東京電力の勝俣恒久会長【注1】は30日の記者会見で、周辺の住民に対する補償は「全体としては原子力損害賠償法の枠組みを含めて考えていきたい」と述べるにとどまった(2011年3月30日19時54分 YOMIURI ONLINE)。
勝俣会長は、記者会見で、「法律ではどういう場合に東電の責任が免除されるかはっきり決まっていないことを挙げ、『政府と考えていきたい』と、補償範囲・程度については明言を避けた」(2011年3月30日22時30分 asahi.com)。
*
原子力損害賠償法によれば、賠償責任は原則として電力会社が負う。過失の有無を問わず、原子力災害によって生じた損害はすべて補償しなければならない。1,200億円までは保険などによって手当され、これを超える額は国が支援する。
なお、1,200億円超の損害も、一義的には電力会社に責任があるので、念のため。
ただし、「想定外の巨大地震」などによる事故では、電力会社は免責され、国が“必要な措置”を講じる。もっとも、その措置の具体的な内容は明らかではない【注2】。
例外規定が適用されるという観測もあるが、「現時点では東京電力は免責とならず、通常規定どおりに東電が賠償を行い、国が不足分を支援するシナリオが有力になりつつあるようだ」。
問題は、賠償金額がどこまで膨らむのか読めないことだ。
JCO臨界事故(1999年)では賠償額が150億円にのぼった。このたびの被害は、ケタ違いだ。賠償の対象は、身体や物の直接的な損害だけでなく、風評による営業被害など間接的損害も対象となる。作物が汚染された農家だけではない。原発事故の事態収拾に当たる電力会社、協力企業の従業員、自衛隊員、警察官などが今後健康を損ねた場合も対象となる。賠償額は数兆円にのぼる、という見方もある。
原子力災害が国の措置によって満額補償される反面、純粋に地震と津波の被害で損害を受けた被災者との公平性の問題もある。事故処理は、容易ではない。
以上、COLUM「どうなる原発事故の賠償責任」(「週刊東洋経済」2011年4月2日号)に拠る。
【注1】
「東京電力の『説明責任』も“木を鼻で括る”醜状です。02年、炉心部ひび割れを隠蔽した歴代トップ4名が総退陣後、東電社長に就任し、経団連副会長をも務めた勝俣恒久氏は電力事業連合会会長だった06、07両年、柏崎刈羽、福島第二で連続発生の重大事故を公表せず、データ改竄をも黙認しました。今回の炉心溶融、無計画停電の遠因を生み出した人物です」(田中康夫「『国民生活第一』が聞いてあきれる “平成の棄民”」、「サンデー毎日」2011年4月10日増大号)
【注2】
勝俣会長が記者会見で「政府と考え」る、と述べたゆえんだ。
東京電力の荒木浩顧問は、歴代首相や有力政治家を囲む会を定期的に開催している。今井敬・新日本製鉄名誉会長や上島重二・三井物産顧問とともに。現役の日本経団連会長や日本商工会議所会頭も加わる。荒木は、小沢一郎・民主党元代表を囲む会の世話役的存在でもある【注3】(「東京電力の隠蔽体質」)。
東電にとって、「政府と考え」る際にはこうした人脈が生きてくるはずだった(推定)。
【注3】
小沢は、30日夜、都内の自宅で自分に近い若手の衆参両院議員十数人と懇談し、語った。「自分なりに情報収集しているが、政府や東電が発表するよりも悪い事態になっているようだ」(2011年3月31日08時24分 YOMIURI ONLINE)
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勝俣会長は、記者会見で、「法律ではどういう場合に東電の責任が免除されるかはっきり決まっていないことを挙げ、『政府と考えていきたい』と、補償範囲・程度については明言を避けた」(2011年3月30日22時30分 asahi.com)。
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原子力損害賠償法によれば、賠償責任は原則として電力会社が負う。過失の有無を問わず、原子力災害によって生じた損害はすべて補償しなければならない。1,200億円までは保険などによって手当され、これを超える額は国が支援する。
なお、1,200億円超の損害も、一義的には電力会社に責任があるので、念のため。
ただし、「想定外の巨大地震」などによる事故では、電力会社は免責され、国が“必要な措置”を講じる。もっとも、その措置の具体的な内容は明らかではない【注2】。
例外規定が適用されるという観測もあるが、「現時点では東京電力は免責とならず、通常規定どおりに東電が賠償を行い、国が不足分を支援するシナリオが有力になりつつあるようだ」。
問題は、賠償金額がどこまで膨らむのか読めないことだ。
JCO臨界事故(1999年)では賠償額が150億円にのぼった。このたびの被害は、ケタ違いだ。賠償の対象は、身体や物の直接的な損害だけでなく、風評による営業被害など間接的損害も対象となる。作物が汚染された農家だけではない。原発事故の事態収拾に当たる電力会社、協力企業の従業員、自衛隊員、警察官などが今後健康を損ねた場合も対象となる。賠償額は数兆円にのぼる、という見方もある。
原子力災害が国の措置によって満額補償される反面、純粋に地震と津波の被害で損害を受けた被災者との公平性の問題もある。事故処理は、容易ではない。
以上、COLUM「どうなる原発事故の賠償責任」(「週刊東洋経済」2011年4月2日号)に拠る。
【注1】
「東京電力の『説明責任』も“木を鼻で括る”醜状です。02年、炉心部ひび割れを隠蔽した歴代トップ4名が総退陣後、東電社長に就任し、経団連副会長をも務めた勝俣恒久氏は電力事業連合会会長だった06、07両年、柏崎刈羽、福島第二で連続発生の重大事故を公表せず、データ改竄をも黙認しました。今回の炉心溶融、無計画停電の遠因を生み出した人物です」(田中康夫「『国民生活第一』が聞いてあきれる “平成の棄民”」、「サンデー毎日」2011年4月10日増大号)
【注2】
勝俣会長が記者会見で「政府と考え」る、と述べたゆえんだ。
東京電力の荒木浩顧問は、歴代首相や有力政治家を囲む会を定期的に開催している。今井敬・新日本製鉄名誉会長や上島重二・三井物産顧問とともに。現役の日本経団連会長や日本商工会議所会頭も加わる。荒木は、小沢一郎・民主党元代表を囲む会の世話役的存在でもある【注3】(「東京電力の隠蔽体質」)。
東電にとって、「政府と考え」る際にはこうした人脈が生きてくるはずだった(推定)。
【注3】
小沢は、30日夜、都内の自宅で自分に近い若手の衆参両院議員十数人と懇談し、語った。「自分なりに情報収集しているが、政府や東電が発表するよりも悪い事態になっているようだ」(2011年3月31日08時24分 YOMIURI ONLINE)
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