この構図を日本に移すと次のように描けます。日本経済は、戦後の混乱を経て朝鮮戦争の特需で立ち直ることができました。続く高度経済成長の過程で、分厚い中産階級が形成されていきました。一方で、東西冷戦という勢力均衡のもと、自民党政権がさまざまな腐敗を抱えながらも政権を維持し続けました。日本経済がピークを迎える1990年まで、国民生活は比較的安定していたと思います。しかし、冷戦構造が壊れ、バブルが崩壊し、景気が低迷。新自由主義改革とデフレ、さらにリーマン・ショックによって国民生活は不安定になりました。とどめは民主党政権の失敗です。国民はこうした混乱にうんざりして、不満はあっても他の選択肢よりマシに思える安倍政権を消極的に支持している。
この現象は、日本において近代的な市民社会が完成していることの証なのかもしれません。内閣府が2018年8月26日に公表した「国民生活に関する世論調査」で、今の暮らしに満足している人とまあ満足している人を合計すると、73.9%にものぼり、過去最高を示しました。
これは金銭的、物質的に満たされて満足しているということではなく、現状をとりあえず受け入れているということだと思います。「欲望の王国」の中で、誰もが自分に見合ったサイズの欲望を追求している姿が見えてくるように思います。その王国が崩れるほど世の中は混乱していないし、まだ欲望を追求するだけの余裕が日本にはある、ということを物語っている面もあります。
□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「混乱にはうんざり」を引用
【参考】
「【佐藤優】ロシアと似た無関心 ~官僚の掟(13)~」
「【佐藤優】安倍政権は事実上の超然内閣 ~官僚の掟(12)~」
「【佐藤優】安倍政権の反知性主義 ~官僚の掟(11)~」
「【佐藤優】内閣支持率42%の心理的根拠 ~官僚の掟(10)~」
「【佐藤優】世論と信頼 ~官僚の掟(9)~」
「【佐藤優】「劣位」の元キャリアの特徴 ~官僚の掟(8)~」
「【佐藤優】どの上司に評価されたか ~官僚の掟(7)~」
「【佐藤優】官僚は年次がすべて ~官僚の掟(6)~」
「【佐藤優】官僚に「落選」はない ~官僚の掟(5)~」
「【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル ~官僚の掟(4)~」
「【佐藤優】競争の土俵に上がらない ~官僚の掟(3)~」
「【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~」
「【佐藤優】『官僚の掟』の目次」
この現象は、日本において近代的な市民社会が完成していることの証なのかもしれません。内閣府が2018年8月26日に公表した「国民生活に関する世論調査」で、今の暮らしに満足している人とまあ満足している人を合計すると、73.9%にものぼり、過去最高を示しました。
これは金銭的、物質的に満たされて満足しているということではなく、現状をとりあえず受け入れているということだと思います。「欲望の王国」の中で、誰もが自分に見合ったサイズの欲望を追求している姿が見えてくるように思います。その王国が崩れるほど世の中は混乱していないし、まだ欲望を追求するだけの余裕が日本にはある、ということを物語っている面もあります。
□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「混乱にはうんざり」を引用
【参考】
「【佐藤優】ロシアと似た無関心 ~官僚の掟(13)~」
「【佐藤優】安倍政権は事実上の超然内閣 ~官僚の掟(12)~」
「【佐藤優】安倍政権の反知性主義 ~官僚の掟(11)~」
「【佐藤優】内閣支持率42%の心理的根拠 ~官僚の掟(10)~」
「【佐藤優】世論と信頼 ~官僚の掟(9)~」
「【佐藤優】「劣位」の元キャリアの特徴 ~官僚の掟(8)~」
「【佐藤優】どの上司に評価されたか ~官僚の掟(7)~」
「【佐藤優】官僚は年次がすべて ~官僚の掟(6)~」
「【佐藤優】官僚に「落選」はない ~官僚の掟(5)~」
「【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル ~官僚の掟(4)~」
「【佐藤優】競争の土俵に上がらない ~官僚の掟(3)~」
「【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~」
「【佐藤優】『官僚の掟』の目次」