2,379km。うち、今年度中に敷設後40年を超過するものが248kmにおよぶ。市は、老朽管の更新を進めているが、年に50kmのペースだ。年2%ずつ更新し、50年で一回りする計画だ。
(2)破裂の原因は、老朽化だけではなかった。泉ニュータウンは、100万年前は海だった。腐食性の強い年度質の土壌が点在していた。この酸性土壌の影響により、管の経年劣化が加速。底が割れる異常事態になった。
ために、堺市は土壌調査をあらためて実施した上で、幹線管の更新を優先的に進めることにした。大口径の水道管の更新は費用がかかる。その分、全体の水道管の更新率や耐震化率の上昇は鈍化してしまう。しかし、やむを得ない、という判断だ。
(3)全国の水道管の総延長632,865km(2010年度)のうち49,381km(7.8%)が法定耐用年数(減価償却期間)の40年を超える老朽管だ。各自治体の更新は、水道事業経営の厳しさもあって、年間で総延長の1%にとどまる。
老朽化の進行に伴い、漏水事故も増えている。100世帯以上が断水などの被害を受けた漏水事故は、全国で1,073件(2010年度)を数え、それ以外を含めると3万件以上の管路事故が起きた。
(4)水道管の更新事業に力を入れているのが大阪市だ。全国で4番目(1895年)に水道事業を始めた大阪市は、老朽管を多数抱えている。総延長5,198kmのうち1,705km(32.8%)が老朽管で、しかも耐震性に劣る鋳鉄管が618kmもある。
このため大阪市は、2007年度から、鋳鉄管を耐震継ぎ手のダクタイル鋳鉄管に取り替える事業を開始した。年間60kmのペースで、2016年度まで更新し続ける。事業費880億円。病院、災害時に避難所となる場所が優先的に更新される。
(5)老朽化に加え、耐震性の劣る水道管を抱えている自治体は、全国に少なくない。老朽化率ワースト・ワンは大阪府で、40年超の水道管の割合が19.5%だ。以下、山口県、京都府、高知県、奈良県、鹿児島県、静岡県、広島県、島根県、宮城県が続く。
耐震適合率ワースト・ワンは、上水道耐震適合率0%の茨城県神栖市、千葉県旭市、福岡県古賀市だ。以下、0.2%の兵庫県赤穂市、0.3%の兵庫県高砂市、福岡県大川市、0.6%の千葉県三芳水道企業団、0.8%の佐賀県鳥栖市、0.9%の鹿児島県薩摩川内市が続く。
(6)水道管の更新で注目されているのは横浜市だ。
同市は、1997年に水道事業を開始した近代水道発祥の地。総延長は9,000kmにもおよび、大阪市を上回るが、1969年から老朽管対策に取り組んでいる。これまでに更新した水道管は、累計4,000kmに達する。
取り組みが早かっただけではなく、より優れた材料を積極的に採用している。メーカーの技術進歩を取り込み、効率的かつ効果的事業を展開している。要するに、長寿命化だ。
<例>ダクタイル鋳鉄管のいち早い採用。ポリエチレンスリーブの活用や離脱防止機能付き継ぎ手の採用、GX管(傷がついたら自己修復する機能を持つ最新の管)の採用準備、など。
管の長寿命化は可能で、そのために重要なのはデータの集積だ。管の種類、土壌と生活環境の状況などを調べ上げ、更新計画を立てる。横浜市は、ポリエチレンスリーブのダクタイル鋳鉄管は耐用年数80年と想定している。
横浜市は、いま年間110kmのペースで更新事業を進めているが、老朽化の速い管の更新の前倒しや、丈夫な管の更新の先延ばしを行い、事業量の平準化を図っている。
また、更新の際にダウンサイジングも測っている。<例>管の口径を小さいものに換える。2本の管を1本にまとめる。
単に新しいものに換えるのではなく、既存の施設や管の能力を再評価し、適正規模化を進めているのだ。
以上、記事「橋・ダム・高速道路・・・・が危ない 朽ち始めたインフラ」(「週刊ダイヤモンド」2012年10月30日号)に拠る。
【参考】
「【国土】朽ち始めたインフラ ~危ない橋・ダム・高速道路~」
↓クリック、プリーズ。↓
要因の一つが老朽化だ。破裂した管は1976年に敷設された古い水道管だった。堺市の水道管の総延長は2,379km。うち、今年度中に敷設後40年を超過するものが248kmにおよぶ。市は、老朽管の更新を進めているが、年に50kmのペースだ。年2%ずつ更新し、50年で一回りする計画だ。
(2)破裂の原因は、老朽化だけではなかった。泉ニュータウンは、100万年前は海だった。腐食性の強い年度質の土壌が点在していた。この酸性土壌の影響により、管の経年劣化が加速。底が割れる異常事態になった。
ために、堺市は土壌調査をあらためて実施した上で、幹線管の更新を優先的に進めることにした。大口径の水道管の更新は費用がかかる。その分、全体の水道管の更新率や耐震化率の上昇は鈍化してしまう。しかし、やむを得ない、という判断だ。
(3)全国の水道管の総延長632,865km(2010年度)のうち49,381km(7.8%)が法定耐用年数(減価償却期間)の40年を超える老朽管だ。各自治体の更新は、水道事業経営の厳しさもあって、年間で総延長の1%にとどまる。
老朽化の進行に伴い、漏水事故も増えている。100世帯以上が断水などの被害を受けた漏水事故は、全国で1,073件(2010年度)を数え、それ以外を含めると3万件以上の管路事故が起きた。
(4)水道管の更新事業に力を入れているのが大阪市だ。全国で4番目(1895年)に水道事業を始めた大阪市は、老朽管を多数抱えている。総延長5,198kmのうち1,705km(32.8%)が老朽管で、しかも耐震性に劣る鋳鉄管が618kmもある。
このため大阪市は、2007年度から、鋳鉄管を耐震継ぎ手のダクタイル鋳鉄管に取り替える事業を開始した。年間60kmのペースで、2016年度まで更新し続ける。事業費880億円。病院、災害時に避難所となる場所が優先的に更新される。
(5)老朽化に加え、耐震性の劣る水道管を抱えている自治体は、全国に少なくない。老朽化率ワースト・ワンは大阪府で、40年超の水道管の割合が19.5%だ。以下、山口県、京都府、高知県、奈良県、鹿児島県、静岡県、広島県、島根県、宮城県が続く。
耐震適合率ワースト・ワンは、上水道耐震適合率0%の茨城県神栖市、千葉県旭市、福岡県古賀市だ。以下、0.2%の兵庫県赤穂市、0.3%の兵庫県高砂市、福岡県大川市、0.6%の千葉県三芳水道企業団、0.8%の佐賀県鳥栖市、0.9%の鹿児島県薩摩川内市が続く。
(6)水道管の更新で注目されているのは横浜市だ。
同市は、1997年に水道事業を開始した近代水道発祥の地。総延長は9,000kmにもおよび、大阪市を上回るが、1969年から老朽管対策に取り組んでいる。これまでに更新した水道管は、累計4,000kmに達する。
取り組みが早かっただけではなく、より優れた材料を積極的に採用している。メーカーの技術進歩を取り込み、効率的かつ効果的事業を展開している。要するに、長寿命化だ。
<例>ダクタイル鋳鉄管のいち早い採用。ポリエチレンスリーブの活用や離脱防止機能付き継ぎ手の採用、GX管(傷がついたら自己修復する機能を持つ最新の管)の採用準備、など。
管の長寿命化は可能で、そのために重要なのはデータの集積だ。管の種類、土壌と生活環境の状況などを調べ上げ、更新計画を立てる。横浜市は、ポリエチレンスリーブのダクタイル鋳鉄管は耐用年数80年と想定している。
横浜市は、いま年間110kmのペースで更新事業を進めているが、老朽化の速い管の更新の前倒しや、丈夫な管の更新の先延ばしを行い、事業量の平準化を図っている。
また、更新の際にダウンサイジングも測っている。<例>管の口径を小さいものに換える。2本の管を1本にまとめる。
単に新しいものに換えるのではなく、既存の施設や管の能力を再評価し、適正規模化を進めているのだ。
以上、記事「橋・ダム・高速道路・・・・が危ない 朽ち始めたインフラ」(「週刊ダイヤモンド」2012年10月30日号)に拠る。
【参考】
「【国土】朽ち始めたインフラ ~危ない橋・ダム・高速道路~」
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